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横浜市立大学は、同学学術院医学群 循環制御医学 横山詩子准教授と石川義弘教授が大阪大学大学院工学研究科 機械工学専攻 金子真教授らと共同で、分離された血管平滑筋細胞の周期加圧による血管組織の創生技術を開発したことを発表した。作製された血管組織片は、パッチ(継当て)あるいは血管チューブとしてラット大動脈への移植が成功している。この研究成果は、英科学誌Nature の姉妹誌「Scientific Reports」に掲載された。

各種臓器の再生で最も遅れている血管は、血管弾性(=しなやかさ)によって血圧変動を調節して血流を途絶えさせない機能がある。これにより収縮期に血液が血管内に蓄えられ、それが拡張期に末梢側に放出され、血液が心臓から出てこない拡張期にも弾性による「しなやかさ」があるおかげで、体中に血液がいきわたるようになっている。

今回の発見では、医工連携によりロボット工学を血管再生技術に応用し、血管の構成細胞を培養する際に、工学的な手法で周期的に圧力を加えることで、生体移植可能な、高い弾性を持つ人工血管の合成に成功したという。この技術はJSTの支援を得てPCT出願され、指定国移行を予定しているという。

血管より分離した平滑筋細胞に周期変動する静水圧を加えることで、細胞を効率的に重層培養できることとその培養細胞の層に弾性構造が完成され、生体血管に近い弾性強度が達成できることを見出したという。ラット大動脈平滑筋細胞の層を重ねる度に一定時間の極長周期加圧を加え、重層>加圧>重層>加圧を繰り返すことにより、30層以上に及ぶ血管平滑筋細胞の立体シートが完成する。この血管細胞シートには生体と同じ弾性線維の層状構造が形成され、ストレスファイバーの重合やフィブリノネクチンの形成が見られられたという。合成された血管細胞シートの強度は生体血管に匹敵し、損傷させたラット大動脈にパッチ状に生体移植したところ良好な接着と長期生存が確認されたとのことだ。

従来の技術では、培養平滑筋細胞で血管弾性成分を合成することは困難であったが、今回の研究成果により培養血管平滑筋細胞に静水圧を負荷することにより、細胞の重層化と弾性形成を促進する画期的な装置が開発された。この製造法は廉価かつ迅速に人工血管合成が可能となる。日本では年間7万本の人工血管が消費されるが、そのほとんどが輸入品であるうえにテフロンなど人工素材であるため、生体適合性が問題となっている。

今後は、同試作装置を空圧装置会社と共同で改良し、短時間で大量の人工血管を作製できる設備装置を開発して日本の小口径血管の需要をまかなえるシステム、さらには作製したヒト細胞由来の血管細胞シートやiPS細胞を用いた人工血管製造を検討し、安全かつ安心な製品として再生医療の臨床現場で使いやすい製品を目指すという。さらには、国内の人工血管市場に供給するだけでなく、海外に輸出できる革新的な国産技術としての開発を将来的な目標にしているということだ。

(早川厚志)