J2第3節、ジェフ千葉対名古屋グランパス。ともにJリーグの「オリジナル10」である両者が対戦するのは、実に2009年以来8シーズンぶりのことだ。


MF町田などの活躍で、名古屋を圧倒した千葉 そんな歴史的価値に加え、佐藤勇人(千葉)・寿人(名古屋)の双子対決が実現するかもしれないという話題もあり、この試合にはJ2の、しかも優勝争いの大詰めでもない序盤戦とは思えないほど、多くの報道陣が詰めかけた。

 それでも試合前の主役は、どちらかといえば、名古屋のほうだったに違いない。

 クラブ史上初のJ2降格となった名古屋は、前述のFW佐藤寿の他にも、FW玉田圭司ら、J1級の選手を加え、40歳のベテランGK楢崎正剛も健在。新たな指揮官には、川崎フロンターレで驚異的なポゼッションサッカーを作り上げた風間八宏監督が就任したとあって、シーズン開幕前からJ2最注目株となっていた。

 そんな名古屋が今季の関東初見参だったのだから、注目も集まろうというものだ。

 ところが、である。話題満載の一戦も、始まってみれば黄色のユニフォームの独壇場。主役の座は、千葉が完全に奪っていた。

 DFラインを高く設定する千葉は前線から積極的にプレスをかけ、パスをつないで攻撃を組み立てたい名古屋を圧倒。奪ったボールは横に広く動かし、両サイドからMFホルヘ・サリーナス、北爪健吾が敵陣深くまで進入した。

 ズルズルと後退させられた名古屋DFの前にポッカリと空いたスペースでは、MF町田也真人、熊谷アンドリューが、まさにやりたい放題。ミドルシュート、あるいはスルーパスで次々に名古屋ゴールを脅かした。

 先制点こそセットプレーからのゴール(左サイドのFKからDF西野貴治がヘディングシュートを決めた)だったが、試合の主導権は終始、千葉が握り続けた。

 名古屋の風間監督は「自信を持ってプレーする選手がほとんど見えなかった」とおかんむり。MF宮原和也も「相手のDFラインが高いので、裏を狙っていこうと思ったが、その回数が少なく、裏へのボールの質も低かった」と振り返っていたが、千葉が繰り出すプレス、すなわちボール保持者に対する早い囲い込みが、名古屋の選手を自由にさせなかったとも言える。それほどに千葉のプレスは速く、鋭かった。

 後半に入ると、いくらか名古屋が巻き返しはしたが、決定機と呼べるシーンはほとんどなく、最後はカウンターから交代出場のMF清武功暉がダメ押しの追加点を奪い、勝負は決した。今季から千葉を率いる、フアン・エスナイデル監督が満足そうに語る。

「僕らがいつもやっているサッカーができた。インテンシティ(プレー強度)が高く、ゴールチャンスもたくさん作った。選手の努力が報われたフェアな内容であり、結果にも満足している」

 新指揮官がとりわけうれしそうに話したのは、「いつもやっているサッカー=目指すサッカー」がピッチ上で具現化されたこと。名古屋から攻撃の手段を奪ったプレスについても、「名古屋は短いパスをつないでくる、足元がうまいチーム」と認識しつつ、「ただ、僕らはいつも通りに前からプレスにいっただけ」と、決して特別な名古屋対策ではなく、あくまでもそれが自分たちのスタイルであることを強調する。

 千葉は2010年にJ2へ降格してから、よく言えば試行錯誤、悪く言えば右往左往を続けてきた。

 自らがボールを保持して試合を進めるポゼッションサッカーを志向するもうまくいかず、さりとて守備組織の構築を優先し、堅守速攻のカウンターサッカーに切り替えても、思うような結果を得られなかった。当初はJ1昇格プレーオフ圏内につけていた順位(3位〜6位)も、ここ2年は9位、11位と低迷が続いていた。

 だからこそ、結果はもちろん大切だが、まずは目指すサッカーに確信を持って取り組むことが必要だった。

「チームの成長具合には満足している」というエスナイデル監督は、ここまで2勝1分けと好スタートを切った状況に「勝つのは常にポジティブなこと」としながらも、「結果以上に自分たちがやっていることに満足している」と語る。

 この日の名古屋戦に関して言えば、相性のよさがあった点は否めない。要するに、相手の戦い方とのかみ合わせがよかったのだ。やや腰が引けているにもかかわらず、無理をしてでもショートパスをつなごうとする名古屋は、プレスをかけたい千葉にとってはおあつらえ向きの相手だった。今後、すべての試合がこれほど思い通りに進められるわけではない。むしろこんな試合は稀だと考えたほうがいいだろう。

 しかし、自分たちが進むべき道をはっきりと見定め、自信を持って長いシーズンを戦い抜くという意味では、この勝利はひとつの大きなきっかけになるのではないだろうか。

 千葉と名古屋が対戦するのは8シーズンぶりということは、すなわち、千葉のJ2暮らしが8シーズン目を迎えたことを意味している。

 長かったJ2生活に終止符を打ち、そろそろJ1復帰を――。そんな期待が高まる完勝だった。

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