THAADの韓国配備に賛同したパク・クネ(朴槿恵)大統領が罷免された。中国は大喜びだ。一方、直前にアメリカがTHAAD配備の既成事実を作ったことに中国は激怒。軍事行動を示唆したり、米朝に自制を求めたりもした。中国の韓国次期大統領への思惑は?

パク大統領罷免を歓迎し、次期大統領候補・ムン氏に期待する中国

3月10日、韓国の憲法裁判所はパク・クネ(朴槿恵)大統領の弾劾を妥当とし、罷免を決定した。

裁判が始まるとCCTVは生放送で全ての推移を逐一報道しただけでなく、裁判長の言葉をすべて時々刻々文字化して同時報道した。中国政府の関心の高さがうかがわれる。

なぜなら、これを受けて始まる次期大統領選挙では、ムン・ジェイン(文在寅)氏が有力と見られているからだ。ムン氏は親中・親北朝鮮であるだけでなく、反日でもあり、そして何よりも「韓国のTHAAD(終末高高度防衛ミサイル)配備反対派」だからだ。

中国では、2016年8月に東亜日報がムン氏に関して報じた「THAAD配備が現実のものとなっても、政府は最善を尽くして中国を説得し、関係悪化を防がなければならない」という報道を、最近になって大きく扱っている。ムン氏はそれ以前には「THAAD配備反対」と明言したことさえある。

もともと中国はパン・ギムン(潘基文)元国連事務総長を手なずけ、韓国次期大統領として陰に日向に応援してきたが、今年2月1日、潘基文氏は緊急記者会見を開いて次期大統領への出馬断念を表明した。庶民ポーズを示そうとしたパフォーマンスが逆効果となって人気が暴落しただけでなく、親戚のスキャンダルが追い打ちをかけたのが原因のようだ。となれば、支持率が最も高いムン氏が有力となる。

中国にとって実は、ムン氏以上に条件が揃った大統領候補はない。

そうでなくともCCTVはここのところ毎日のように、韓国内におけるTHAAD配備反対派の抗議運動を大きく取り上げて報道しており、「THAADが配備されれば、韓国はまたもや戦争に巻き込まれ、かえって平和を失うことになる」という韓国の一般庶民の声を拾い上げたりなどしてきた。韓国内でTHAAD反対の機運が高まり、選挙の票を得るために韓国の選挙民の意見に同調した政党が勝利し新たな政権が生まれることに、中国は大きな期待をかけている。

THAADの韓国配備開始に中国激怒――いざとなれば軍事行動

その裏を読むかのように、大統領選が始まる前にパク政権が決定したTHAAD配備政策を、ギリギリ滑り込む形で断行した「米韓の狡猾さ」を、中国は口を極めて攻撃している。

遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)