発達障害のある人が事件などに関与する割合が高いことは事実だが……(depositphotos.com)

写真拡大

 発達障害のある少年と犯罪との関係が、たびたび指摘されています。もちろん、発達障害のある人が必ず犯罪をするわけではありません。しかし、事件などに関与する割合が高いことは事実です。

 皆さんもご存じのとおり、少年が凶悪事件を起こし逮捕された後、何らかの発達障害であったと診断される例があります。有名なものでは、神戸連続児童殺傷事件、西鉄バスジャック事件、佐世保同級生殺害事件などが挙げられます。

 矯正施設のひとつに少年院があります。その数は全国で本院が49庁、分院が3庁。主に家庭裁判所から保護処分として送致された少年に対し、社会不適応の原因を除き、健全な育成を図り、矯正教育を行うのが目的です。

 ある施設にいる少年は、「人の首をしめたくなる、人を殺してみたい」と話していました。実際に殺人は犯していませんが、傷害事件を起こしたとのことです。

 この少年には、「自閉症スペクトラム障害」という診断がなされていました。発達障害のひとつです。

生まれ持った特性で成長とともに社会に適応できない

 言葉の発達の程度を「自閉度」と呼びます。そして自閉度が高い(言葉の発達が遅れている)障害をまとめて、「自閉症スペクトラム障害」と呼びます。スペクトラム(Spectrum=多様な観念・物などが織り成す広範な連続体)という表現を使用するのは、細かい障害の様子が徐々に変化するからです。

 ちなみに、自閉度が高い疾患の中でも、アスペルガー症候群や高機能自閉症の人は、知能指数が高いことで知られています。

 自閉症スペクトラム障害に見られるのは、次の障害です。

ー匆饑の障害:相手の立場に立って物ごとを考えたり、相手と気持ちを共有することが苦手。すなわち、人とうまく付き合うことができない。

▲灰潺絅縫院璽轡腑鵑両祿押Ц斥佞糧達の遅れがあるほか、慣用的な表現、お世辞や皮肉が理解できない。自分にしか分からない言葉を使ったり、話をすることに消極的になる傾向がある。

A杼力の障害:興味や関心が狭く、特定のものにこだわる。次に起こることを想像することが難しく、自分なりに見通しを持つことができないので、同じパターンを繰り返し行うことで安心しやすい。したがって、いつもと違う状況になると臨機応変な対応ができなくなりやすい。

ご恭于疉匸鼻Щ┣擦気になって集中できない、普通の光でもまぶしく感じるなど。

 発達障害と聞いても、普段そのような人と接点がないと具体的なイメージがわかないかもしれません。発達障害の人は、全般的な知的水準は健常ですが、一部に苦手な事柄があるという感じです。

 病気としては精神障害に分類され、そもそも生まれ持った特性であるため、成長するに従って社会に適応できないという形で明らかになります。
発達障害の正しい理解が<共生>につながる

 平成17年から施行された「発達障害者支援法」は、発達障害者の自立及び社会参加に資するように、その生活全般にわたる支援を図り、患者の福祉の増加に寄与することを目的としています。

 この法律では、我が国で初めて発達障害を、広汎性発達障害(現在は「自閉症スペクトラム障害」)、学習障害、注意欠陥・多動性障害、そのほか通常低年齢で発症する脳機能の障害と定義付けました(同法第2条)。

 冒頭でお話したような、自閉症スペクトラム障害と診断された少年もこの法律の対象者となるわけです。そして、同法第4条では、「国民は発達障害者の福祉について理解を深め、発達障害者の社会参加に協力するように努めなければならない」と記されています。

 発達障害について、国民が正しく理解し、社会で共生することが求められているのです。

 学習障害というのは、聞く、話す、読む、書く、計算または推論する、という能力のうち、特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態です。

 また、注意欠陥・多動性障害は、年齢に不釣合いな注意力、衝動性、多動性を特徴とする行動の障害で、学業などに支障を来す状態です。忘れ物が多い、落ち着きがない、キレやすいなどの状態です。

 ちなみに、このような発達障害で、学習や生活面で特別な支援を必要とする子どもは、小中学校の普通学級に約6.5%含まれているそうです。40人のクラスであれば2〜3人はいることになります。

 発達障害にある子が必ず犯罪をするわけではありませんので、偏見を持たずに正しく理解する必要があります。ただし、冒頭で触れたように、家庭裁判所で受理した一般少年保護事件では、発達障害の診断が下された人の割合が一般の人に比べて高いという報告もあります。

 重要なことは、発達障害がある子どもたちを社会で支援していくことです。発達障害に対するさまざまな誤解や理解不足から、当事者やその家族が適切な支援を受けられずにいる状況があることは事実です。

 したがって、正しい情報を社会が共有するとともに、幼少期から就労に至るまで、長期にわたる社会の支援が求められているのでしょう。


一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999〜2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。

連載「死の真実が"生"を処方する」バックナンバー

一杉正仁(ひとすぎ・まさひと)
滋賀医科大学社会医学講座(法医学)教授、京都府立医科大学客員教授、東京都市大学客員教授。厚生労働省死体解剖資格認定医、日本法医学会指導医・認定医、専門は外因死の予防医学、交通外傷分析、血栓症突然死の病態解析。東京慈恵会医科大学卒業後、内科医として研修。東京慈恵会医科大学大学院医学研究科博士課程(社会医学系法医学)を修了。獨協医科大学法医学講座准教授などを経て現職。1999〜2014年、警視庁嘱託警察医、栃木県警察本部嘱託警察医として、数多くの司法解剖や死因究明に携わる。日本交通科学学会(副会長)、日本法医学会、日本犯罪学会(ともに評議員)、日本バイオレオロジー学会(理事)、日本医学英語教育学会(副理事長)など。