連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第23週「あいを継ぐもの」第133回 3月11日(土)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:新田新三


132話はこんな話


エイスが倒産してしまった!

「需要」と「供給」


オイルショックによる不況で、キアリスも行き詰まっていた。
だが、「ピンチはチャンス」、こんなときこそ攻めたいと健太郎(古川雄輝)はひとり鼻息を荒くする。
「いま必要なものは赤ちゃんのものやと思うの 肌着、おしめ、パジャマ・・・。こんな状況でも笑顔にさせてやりたい、そんなお母さんたちの気持ちに寄り添ってあげてほしいの」と願うすみれ(芳根京子)の想いを、健太郎は「需要」と「供給」という言葉に置き換えてしまう。
ふたりの間には、いわゆる太い川が流れていた。

一緒に泥舟に乗って沈むことはできん


徹底してビジネス視点のひとはここにも。
「ようするに、エイスは飽きられたんだよ」「売れなければ、売れ続けなければ意味がない」と厳しい古門(西岡徳馬/徳の字旧字)はエイスから出資を引き上げると無慈悲だ。
エイスの様子を監視していた古門。「外から、そして中からもね」と。中のひとは玉井(土平ドンペイ)。
「一緒に泥舟に乗って沈むことはできん」と言う玉井は人間のいやなとこを一身に背負った存在だ。このひとが卑しければ卑しいほど、ピュアなひとたちが際立つわけで、そういう意味ではすごく頑張っている。

うちにいたらええ


ピュアな善人といえば、潔(高良健吾)。
会社が倒産し行方不明になっていた栄輔(松下優也)が、その年(昭和48年)の暮れ、潔の家を訪ねてくると、「自己破産して0になるんや。そこから自由に発想して1からはじめるんや」「うちにいたらええ」「頼ってくれ」と懐の広さを見せる。
彼は、赤ちゃんたちと並んで「べっぴんさん」の希望である。
闇市で粗悪品を売っていたこと以外、いやなところがひとつもない。すみれが少女のとき、バイクに乗って颯爽としていた憧れのひとのままである。

ゆり(蓮佛美沙子)も「また一緒なんて闇市の頃みたい。なつかしいわあ」とつとめて明るく振る舞う。
しょんぼりしている人に、ことさら同情するわけでなく、ふつうに明るく前向きに手を差し伸べられる人たちって素敵だ。

高良健吾と松下優也、3歳しか年齢が違わないなんて思えないほど、高良健吾が酸いも甘いも噛み分けた成熟さを見せる。その研鑽に感動するばかり。映画「まほろ駅前多田便利軒」(2011年大森立嗣監督)で高良は、裏社会のボス・星という若いけどやたら大物感のある役を演じていて、当時からいまに至る片鱗があったことを思わせる。

困っていてもさくらの出産を祝う栄輔。「あいちゃん・・・」と名前を噛み締めたときの表情が、いままでのツッパった険しい顔と違っていて、赤ちゃんの存在が、弱った栄輔に間接的ながら希望をもたらしているのを感じさせた。

みんなこれからどうなるのか。すみれは想いを貫けるのか。「べっぴんさん」最終回までいよいよあと3週間!
(木俣冬)