昔から「春眠暁を覚えず」と言います。春の夜は心地よく、朝になったのも気づかずつい寝過ごしてしまう……という意味の、中国由来のことわざです。しかし、春にうとうとしてしまうのは、実は暖かさのせいだけではありませんでした。

春は1年でもっとも寝にくいシーズン?

近ごろ眠いのは当たり前。気候もポカポカ暖かく、ついうとうとしてしまうもの……そんなふうに思っていませんか? 実は、春、眠気に誘われるのはポカポカ陽気のせいだけではありません。意外に思われるかもしれませんが、春は1年の中でも眠りにくいシーズンなのです。春特有の理由から眠りの質が低下するので、睡眠不足、朝スッキリ起きられない、昼間もうとうとしてしまう、というわけなのです。

理由は大きく3つあります。1つは花粉症によるアレルギー鼻炎です。鼻がつまって口呼吸になったり息苦しかったりすると、眠りの質が低下します。アレルギー鼻炎対策は後述します。

2つめの理由は、身の回りの環境、人間関係の変化が大きい季節であることです。たとえば、みなさんの職場でも異動があったり、新しい人が入ってきたりしませんか?個人的に引っ越しをしたり、新しい職場に移ったりする方もいるでしょう。子育て中のお母さんも、新学期を前にあわただしい日々ではないでしょうか。新しい環境、新しい人間関係に慣れるまでは、ふだんよりも緊張するものです。つまり春は、ストレスがたまりやすい季節といえます。ストレスが快眠をさまたげる一番の原因であることは、みなさん、もうよくご存知ですね。

そして3つめの理由は、寒暖差の大きさです。真冬の寒さから、グーッと気温が上がって暖かくなったと思ったら、次の日はまた寒さに逆戻り。冬から春にかけては寒暖の差が激しく、気候が安定しません。体もそれに合わせて調節をこまめにしなくてはならず、実は体に大きな負担がかかっているのです。寒暖差という物理的な変化もストレス要因になります。 

睡眠中の寒暖差対策は、寝具を賢く活用して対応しましょう。今も羽毛布団や毛布をかけて寝ている方が多いと思いますが、その他に、綿、ガーゼ、シルク素材などの薄手のかけ布団を2〜3枚、用意しておきます。日によってちょっと寒かったり、ちょっと暖かかったりする春の夜。薄手のかけ布団で微調整することができます。

快眠は花粉対策から

最近は春のスギ花粉だけではなく、秋のブタクサ、季節を問わないハウスダストなど、年中アレルギー鼻炎のアレルゲンが飛びかい、鼻炎に悩まされる人が増えています。

対策としては、まず寝具の見直し。最近は寝具メーカーもいろいろ工夫していて、花粉のつきにくい布団カバーやシーツを発売しています。多少コストがかかりますが、快眠のための必要経費と考えてもいいと思います。

次に、洗濯物は部屋干しすることです。パジャマやシーツなど寝具はもちろん、洗濯物すべてを部屋干しにすること。私はこの季節、浴室乾燥を利用しています。

お布団クリーナーも効果があります。メーカーによって特性は違い、効果も多少違うと思いますが、使わないより使ったほうが、当然、お布団はきれいになります。

そもそも論ですが、花粉は外から入ってきます。外から帰ってきたあと、上着をそのままクローゼットにしまっていませんか? クローゼットは寝室にあることが多いですから、これをすると花粉を寝室にまき散らすことになります。上着は家に入る前にパタパタはたいて、家の中でもクローゼットや寝室に持ち込まないことです。できれば玄関にハンガーを置いて、そこに掛けておきましょう。

このほか、室内の花粉やホコリは床に落ちてたまるので、床から30cm程度の高さがあるベッドで寝ましょう。マスクの着用もおすすめです。

春は異動や歓送迎会、いろいろあって眠いです……。



■賢人のまとめ
春は環境の変化や寒暖差が大きく、ストレスがたまりやすい時期。眠りの質も低下しがちです。薄いお布団の重ね掛けや、室内の花粉対策が必要です。忙しい日々と思いますが、花粉対策の決め手はこまめな掃除です。

■プロフィール

睡眠の賢人 友野なお

睡眠を改善したことにより体質改善に成功した経験から、睡眠を専門的に研究。
科学でわかるねむりの環境・空間ラボ主宰。著書に『やすみかたの教科書』(主婦の友社)など。