『昭和天皇の朝食はつねに洋食だった(写真・小林庸浩)』

〈昼食  麦入りご飯と味噌汁、漬け物、鰆の柚庵焼きに、はじかみ(生姜)と栗の甘露煮添え……〉

 これは、ご在位中の昭和天皇のメニューだ。「天皇家の食卓」と聞けば、さぞ豪華だろうと想像するが、そこに並ぶものは、私たちがふだん口にするものと大きくは変わらない。

 実際に何度もその食卓に招かれた、今上天皇のご級友で元文相の島村宜伸氏はこう明かす。

「東宮御所に何度も伺いましたが、いただいたお食事は思った以上に質素で、味つけは薄味でしたね」

 天皇陛下の日常のお食事を作るのは、宮内庁大膳課の職員だ。宮内庁総務課報道室によれば、平成28年度末の大膳課の定員は43名。配膳、調理、経理、食器と担当が分かれ、調理を担当する厨房係は、第一係が和食、第二係が洋食、第三係が菓子類、第四係がパン類、第五係が東宮御所のお食事を担当する。

 食材となる肉や野菜、乳製品などは、栃木県の御料牧場の生産品だ。

「御料牧場では、トマト、レタス、キャベツなど約20種類の野菜を栽培し、化学肥料や農薬の使用は最低限にとどめています。平成29年1月現在、乳牛32頭、鶏792羽、豚58頭、めん羊355頭を飼育。放牧や平飼いでストレスを与えない飼養管理です。生産品には、牛乳、ヨーグルトなどの乳製品や、鶏卵、鶏肉、羊肉、ハム、ソーセージなどがあります」(宮内庁総務課報道室)

 皇室の食卓では、かつて侍医が「御試食(おしつけ=お毒見)」をしているといわれていたが、現在は? 宮内庁総務課報道室によれば、「そのような事実はございません」との回答だった。

 お食事は、なにより天皇陛下の健康を左右する。皇室担当記者が語る。

「陛下の献立は大膳課が作り、侍医が栄養のバランスやカロリーをチェックしています。陛下は、ご病気も経験され、ご高齢でもあるので、食事の量も減ってきていますが、ご健康と長寿には、お食事が欠かせないのです」

 健康的で質素な食生活を送る天皇陛下。では、好きなものを食べることはできないのだろうか? じつは、行幸啓のたびに、陛下が希望するメニューがある。それが、カレーライスだ。

「陛下がお好きだということもありますが、カレーなら簡単に作れて話しながら食べることもできます。訪問先の負担を少しでも減らそうとする陛下のご配慮でもあるのです」(皇室担当記者)

 ここにも、国民の気持ちに寄り添う陛下の思いやりが表われている。

(週刊FLASH 2017年2月28日号)’