柏戦で1得点・1アシストをマークした中村。会心の内容に「久々に『すげえな』と思いながらやっていた」。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 試合後、柏のある選手からこういう言葉を投げかけられた。
「フロンターレ、強いですね」
 
【川崎 2-1 柏 PHOTO】中村憲剛が1ゴール1アシストの活躍!

 2-1というスコアだけを見れば、完勝というイメージはあまり湧かないが、まだ公式戦で5試合を消化したばかりとはいえ、内容は今季一番のものだった。
 
 試合前日、小林は「明日は良い攻撃が見せられる」と語っていたが、チームはその言葉を見事に体現するパフォーマンスを見せた。立ち上がりからボールポゼッションで相手を圧倒。セカンドボールに対しても目を見張る対応の速さがあった。
 
「チームの戦術的にも合っているけどボールが取れないという時間が続いていた。フロンターレの攻撃を止めることができなかった」
 柏の武富孝介はこう振り返るほど、川崎がいわゆる“ハーフコートゲーム”で押し込む展開がほとんどを占めた。
 
 その中で際立つ存在感を放っていたのが、昨季のMVPである中村憲剛だ。トップ下の位置に入ると、前線で積極的に顔を出しリズムを作るパスを配球し、開始早々には絶妙なミドルシュートを放つ。これは中村航輔のセーブに遭うも、立ち上がりから調子の良さを示した。
 
 そして42分にCKから見事なキックで谷口のゴールをアシストすると、前半終了間際には阿部のお膳立てから追加点を記録する。結果としてこの2つが勝利を呼び込んだ訳だが、中村はこれでチームがリーグ戦で記録した5点のうち4点に絡んだことになった。
 
「自分が前に入ったら『得点に絡む』『チームの勝利に貢献する』というのは変わらないテーマでもある」と頼もしい発言をするが、直後に「でも、今日はたまたま。彰悟がしっかり決めてくれて、阿部ちゃんがパスをくれたから」と謙遜するあたりが彼らしい。
 
 振り返れば1節の大宮戦も同じような形だった。CKで小林のゴールをアシストし、自らの得点はゴール前でほぼ無人といって良いゴールに蹴り込んだものだ。
 
 ただ、やはり決められる場所にいることやゴールを呼び込んだ精度の高いキックは、彼の能力の高さを示すものであり、本人が謙遜して言うような“たまたま“ではないだろう。長短のパスでゲームを作り、かつ自らネットを揺らせる攻撃的MFである中村の希少価値は高い。加えてこの日は走力でも見張るものがあった。
「今日はミーティングの時のオニさんの一言で、『攻守で圧倒する』というのがあって。コーチ時代も言っていたんですけど、どうしてもうちは攻撃で圧倒するチームだった。(課題は)攻“守”というところでしたから。前からも怯まずいって、後ろも前が行ったらついていけと。レイソル自体もあそこまで前からプレスしてくるとは思ってなかったと思う 」攻から守の切り替えを徹底するなかで、とにかくボールを奪いに行く際の鬼気迫った空気感や2度追い、3度追いをするシーンが全体的に際立っていた。
 
 もちろん、中村も最前線でそれを体現し、攻撃時でも長い距離を走ってチャンスを呼び込むシーンがあった。70分に柏・中山雄太の退場を呼び込んだのも、中村の長距離のドリブル突破からだ。「あそこから先はなかったし、ちょっと赤は厳しいと思った」と判定に対する同情も見せ冷静に語るも、結果的にはあそこで迷いなく前進したことでチームを数的優位に持っていけたことは確かだ。
 
 組織としての攻撃面については、流れの中で崩しきってゴールを奪えなかったことに反省を感じている。とはいえ、攻守両面でイニシアチブを握ったこの試合で掴んだ手応えは大きいようだ。
「前半から久々に『すげえな』と思いながらやっていた。ひとつの理想形は見えたかな、と」
 
 再出発をしたチームが完成形に近づくにはまだ時間がかかるし、その中で苦しみながらも勝っていくことは非常に意味がある。このままいけば、これまで築いてきたものとは違った川崎のイメージを、観る者に与えられるかもしれない。
 
 それでも、ただひとつだけ変わらないことがある。やはり等々力競技場に歓喜が生まれる時、その中心には中村憲剛がいるということだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)