日本の多くの報道では、本当の意味でのトランプ政権の深刻さが伝わらず誤解だけを生んでしまうと語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが日本のマスメディアが報道するトランプ大統領についてのもどかしさを語る。

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もどかしいーー。米トランプ大統領に関する日本のマスメディアの報道を見るにつけ、そんな思いが募ります。

例えば2月1日、カリフォルニア大学(以下、UC)バークレー校でトランプを支持する識者に対する大規模な抗議デモが発生し、一部が暴徒化した件。朝日新聞デジタルは同月3日に【反トランプデモが暴徒化、米大学閉鎖 講演会場に花火も】との見出しで、次のように伝えています。

〈(前略)トランプ大統領を支持する英国人コメンテーターが講演することに反対する若者たちのデモが暴徒化し、大学が閉鎖された。(中略)講演する予定だったのは、保守的なニュースサイト『ブライトバート・ニュース』のミロ・イアノポウロス氏。数千人が集まったデモは、当初は平和的だった。ところが黒装束姿の数十人が加わり、講演会場に花火などを投げつけたり、窓ガラスを割ったりした。講演は中止された。(後略)〉

……間違ったことは書かれていません。しかし、逐語訳すぎて物事のニュアンスや、事件の背後関係がまったくわからない。

まず、講演する予定だった英国人コメンテーターの名前ですが、ギリシャ系英国人なので「ミロ」ではなく「マイロ・ヤノプルス(あるいはヤノポロス)」という発音になります。すでに出ている他の日本語記事でもそう表記されています。彼はトランプを強力に後押しする極右勢力“Alt−right”(オルト・ライト)のアイドル的存在で、ブライトバート・ニュースは「保守的」どころか、あらゆるマイノリティや女性への差別を隠そうともしない「極右」なニュースサイトです。

さらにいえば、今回の講演会はマイロが2015年末から続けてきた“デンジャラス・ファゴット(危険なオカマツアー)”なる全米行脚(あんぎゃ)のファイナル。一方、UCバークレー校はいわずと知れたリベラルの総本山。そして、その5日前にはトランプが一部イスラム圏国からの入国禁止令を出したばかり……と、どこから見ても炎上する要素満載でした。

また、暴徒化した黒装束の正体も記事ではわかりません。彼らは「ブラック・ブロック」といい、もとは80年代の欧州で生まれたアナーキスト集団。トランプの大統領就任日にもあちこちで暴徒化していたように、要は古くからの左翼活動家が“トランプ祭り”に便乗して暴れているという図式です。これを見て「反トランプデモが暴徒化した」というのは、あまりに乱暴すぎます。

今回はたまたま朝日の記事を例示しましたが、基本的にはどの媒体も同じです。日本の多くの報道ではコンテクスト(文脈)がごっそり抜け落ち、本当の意味でのトランプ政権の深刻さが伝わらず、「トランプも反対派もどっちもどっちだな」といった誤解だけを生んでしまいます。

メディアの努力が足りない、などと一刀両断にするつもりはありません。文字数などの問題もあるでしょう。しかし、日本メディアの薄い記事や、背後関係をまったく読み取ってくれない機械翻訳に頼るばかりでは、英語圏のまともな情報は入ってこないということです。

それに気づきもせず、「これって日本でいえば○○と同じだよね」などと議論する“日本に置き換える病”の空虚さよ……。僕のこのもどかしい気持ち、少しは伝わるでしょうか?

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム〜あなたの時間〜』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など