世界トップを目指すベンチャーキャピタルの新たな挑戦

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専門人材30人が徹底支援を行う”ハンズオン投資”を掲げる独立系VCグローバル・ブレイン。純投資とCVCの双方を手掛けるハイブリッドスタイルで、世界的にも稀な”VCの新たな姿”を描き出す。シリコンバレー本流企業にもリードインベスターとして参画し、グローバルティアワン(Tier1)VCへの道を突き進む。

「日本のベンチャーキャピタル(VC)業界にとって大きな転換点となる投資案件と言えるだろう」

グローバル・ブレイン(GB)社長の百合本安彦は、身を乗り出すようにそう語った。日本を代表する独立系VCを率いる百合本が興奮を隠せない様子だったが、それも無理はない-。

出資の決まったSuperflex(スーパーフレックス)は、世界最大規模の研究機関である米SRI Internationalからスピンオフしたパワードクロージング開発企業である。その基礎技術は、インターネットの原形であるARPANETやGPS(全地球測位システム)を開発したDARPA(アメリカ国防高等研究計画局)の軍需プロジェクトから民間転用している。

同社製品の最大の特長は、既存の外骨格型パワードスーツより格段に軽く、ファッション性も追求できるため、衣類として身につけられる点だ。介護者の身体機能を拡張する既存スーツとはそもそも発想の観点が異なり、高齢者(被介護者)が自ら着込むことで、基本的な日常動作を自分自身で行えるように補強する。

同社のリッチ・マホーニーCEOはSRIロボティクス部門の責任者を7年以上務めた業界第一人者-、つまりSuperflexは世界トップクラスのエンジニアやデザイナーが集まった、シリコンバレー本流のテクノロジー企業と言える。ここで、日本の独立系VCであるGBがリードインベスターを取り、世界の資産家トップ10に入る香港実業家・李嘉誠が運営するHorizons Venturesなど、海外トップVCと共同出資したインパクトは大きい。

今回、SuperflexのシリーズAでの調達総額は960万ドル、大手VCが手を出せない金額では決してなく、同社は世界中から引く手数多の存在だった。実際、百合本がマホーニーと出会ったのは2015年12月、そこからGBは度重なる提案を続け、最終的に投資実行が決まったのは16年10月である。

投資案件の95%でリード 徹底する「ハンズオン」

なぜ、GBは今回の投資を実行できたのか。裏返せば、Superflexの期待値はどこにあったのか-。その答えは、GBのハンズオン(支援先の経営に深く関与する育成型投資)、つまり専門的人材による徹底的支援がキーポイントとなっている。

投資検討段階から、百合本は5〜6人を率いて提案を繰り返した。ロボティクス、素材、IT・知識財産権、ヘルスケアなど各々の専門知識を持つベンチャーキャピタリスト、そしてシリコンバレーを熟知する米責任者、まさにGB一丸となった投資案件である。GBの知見を活かした日本・アジア展開戦略、そのなかでGBがどう貢献できるかを説明し続けた。

昨今の世界における投資スタイルの主流はハンズオンとは真逆のハンズオフだった。手間のかかるハンズオンは、多くのVCが避けるところだが、百合本は1998年のGB設立当初からこの姿勢にこだわり続けてきた。かかる手間以上に”利点”を多く感じているからだ。

「経営者と共通言語で話せるのが一番大きい」

ハンズオンを語る際、切っても切り離せないのが「リードインベスターとなること」である。リードVCは、資金調達の各ラウンドを仕切る立場で、GBは日本の投資案件の95%においてリードインベスターとなっており、これは業界平均10〜20%から大きくかけ離れた数字だ。

「リードVCは、経営者と二人三脚で経営する立場で、企業情報がかなり入ってくる。これがハンズオンにつながっていくし、一方でそういった情報がないとできない。だから、我々のなかでハンズオンとリードは同じ存在である」