国内最高峰のフォーミュラカーレースである全日本スーパーフォーミュラ選手権。数年前までは人気も下降気味だったが、ここ2〜3年になって国内のみならず、ヨーロッパをはじめ海外からも注目を集め始めている。


昨年のGP2王者ピエール・ガスリーがスーパーフォーミュラに初参戦 その理由のひとつとなっているのが、「将来のF1ドライバー候補」と言われている有力海外ドライバーの参戦だ。

 なかでも記憶に新しいのが、2016年のストフェル・バンドーン(2017年はマクラーレン・ホンダからF1フル参戦)。彼がやってきたことによって大きな話題となったが、今年はさらにすごいと言われているピエール・ガスリーが参戦する。

 ガスリーはフランス出身の21歳。2016年はF1直下のレースであるGP2シリーズで4勝を挙げ、シリーズチャンピオンを獲得した。また、セバスチャン・ベッテルをはじめ数多くのF1ドライバーを輩出したレッドブル・ジュニアチームに所属し、昨年からF1のレッドブル・レーシングでのリザーブドライバーも兼務。将来はF1へのステップアップも確実と目されている。

 今季はレッドブルのサポートを受け、スーパーフォーミュラでも彼のマシンのみF1と同じレッドブルのカラーリングだ。一般ファンに初お披露目となった3月5日の鈴鹿サーキット・モータースポーツファン感謝デーでは、多くの人の輪ができていた。

 ヨーロッパを中心に活動してきたガスリーにとって、日本でのレースは初めて。最初はわからないことや不安なこともあったようで、日本のことをよく知るふたりに連絡を取ったという。ひとりは、同郷の先輩で2009年(当時はフォーミュラ・ニッポン)のシリーズチャンピオンであるロイック・デュバル。もうひとりは、GP2時代から仲のいいバンドーンだ。

「今回の参戦にあたって、先輩のロイック・デュバルに電話したよ。日本でのレースのことや文化的なこと、生活面についても聞いたよ。また、昨年走っていたストフェル・バンドーンとも仲がいいから、彼からもクルマのことについていろいろアドバイスをもらった。レースも生活面もポジティブなことばかり聞けたから、(日本でのレースは初めてだけど)特に心配はしていないよ」

 しかし、いきなり日本にやってきて、日本最高峰のレースであるスーパーフォーミュラで活躍するのは、そう簡単なことではない。

 ここには何年も参戦を続けているドライバーが多く、マシンだけでなく、コースの攻略法も熟知している強者ぞろい。そのため、予選は常に0.001秒単位で順位が変わってしまうほどの接戦で、ほんのわずかなミスも許されないシビアな世界なのだ。

 そのなかで、ひとつのバロメーターとなる鈴鹿での合同テストでは、誰もが「想像以上」と驚くような走りを見せた。

 本格的な初テストとなった、鈴鹿での公式テスト。1日目からガスリーは圧巻の走りを見せる。午前中こそ10番手と平凡な順位だったが、午後のテストになると、途中に何度かトップタイムを記録。平均タイムも少しずつ上がり始めていった。

 そして残り5分を切ったところで、新品タイヤを装着して予選を想定したタイム計測を実施すると、1分36秒190を記録して総合4番手。ホンダエンジン搭載ドライバーのなかではトップタイムで、昨年チャンピオンの国本雄資(P.MU/CERUMO・INGING)も上回る結果となった。

 初日のセッションを終えたガスリーは、GP2マシンとのキャラクターの違い、特にコーナーでのスピードの高さに驚いていた。

「GP2と比べるとハイスピードコーナーが本当に速いね。特に1コーナーの飛び込みは”クレイジー”なスピードだった。横Gもすごくかかるから、少し首が疲れたよ。鈴鹿のコースは難しいから、その攻略という部分でもいろいろ学ぶことがあった」

 そして2日目は、決勝を見据えた連続周回のテストやスタートの練習を行なうなど、本番のレースに向けての準備も並行して実施した。残り5分を切ったところで予選のシミュレーションを行ない、前日の自己ベストタイムを0.6秒上回る1分35秒585を記録。総合で3番手となっている。

 昨年のGP2シリーズでのガスリーは、予選で安定した速さをみせ、全11戦中5回のポールポジションを獲得。しかし、決勝では4勝を挙げているものの、表彰台を逃すレースも多く、少し荒くなる部分がある印象だ。ところが、鈴鹿では常にスムーズな動きに徹する走りを見せていた。

 鈴鹿のコース前半の「S字」「逆バンク」と呼ばれるセクションでは、高速で連続するコーナーをクリアしなければいけない。ここでマシンのバランスがうまく決まっていないと、挙動が乱れてタイムロスにつながってしまう。

 しかし、ガスリーはまだ自分好みのバランスになっていない状態でもスムーズに走っており、「丁寧で無駄のないドライビング」という印象を受けた。憶測ではあるが、自分のスタイルにマシンを合わせていくのではなく、自分がマシンに合わせ込んでいくという走りが自然とできるのかもしれない。

 実は昨年、スーパーフォーミュラを戦ったバンドーンも最初は苦戦しており、同時期の鈴鹿テストではコースアウトしてスポンジバリアにマシンをヒットする場面もあるなど、そのときの総合タイムはトップから0.6秒遅れの10番手だった。

 それに対して、今回のガスリーは実質3日目で、チャンピオン経験者の間に割って入る総合3番手を獲得。合同テストの前日に行なわれた鈴鹿ファン感謝デーでの公開テストを含めても、クラッシュするシーンはなかった。このパフォーマンスには、総合トップだったアンドレ・ロッテラー(VANTELIN TEAM TOM’S)も「ガスリーには驚いたよ。すばらしいルーキーだね。バンドーンより手強いかもしれない」とコメントするほどだ。

 テストを終えたガスリーは、「最初のテストで3番手はよかったと思う。マシンもコースも初めてだったから、自分がどこのポジションにいるのかわからないなかでスタートしたけど、この2日間でいい方向に進んだと思う。最初から比べるとマシンのフィーリングは随分よくなったし、最後は自信をもって攻めることもできた。2日間でいろいろなテストができて、さまざまなことを学ぶことができた。次の富士(のテスト)も初めて走るコースだから、勉強しなければいけないところは多いだろうけど、ポジティブに捉えているよ」と、手応えを掴んだようだ。

 まだシーズンが始まっていないため、実際のパフォーマンスというのは100%見えてこない部分はある。だが、テスト終了後のパドックでは、「バンドーンよりすごいドライバーかもしれない」という驚きの声が多数聞こえてきた。

 この段階から優勝候補に挙がるというのは、誰もが予想していなかったことだ。それだけに、今月末に行なわれる富士スピードウェイでの第2回公式合同テストはもちろん、4月22日〜23日に鈴鹿サーキットで行なわれる開幕戦は、日本のみならず海外(特にヨーロッパ)からも注目を集める1戦になることは間違いない。

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