12日、カズこと三浦知良がザスパクサツ群馬戦で40分、先制点を挙げた。イバのシュートをGKがこぼすところに詰め、狭いシュートコースへ左足で正確に流し込んだ。これで自ら持つJリーグ最年長得点記録を50歳に伸ばしただけでなく、このゴールが決勝点となり所属の横浜FCに勝ち点3をもたらしている。

群馬のDF、31歳の一柳夢吾は試合後、小学生だった1990年代前半を振り返った。一柳がヴェルディ川崎(現東京V)のジュニアチームに入ったころ、カズはトップチームで大活躍してる「自分たちの憧れ」だったそうだ。

その後、順調に成長した一柳は2003年、18歳でトップチームの試合に出場する。だが、そこに緑のユニフォームを着たカズの姿はなかった。カズは1998年を最後にヴェルディを離れていたからだ。そして2003年5月24日、ホームゲームで神戸と対戦した際、相手のFWがカズだった。

その試合の一柳は天国と地獄を味わった。CKからゴールを奪ったものの、後半開始早々に2枚目の警告で退場となってしまったのだ。それでも東京Vは3-2で勝利を収めることができた。その試合のカズは、シュートを1本も打てないまま60分に交代している。

14年前を振り返りながら一柳はカズの動きに驚いていた。「まだ動けている、というと言葉が悪いのかもしれませんけど。それで点も取られてしまって」。ゴールはとても悔しかったのだろう。一柳は悔しさ一杯で答えた。だが、噛みしめるように言葉を続ける。

「あそこにボールがこぼれてくるというのが、やっぱりカズさんの『力』ですね。常にFWとして嫌らしい動きを狙ってると感じました」

そう言うと、一柳は少しだけ表情を和らげた。今日のカズは自分たちから勝点を奪っていった憎い相手選手なのだが、それでも幼心に持っていた「憧れ」を思い出してきたのだろう。

「15年前はまだまだ自分も子供で何もわかっていませんでした。それが自分がベテランになってもまた対戦できる。それは幸せだと思っています」

2人の対戦で、1回目は一柳のチームが勝った。今回ははカズのチームが勝利を収めている。きっとあと何回も2人は対戦、勝ち負けを繰り返すことだろう。

【日本蹴球合同会社/森雅史】