神戸の右サイドハーフが永戸を徹底マーク。守備時に瞬間的に5バック気味になるなど、サイド攻撃に蓋をしてきた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 仙台の渡邉晋監督による現役指揮官コラム「日晋月歩」の第3回。テーマは「3.11」だ。多くの犠牲者を出した2011年の東日本大震災から丸6年が経過した。震災後初となる、3月11日の試合にどのような想いで臨んだのか。決して34分の1ではない、特別な試合を振り返ってもらった。
 
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[J1リーグ3節]仙台0-2神戸/3月11日(土)/ユアスタ
 
 3月4日に2節・磐田戦を終えてから3月11日の3節・神戸戦を迎えるまで、これほど思い悩んだ1週間はなかった。戦術面は対神戸だけを考えればいいから明確だったが、メンタル面をどう整理すればいいのか。もちろん、どの試合でも闘う姿勢を見せるのは当然のことだ。
 
 最初に、ゲームについて少し触れておこう。相手のストロングポイントを消すのが上手いネルシーニョ監督が率いるチームだけあって、「そうきたか」と感じるシーンは多々あった。例えば左ウイングバックに入った永戸(勝也)に対する蓋の仕方だ。
 
 対面した右サイドハーフ(スタメンは小川慶治朗、9分からは途中交代した松下佳貴)がワイドに開いていた。攻め残りをしてくれればフリーで永戸を使えると思っていたら、攻守が切り替わるとそのまま永戸のマークに付いてきた。神戸は守備時に、瞬間的に5バック気味になったのだ。
 
 ならばと、うちは左ストッパーの石川直樹を前進させた。もしくはタマ(三田啓貴)を同サイドに援護に行かせて、前を向いてプレーさせる。それによって優位性を保てると分かったから、前半途中から指示を出して、ハーフタイムにも確認をした
 
 では、守備はどうだったか。神戸のカウンターとリスタートが怖かったので、重点を置いてケアをさせた。すると、後半開始からウエスクレイを田中(順也)と代えて入れてきた。個で打開しにくる、とすぐに理解した。
 
 修正を十分に施す前に後手を踏んでしまい、5分間で2失点。ウエスクレイの個人技や彼を経由する攻撃には早めに慣れたし、実際に後半途中から「やられた」というシーンはあまりなかっただけに、もったいなかった。
 メンタル面では、「3月11日の試合で自分たちは何ができるのだろう」から始まり、「この1日だけを勝てばいいのか」「いや、ダメだろう」と思考は行ったり来たり。どうアプローチすればいいのか……。
 
 日程が発表された当初は「当日に神戸と対戦するのか。よし、やってやろう」と奮い立った。しかし、近付くにつれて「試合に勝てば、それだけでいいのか」という気持ちも湧き上がってきた。
 
 一方、チケットの売れ行きが芳しくないとも耳にして複雑な想いもあった。「ユアスタ(ユアテックスタジアム仙台)には行けない」という遺族の方や、多くの場所で行なわれている追悼式典に出席する人だっている。
 
「3月11日に試合をして、何が生み出せるのか」「試合自体をやっていいのか」。そういう感情も出てきてしまった。最初とは真逆の考えが浮かんだ。整理するのに時間が掛かり、勝手に自分の中でいろいろなことを難しくさせてしまったのかなと思う。
 
 そんななかで多くの人と話をして、「自分たちはサッカーでしか表現できない。戦う以上はクラブも選手もサポーターも勝利を目指すわけだから、それを掴み取ろう。魂を込めて戦おう」。そういうシンプルな答に辿り着いた。
 
 だが、それを選手たちにどう落とし込めばいいか。1節・札幌戦と2節・磐田戦は粘り強く、したたかないゲームをできていたから、多くを言わなくてもいいのかもしれない。特別な日の試合に、いろんな人がいろんな想いを寄せてくれ、それを背負いながらも冷静にいられることのほうが大切かなとも考えた。