先日、お互いの出産以来ずっと会えていなかった友人が連絡をくれました。
私たちが知り合ったのは約10年前でしょうか......ある夜遅く、私がゴメス(私の愛犬です)の散歩から戻ってくると、マンションの入り口に立っていた女性に声をかけられたのです。話を聞くと同じマンションに住んでいる方で、会社に家のカギを忘れてしまったそうで電話を貸してもらえないかとのこと。私はもちろんです! と、急いで部屋に携帯電話を取りに行きました。
そのときはそれだけだったのですが、後々、また偶然にお会いしたときにお話したら、私がお世話になっている出版会社で働いていらっしゃって、なんと私の友人や妹とも繋がっていることが分かったのでした。
お互いに年齢も近く、気さくで素敵な方だったので、すぐに仲良しになって、時々お部屋を行き来するようになりました。その頃は2人とも独身だったのですが、しばらくしてお互いパートナーに出会い、そのマンションを引越して結婚、出産をし、私はNY、友人はベルギーへと移住したため、その後は何度か連絡を取ったきりですっかり御無沙汰になっていたのです。
そして先日、とても久しぶりに連絡をいただいたのでした。お互いの子どもたちの話などの後に、映画製作をされていた旦那様が昨年春ベルギーのテロで亡くなられて、ドキュメンタリーの映画を残されたと......。私は言葉を失ってしまいました。でも友人は色々と話をしてくれて......前に向かって強く生きていらっしゃる感じが伝わりました。
そしてその作品を観せてもらったのです。それは2015年夏、福島第一原子力発電所からおよそ12キロメートルに位置する双葉郡富岡町で撮影された『残されし大地 LA TERRE ABANDONEE』。2011年の原発事故後も父親と一緒に自宅に留まり、町に残った犬や猫、ダチョウなどの動物の世話をしている松村直登さんという方、富岡町の自宅に戻り畑で野菜を作りながら生活して来られた半谷さんというご夫妻......原発事故後の福島に生きる人びとをテーマに製作されたドキュメンタリーです。

旦那様のジル・ローランさんは長い間、数々の映画(『チキンとプラム〜あるバイオリン弾き、最後の夢〜』など)でサウンドエンジニアとしてご活躍され、この作品はじつは初の監督作品だったそうです。音響技師であっただけにまず、音から心を揺さぶられました。
福島の自然や人々の暮らし、犬や猫、ダチョウなどの生き物。すべての生命の細やかな動きや静かな息遣いまでもが、見事にフィルムの中に捕らえられていて驚きました。そこに残るひと、離れるひと......。言葉数は少なく、視覚と聴覚で私たちに様々な問題を投げかけます。押し付けるようなシーンは一つもないのに、逆に強く私たちに話しかけているように感じます。夜空に浮かぶ煌々とした月や、ただ風になびき続けるカーテンのような静かなものまでもが......。
『残されし大地 LA TERRE ABANDONEE』は、3/11(土)からシアター・イメージフォーラム、札幌シアターキノ、鹿児島ガーデンズシネマにて公開されます。福島の原発についてというよりも、自分の人生の選び方や、個人の幸福についてなど、パーソナルな問題に引き込まれた貴重な作品でした。ぜひ観てくださいね!
[映画『残されし大地 LA TERRE ABANDONNEE』公式HP, 公式Facebook]

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