「Thinkstock」より

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「IoT(モノのインターネット)時代の到来」「第4次産業革命の幕開け」などといわれる今日、「AI(人工知能)」や「ビッグデータ」「シェアリング」「キュレーション」「プラットフォーム」「フィンテック」などさまざまな用語が日常生活に溢れる。

 こうした言葉の意味するものが、我々をいかなる方向へ導いてくれるのか、また、我々の生活に今後どのような役割を果たしてくれるのか、定かではない。

 現実を直視すれば依然として、「貧困」や「格差」「少子高齢化」「労働人口の減少」「消費の停滞」「家庭崩壊」「教育の欠如」など、グローバルレベルで政治や経済、社会など広範囲にわたる複合的かつ深刻な問題が多数存在する。

 これらの状況から見えてくるのは、社会から取り残された人たち、より厳密に言えば、日常生活のなかで公平にサービスを受けられない社会的弱者にある人たちが救済されるか否か、といった厳然たる課題が存在することである。いわゆる「社会包摂(ソーシャル・インクルージョン)」の考え方である。

 3度の食事が摂れずに十分な栄養が摂れない貧困家庭に暮らす子供たち、保育園に子供を入れたくても入れられない共働きの親、起業したくても資産がないので金融機関の融資を受けられない企業家など、これらすべてのケースは依然として社会包摂が及ばない領域にある。

 それでは、IoTやAIといった新たなコンセプトや技術は、社会的な困難や孤立下にある人たちに社会参加の機会を開き、社会的な課題を緩和し解決に導くサービスや社会体系につながる救世主となり得るのであろうか。

 たとえば、AIを活用したオンライン融資は、社会包摂を実現するサービスのひとつである。米国を中心に現在さまざまな事業者がこの市場に参入している。このシステムでは、まずオンラインで融資を受け付けると、アルゴリズムがインターネットを通じて与信判断の材料となるさまざまな種類の情報を収集する。

 この情報を基に、融資申し込み企業の信用力や返済能力を調査して融資の可否を判断する。融資の審査完了までにかかる時間は概ね5分で、翌日には融資申し込み企業の銀行口座にお金を振り込み、融資に関するプロセスがすべてオンラインで完了する。

 オンライン融資は、既存の金融機関からの融資を断られる中小企業に運転資金を融資するかたちで融資の道を拓いた。その意味で、フィンテックはいわゆる「金融包摂」になる可能性を秘めている。

 このように、ITを駆使したイノベーションの新たな潮流は、社会包摂として社会の複合的な問題を解決する手段となり得る。今後新たに生み出されるコンセプトが単なるバズワードに終わらないことを期待したい。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)