北朝鮮当局は、住民を対象に「もはや中国は信じられない」「(中朝関係の)破局に備えよ」などと言った内容の政治講演会を開いている。その意図を巡り、様々な意見が飛び交っている。

平安北道(ピョンアンブクト)のデイリーNK内部情報筋によると、新義州(シニジュ)市人民委員会(市役所)の傘下にある、建設資材を調達する企業所で2月初めに行われた政治講演会では「中国との関係が良くなることはもはやないので、中国を牽制すべき」だとの内容の話が語られた。

また、「中国にはもはや期待できないし、信じてもいけない」「朝中関係は最悪だ、破局に備えよ」ということすら述べられた。講演は「我々の自強力で強盛大国を作り上げよう」という結論で締めくくられた。

このような講演会は複数回開催され、100人から300人が参加した。合計すると1000人以上が参加した計算になると情報筋は述べた。

講演提綱(レジュメ)は朝鮮労働党の宣伝部から伝達されたものだ。そのため、他の地域でも同様の内容の講演が行われている。

実際、咸鏡北道(ハムギョンブクト)のデイリーNK内部情報筋は、会寧(フェリョン)市の遊仙(ユソン)労働者区でも政治講演会が開かれ、「中国に期待せず、我々の力で難関を突破しよう」ということが述べられたと語った。

中朝国境沿いの地域で相次いで行われている講演会に参加した北朝鮮の人々の間には、当惑と動揺が広がっている。

北朝鮮の市場で売られている品物の約8割が中国製だと言われているが、それほど北朝鮮経済は中国への依存度が高い。中国との行き来がストップすれば、北朝鮮がたちまち困窮するのは火を見るより明らかだ。

そのため、いくら国際社会が厳しい制裁を行っても、「中国との貿易だけは続けられるだろう」と楽観的に考えてきたのに、突然「中国を信じるな」と聞かされたのである。

情報筋は「今までの講演会で自強力を強調することはあっても、中国批判は聞かれなかった」「国境地域の人々は貿易、密輸など中国との交易さえ続けられれば生き残れるだろうと考えていただけあって、今回の講演内容に当惑している」と述べた。

しかし、このような講演内容は当局の本音ではないだろうというのが大方の見方だ。経済制裁によるダメージを和らげるための唯一のルートである中国に、北朝鮮が完全に背を向けるのは難しいだろうということだ。

そのため、一部の人は「中国への過度な傾倒への警告」と見ている。豊かな中国に好感を持つ人が増えているが、これが体制にとって好ましくないため、一種の「警告」を与えたようなものだということだ。

情報筋は、次のように語った。

「国境地帯ではほとんどの人が中国との交易で生計を立てている。『自力自強』を強調する当局の立場からすると、過度な中国依存は好ましくないのだろう」 「中国を敵視しているというより、自強力のプロパガンダを強化しただけだろう」 「北朝鮮は中国なしでは生き残れないことを誰よりもよくわかっているのが当局だ。また、中国も北朝鮮を見捨てられないことをよくわかっている。だから、中国批判は口先だけのものだ」

そんな勇ましい金正恩党委員長を「天出名将」と呼ぶ人もいる。一見、正恩氏を褒め称えているように聞こえるが、正恩氏が「最強の内弁慶」であると揶揄する、自虐ネタだということだ。