「CHANCE」への想いを語ったHYの名嘉俊と仲宗根泉

 沖縄在住5人組バンドのHYが3月1日に、通算12枚目のフルアルバム『CHANCE』をリリースした。前作『LIFE』から1年8カ月ぶりのオリジナルアルバム。2000年に結成し、地元・沖縄を拠点に「366日」など多くの胸に響く曲を歌い続ける。昨年はロックバンドのBIGMAMAとコラボしたアルバム『Synchronicity』をリリース。そのコラボが自分たちを見つめ直すきっかけになったという。メンバーの名嘉俊(Dr)と仲宗根泉(Key&Vo)は「この『CHANCE』を聴いて、日々のおこないをチャンスに変え、自分をチェンジしてほしい」と話す。バラエティに富んだ楽曲はどのようにして生まれたのか? そして、そこに込めた気持ちとは? 名嘉と仲宗根の2人に話を聞いた。

気持ちを託した紙飛行機に紅型で心を込めて

名嘉俊

――『LIFE』から1年8カ月ぶりのアルバムとなりましたね。

名嘉俊 この1年8カ月、目まぐるしい毎日でした。なかでも昨年、BIGMAMAとのコラボでアルバム『Synchronicity』を出して、ツアーをおこなったのが大きかったですね。自分たちを見つめ直すきっかけにもなったし。さらに新しいお客さんとの出会いや、同級生との再会などあって。このアルバムは、そうして常に誰かのことを思って作った10曲を収録しました。

 巡り会い、転機、好機、そういう言葉を一つにくくれる言葉はないか? と探していった結果『CHANCE』というタイトルにたどり着きました。あと個人的には、沖縄で昔、好きだった人との偶然の再会もあって。そういうのも、たまには良いなと思えたし。

――久しぶりに会って、変な感じにはならなかった?

名嘉俊 向こうは、僕らをテレビとかでたまに見てたみたいで、すごく普通でした。でもこっちは、本当に何年ぶりだったからビックリして。でもそれをきっかけに、あの時、付き合ってたらどうなっていたのかな? 結婚してたのかな? とか、想像して曲を書くことが出来ました。

――それで出来たのが「BLUE」ですね。

名嘉俊 そうなんです。僕が海、再会した彼女を空に例えて。結局、海と空って、同じ青だけど繋がらないじゃないですか、その2つを繋ぐ曲が書きたくて。考えながら、次に出会ったときは、もっと自然に話せたら良いなとかと思って、そういう気持ちも書いていったので、本当に大切な曲になったんです。それで、自分たち5人だけのものにしておきたいと思えた曲です。でもこれを聴いて、また恋でもしてみようかな?って思えるファンの人が増えたら嬉しいですけど。

――「BLUE」には、青い海と空がイメージされる爽快さもありますね。

名嘉俊 2年くらい前から、iPadとギターを持ってビーチなどの屋外で曲を作っていて。そういう制作が、反映されました。でも、たまに飛行機の轟音が入っちゃうのが、屋外の難点なんですけど。

――そういうのは、沖縄らしいですね。でも歌詞に飛行機雲というワードも出てくるし、ジャケットには紙飛行機のデザインがあって。

名嘉俊 その「BLUE」に出てくる飛行機雲をヒントにしました。紙飛行機は、折るごとに温もりが増していくし、自分たちの気持ちや言葉を託して飛ばすものでもある。託して飛ばして、それを受け止める人がいて気持ちが重なって、それがチャンスになっていくんじゃないかと思って。それで、そこに沖縄の紅型(びんがた)という染めものによく使われる模様を付けて、心を込めました。

今の憧れは美空ひばりさんとスピードワゴン小沢さん

仲宗根泉

――「ロックスター」という曲もあって。こちらはロックバラード。自分にとってのロックスターは、今も昔と変わらないものですか?

仲宗根泉 変わらないですね。私の場合は、中学のときの先輩で、学校いちファンキーでかっこよかった人なんです。先輩は3年で私は1年だったんですけど、教室で居残りしてるふりをして先輩のことを目で追って見てました。

 3〜4年くらい前にラジオの企画で、小中校生からお手紙をいただいて、加藤ミリヤさんと曲を作ったことがあって。HYは20代後半〜30代のファンの方が多いので、ミリヤのファン層みたいな学生の世代だとこういう悩みがあるんだな〜って新鮮で。それから何年か経って、こういう曲が生まれて、歌詞にはハイスクールという言葉も出てきて。ミリヤとの仕事が、当時はそこまで思わなかったけど、今に生きているんだなって。それで、その先輩のことを思い出しながら書いていった感じです。

――逆にHYのことをスターと憧れている子もいるわけで。

仲宗根泉 実際にそういう自分とファンの方との関係性を、すごく上手く曲に落とし込んでいる方がいて。そういうのはかっこいいな、自分なりの形でやりたいなと思って。そういう意味合いも込めていますね。

名嘉俊 いず(仲宗根)はバラードのイメージが強いけど、ここまでロックのアレンジで仕上げてきたのが、新しかったですね。憧れって、やっぱり大事ですね。自分たちでも学生時代の気持ちになれる曲です。

――今の憧れは?

仲宗根泉 これは初めて言いますけど、歌における心の伝え方という部分では、ずっと美空ひばりさんみたいになりたいと思っています。

名嘉俊 ああ〜。最高やね!

仲宗根泉 歌の神髄と言うか。歌い方の問題ではないんだけど、歌の持つ力を声と表現力で最大限まで持って行くという部分で、ひばりさんみたいに歌いたいって、ずっと思ってました。

――表現以上の何かを持ってましたよね。

仲宗根泉 そうそう。目に見えない力があるんです。そういう憧れはあります。

名嘉俊 僕は、スピードワゴンの小沢さん(笑)。小沢さんは、何でミュージシャンにならなかったんだろう? と思うくらい、言葉のチョイスが上手いです。小沢さんが何か言うと、みんな気持ち悪いって言いますけど、それはメロディがないからなんですよ。だからきっと、誰かとコラボして小沢さん語録を歌詞にしてメロディを付けたら、絶対に売れると思います。ものすごく、あま〜い曲になると思います!

――「光」はけっこう激しめのサウンドで。

名嘉俊 アルバムのバランスとしてハイスピードな曲調が欲しいと思って、音先行で作りました。

仲宗根泉 ギターの(宮里)悠平と、ボーカルのヒデ(新里英之)が、ギターであんなにやり合ってるのって、最近はなかったと思います。かっこよくて楽しくて、笑いが止まらなくなります。

名嘉俊 いずが「ロックスター」を書いてきたから、じゃあもう少しその延長で遊びたいなと思って書いたんです。だから、曲調や表現は違うけど、根底では似ている部分があって。

――<明日もいい日になれじゃなくて 明日もいい日にするよ>という歌詞がグッときます。要は、自分次第なんですよね。

仲宗根泉 そうそう。自分次第なんですよ。

名嘉俊 去年、いずが、トークメインの女子会ライブを開催して。夜の営みのこととか、深い話をすごくやっていたんですけど、その感想がSNSにあがってるのを見て。その感想にそういうことが書いてあって「確かにそうだな〜」と思ってそのフレーズを書いたんです。

仲宗根泉 それ、今知りました。まさかあのイベントが、きっかけになっていたとは! 女子会と言えど参加者には、特別に男性も数人いて。ほぼ吊し上げ状態でしたけどね。

――「三月の陽炎」は卒業シーズンにもぴったりかなと思いました。

仲宗根泉 なるほど、そういう考えはなかったですけど。

名嘉俊 でも、歌詞も合ってるし良いんじゃない? ラジオのリスナーさんから「転勤するのでパワーをください」というコメントをいただいて、この曲を流したんですけど。出会いと別れのシーズンに、響くものがあると僕も思いました。

仲宗根泉 私としては、知り合いのカップルのことを書いた曲なんです。お互いに好きなのに、ダメになっていく様子を見ていて。好きなのに別れるなんて、こんなに苦しいことはないだろうなと思って。それがちょうど3月で、2人が近づいたり離れたりする、ゆらゆらとした状態を陽炎に例えて書いているんです。でも確かにそいいう聴き方もいいですね。よし、卒業関連のタイアップを取りにいこう(ニヤリ)!

名嘉俊 今回のアルバムで、いずとヒデだけじゃなく僕も入って一緒に歌う曲が欲しかったし。3人で歌うものは今までもあったけど、いずがこの曲を3人で歌おうと持って来たときは、ベストバランスだと思いました。沖縄らしい三線の音も入ってるし。

CHANCEは1文字変えるとCHANGEになる

名嘉俊と仲宗根泉

――そしてラストの「CHANCE」はダンスっぽいナンバー。ラップも入ってたり。

名嘉俊 最近はみんな、iPadで曲を作ることが主流になっていて。ヒデが、パッと押して出てくるギターカッティングのサンプルの一つにヒントを得て作っていった曲で。グルーヴが難しかったです。

――Suchmosとは違うけど、そういうおしゃれ感があるなって。

仲宗根泉 そうそう。ヒデは、ボーカルだけどドラムを叩いたりリズム系が好きで、ヒデらしさが出たなと思います。

――今は、みんなiPadで曲を作るんですね?

仲宗根泉 GarageBand(編注=Appleの音楽制作アプリ)があるんで。昔は俊みたいに海に行って作ったりしてたけど、今、GarageBandで作るときは、ホテルが多いかな。沖縄に帰ってるときは、ベイビーがいるので母親の気持ちになって、切ない片想いの曲とか書けなくないんです。

名嘉俊 東京で、元彼とばったり会ってとか?

仲宗根泉 ないです! ないない(笑)

名嘉俊 歌詞にも出てくるけど、CHANCEは1文字変えるとCHANGEになるんです。その1文字を変えるには、労力もすごく必要だけれど、このアルバムを聴いて何かを変えるきっかけにしてほしいし。僕たちとみんなをつなぐ曲になってほしいと思って。自分たちでも、どこかで変わっていけたら良いなと思ってます。

――CHANGEと言えば、特典ディスクに収録の「DEBUと言われて」ですね。仲宗根さんが、CHANGEしたという。

仲宗根泉 去年の6月からライザップに通ってるんですけど、2〜3カ月経ったとき炭水化物抜きがすごく辛かったんです。それで、自分を励ましながら、人を楽しませることが好きな自分らしく表現した曲が出来たらいいなと思って。インスタに上げたらライザップの方が気に入ってくれて、CMが決まってから、ちゃんと1曲に仕上げました。

名嘉俊 こんなに自分と向き合って、こんなに自分をおとしめて、すごいなと思いました。

仲宗根泉 あくまでも、自分自身に言ってるんで。自分にだから、こんなにキツく言えたんでしょうし、面白おかしく歌えたと思います。

名嘉俊 実体験にまさるものはありません!

仲宗根泉 ダイエットに限らず、夢を追いかけてる人、自分と向き合えずに悩んでる方にぜひ聴いてほしい曲です。

――ちなみに、HYの活動でチャンスだと思ったときは?

名嘉俊 いっぱいあります。必死で掴んだのもあったし、掴んだものの思ってたものとは違ってたり。一つのチャンスを逃したことで、別の大きなチャンスを掴めたこともあった。それは、何か具体的なことだけじゃなく、人との出会いもそうで。

仲宗根泉 自分たちの仕事は音楽なので、日々音楽と真摯に向き合うことが大事だし。私たちは人との出会いを大切にしているので、それときっちり向き合っていれば、おのずとチャンスにつながると思うんです。

 チャンスをずっと見張ってると言うよりも、自分の日々のおこないがチャンスになって帰ってくるというイメージですね。そう考えると、いつでも人に優しく出来ると思うし、何かあったときに支え合うことが出来ると思うし。そういうことをこのアルバムでは伝えているので、自分のことと重ねて聴いて、いろいろ考えてくれたらいいですね。

――では最後に、3月26日からスタートする『HY カメールツアー!! 2017』に向けて。

名嘉俊 ライブハウスツアーなので、めちゃめちゃ熱くて楽しいライブになると思います。みんなで終わった後に、すごくハッピーな気持ちになれたら良いなと思います。非日常的な空間を作っていきたいです。みんなで叫んだら、こんなにもパワーがあったとか。みんなが過ごしている日々、今日までやってきたことは、「全部当たり前じゃないんだよ」ということも伝えたいし。カメールは、沖縄の言葉で「掴む」という意味。みなさん一人一人が、何かを掴むきっかけになるツアーにしたいです。

仲宗根泉 チャンスを掴むことをライブで表現するのは難しいので、アルバムの世界観をハッピーに伝えられたらいいですね。どういう想いで作ったのか、それが伝わったらうれしいです。だから、裏テーマがハッピーです!

(取材・撮影=榑林史章)

作品情報
「CHANCE」
発売日=2017年3月1日(水)

CD収録曲
M-1: HAPPY (MBS/TBSドラマ『ホクサイと飯さえあれば』主題歌)
M-2: BLUE (cross fm official GREEN campaign song)
M-3: バタフライ (おきなわマラソン公式テーマソング)
M-4: ロックスター
M-5: あの日のまま
M-6: 光
M-7: ありがとう (ローソン沖縄 クリスマスケーキCMソング)
M-8: 君の声
M-9: 三月の陽炎
M-10: CHANCE

ライブ情報「HY カメールツアー!! 2017」

3/26(日)東京・新木場スタジオコースト
3/28(火)高知・X-pt.
4/4(火)石川・金沢エイトホール
4/6(木)新潟・LOTS
4/8(土)宮城・仙台RENSA
4/21(金)北海道・club COCOA
4/23(日)北海道・PENNY LANE 24
4/27(木)岡山・CRAZYMAMA KINGDOM
4/29(土)福岡・スカラエスパシオ
5/1(月)広島・CLUB QUATTRO
5/15(月)京都・京都FANJ
5/17(水)大阪・梅田CLUB QUATTRO
5/19(金)兵庫・神戸チキンジョージ
5/26(金)愛知・名古屋ダイアモンドホール
5/28(日)静岡・浜松窓枠
6/1(木)鹿児島・CAPARVO HALL
6/3(土)熊本・熊本B.9 V1  
6/5(月)宮崎・WEATHER KING
6/10(土)神奈川・横浜ベイホール
6/17(土)沖縄・ミュージックタウン音市場