『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』のハーツは、ベイマックスのコンセプトデザインを手掛けたデザイナーが担当した
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 ルパンの愛車が崖を駆け上がっているとき、R2-D2が人に駆け寄っていくとき、“機械”に「たまらない愛らしさとキャラクター性」を感じ、心の中で声援を送った人も多いのではないだろうか。この「機械にキャラクター性を生み出す」ことについて、映画『ベイマックス』に登場するベイマックスのコンセプトデザインを手掛け、神山健治監督の最新作『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』のハーツデザイン原案も務めたデザイナーのコヤマシゲトが語った。

 今回コヤマが『ひるね姫』でデザイン原案を担当したのは、ヒロイン・ココネを守るロボット「ハーツ」と夢の中で登場する兵器「エンジンヘッド」。ポスタービジュアルにも出ているハーツには、すでに現場であがっていたコンセプトデザインに対し、神山監督から「キャラクター性があと一歩足りない」とコヤマに依頼したという経緯があった。そのためコヤマはキャラクター性や愛らしさをプラスする要素として「丸みを持たせる」ことにした。

 「個人的には、主人公の脇にいるやつは丸くないといけないと思っていて(笑)。『ガンダム』のハロや、『スターウォーズ』のR2-D2、『不思議の国のアリス』のハンプティダンプティ……といった感じで、主人公の横にいるキャラクターは、丸っこくて少し滑稽さがあるっていうことが大事なんです。『水戸黄門』でも黄門さまの横にいる旅のおともは『うっかり八兵衛』なんですよね。かっこいいシーンになると助さん格さんに交代しますけど(笑)」。

 また丸みを帯びたデザインといえば、彼が過去に手掛けたベイマックスが思い起こされるが、今回のハーツには、ベイマックスとの決定的な違いが存在するとのこと。「どちらも同じ人間が考えたんで、似ていると言われてしまったらそれはつらいところなんですけど(笑)、この二つのロボットは、シルエットの根本的な構造が違うんです。ベイマックスは末端肥大のシルエットで手足の先端が太く大きくしたので、ぬいぐるみのような愛らしさが強調されています。対するハーツは、逆に先端が細くなっていくようになっていて、胴が大きくて、手足が細い。これはマッチョに見える効果があり、スーパーマンのようなたくましさを強調しているんです。丸っこいロボットという意味では同じように見えても、キャラクターとしての立ち位置が全然違うんです」。

 さらにハーツの変形後のデザインには、盾(左腕タイヤ部分)や剣(背中からのぞくハンドル)をモチーフにした箇所がある。まるでココネを守る衛兵のようないでたちでありながらも、どこかちょっぴり抜けを感じさせる“キャラクター”となっている。今回「神山監督だから」と二つ返事で引き受けたコヤマの力作は、新たな愛らしいキャラクター像を確立させている。

 コヤマはハーツを「キャラクター」として描いたのに対し、エンジンヘッドは「城や舞台装置のような機構」として描いたという。その違いを大きくつけたのは「頭の有無」。「突起がつくと人間はそれを“頭”と認識し、そこに“アイデンティティー”を見いだすんです。だから『エンジンヘッド』はキャラクター性を出さないほうが良いと思ったので、ヘッドという言葉はあるけれども“頭”をつけない、という選択肢を選んだんです」。実際エンジンヘッドには、渡り廊下や階段など「建物」になりえる意匠がちりばめられている。(編集部・井本早紀)

映画『ひるね姫 〜知らないワタシの物語〜』は3月18日より全国公開