東京ヴェルディは昔日の面影を取り戻せるのか?

 昨シーズンのヴェルディはJ2で22チーム中18位だった。J3への降格回避に四苦八苦。今シーズンも、元日本代表の永田充、橋本英郎を獲得したものの、戦力的に突出しているわけではない。

 しかし、希望も生まれた。スペイン人指揮官、ミゲル・アンヘル・ロティーナ(59歳)が新たにチームを率いることになったのである。


冷静に試合を見つめる東京ヴェルディのロティーナ監督 ロティーナは欧州でも有数の指揮官と言えるだろう。日本代表監督を務めるヴァイッド・ハリルホジッチと比較しても、指導者経歴に遜色はない。見方によっては、ロティーナの方が上である。

 92年に監督に転身以来、ヌマンシア、オサスナを1部昇格へ導いている。04年にはセルタをリーガ4位に押し上げ、05年にはチャンピオンズリーグでベスト16に進出。06年にはエスパニョールでスペイン国王杯優勝を遂げた。とくに守備戦術に定評があり、その後もレアル・ソシエダ、デポルティーボ・ラコルーニャ、ビジャレアルという有力クラブを率いている。

 スペインの名将は、ヴェルディを再び栄光に導けるのか?

 3月11日、味の素スタジアム。ヴェルディは高木善朗の2得点1アシストなどで、水戸ホーリーホックを4-0で下している。開幕戦は徳島ヴォルティスに1-0で敗れたが、第2節の大分トリニータ戦は1-0で勝利。連勝により、暫定ながら2位に浮上した。

「まだまだ課題ばかり。攻撃も、守備も、ポゼッションも」

 4-0と勝利した後も、歴戦の指揮官に浮ついたところはまるでなかった。

 ロティーナはいかなるチーム構想を描いているのか。

「ポゼッションで守る」。それは戦略の一つの軸になっているだろう。システムは3-4-3を採用。この点は、スペイン人監督のほうがJ2に適応したと言えるかもしれない。この日の対戦相手だった水戸も含め、J2は3バックが主流になっている。欧州監督らしいのは、単純な人海戦術や走力だけのプレーを志向していない点だろうか。幅を広く使い、奥行きを出す。精度は別にして、その回路はすでに構築されている。

 例えば、左サイドには左利きの選手をセットで用い、最大限にピッチの幅を使う。彼らは左足で蹴るだけに、ボールの動く渦が一方向にならない。また、水戸戦ではセンターバックの永田が(相手が高いラインをとったときに)右サイドの裏に蹴り込むロングパスが顕著に見られた。右ワイドの選手を走らせ、深みをつけ、相手に打撃を与える意図だろう。事実、先制のPKはこの形から生まれている。

 ロティーナは昨シーズン、カタールの2部クラブを1部へと昇格させている。その国の特色やレベルに順応しつつ、身の丈にあった戦い方を見つけられる。これは経験のなせる技で、大きなメリットと言えるだろう。

 ただし、一朝一夕にチームは進化しない。

 とりわけ戦術面は、大きな課題になるだろう。戦術はシステム論にすり替えられてしまいがちだが、勝負の柔軟性や戦いの呼吸に言い換えられる。例えば、ロティーナは水戸戦の後半立ち上がりを「FRIO」と苦言を呈している。体温が低い=テンションが低い。フラフラとゲームに入り、無策にもラインをずるずると下げ、相手に押し込まれた。ポストを直撃するなど、際どいシュートを数度、浴びた。

「失点してもおかしくなかった。簡単にボールを失いすぎていた。相手が退場者を出して10人になって、再び我々がボールを握り、チャンスも増えたが」(ロティーナ)

 大差での勝利も、相手の自滅に助けられた。自らペースを失う。それは戦術的レベルの低さを意味している。スペインの厳しい戦いを経験してきた指揮官にとって、それは頭を抱えるような事態だろう。

 もっとも、ロティーナはポーカーフェイスを気取る。腰を据えて挑む腹づもりで、決して焦ってはいない。

──現実的に、1部昇格の可能性は?

 ロティーナは肩を小さくすぼませて言った。

「他のチームをスカウティングしたが、正直に言って、より戦力的に恵まれているチームはあるよ」

 簡単な挑戦ではないことは歴然としている。ただ、彼は顔を寄せ、少し楽しそうに、こうも続けた。

「ポテンシャルの高い若い選手はいる。例えば(井上)潮音だ。よく流れが見えているし、タイミングを捉えてボールを弾ける。プレーセンスを感じさせるよ。あれでまだ20歳になっていないんだから。日々、選手が成長することで、チームの力になるはずだ」

 極東の地で、スペインの名将の挑戦が幕を開けた。

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