鳥栖ではプレースキックで存在感を発揮。インサイドハーフの定位置を掴みつつある。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ・3節]鳥栖1-0広島/3月11日(土)/ベアスタ
 
 鳥栖に今季初勝利をもたらしたのは、新加入の原川力だった。44分、鎌田が敵陣の中央で倒されFKを獲得。キッカーの原川は見事に壁の上を抜き、鮮やかなシュートを叩き込んだ。鳥栖はこの1点のリードを死守し、広島から勝点3を獲得する。
 
「助走をとってる時に(直接狙おうと決めました)。タニ(谷口)さんが『ファーに入る』という話をしていたので、直前までファーに蹴ろうとしていたんですけど、追い風だったということもあり、自分のキックを信じてゴールに蹴りました。それが結果につながって良かった。イメージどおりです」
 
 そう決勝点の場面を振り返った原川は、柏との開幕戦でも似たような位置からFKを沈めている。しかし柏戦でのイメージは「まったくなかった」という。「レイソル戦より多少遠かったので違う蹴り方。インパクトがより必要かなというイメージで」蹴りこみ、見事にチームに今季初勝利をもたらした。
 
 この日のヒーローとなった原川にとって、このゴールが自身J1通算2得点目。鳥栖ではここまでハイパフォーマンスを見せ、チームの新たな武器となっている。
 
「試合に出るというルーティーンを取り戻せたことが一番大きい。“1週間に1試合して、そこで課題として出たものを練習して、また試合をして……″というルーティーンがサッカー選手として一番大事。またそれを継続してやっていければ、もっとうまくなれると思う」
 
 鳥栖でのプレーに少なからず充実感を得ている原川だが、川崎に所属していた昨季は、リーグ戦でわずか4試合の出場にとどまり、明らかに燻っている印象だった。期限付きとはいえ、相当な覚悟で移籍を決めたはずだ。
 
 レオーネ山口(現・レノファ山口アカデミー)でサッカーを始めると、U-16から常に年代別代表に選ばれ続けてきた。高校時代から所属していた京都U-18では2種登録され、プロ入り後は京都と愛媛で10番を背負い活躍。昨年はリオ五輪本大会のメンバーにも選出された。そんなエリートが移籍をしてまで出番を求めた理由は――。
 まさにリオ五輪本大会に選ばれたことが、原川の向上心を煽るきっかけとなった。
 
 本大会前のブラジルとの練習試合では0-2の完敗。この試合で先発出場した原川は、ネイマールやマルキーニョスなどワールドクラスのタレントに対してスコア以上の差を感じた。
 
「なにもさせてもらえなかった。ネイマールに関しては足すら出せなかった。そういう駆け引きのところでも差を感じられたので、対戦できて良かったし、ピッチ上でしかわからないものが得られた。ブラジルとやったことはまだ鮮明に覚えていますし、ネイマールであったりマルキーニョスとのギャップをまだまだ感じます。その差を鮮明に覚えている限り“もっと、もっと”という欲は出てくる。それを忘れないようにやり続けていく」
 
「ネイマールとまた対戦できたら良いね」という記者からの投げかけに「そうですね。まだ考えていないですけど」と飄々と答えるが、その視線の行きつく先は、“打倒ネイマール″という究極の目標だ。
 
 いつかその差を埋めるために――。大いなる野望を秘める俊英MFの本格ブレイクは近い。
 
取材・文:多田哲平(サッカーダイジェストWEB編集部)