「胃痛は本来、胃液が多量に出てしまったときや、胃の筋肉が痙攣することによって発生するものです。一般的には、飲み過ぎや食べ過ぎ後の不快感、緊張などでストレスが溜まると痛みを感じることがある。特に空腹時や夜間に起こりやすいが、もともと胃が弱く、消化力が弱い人に起きやすい疾患といえます」
 こう説明するのは、東京都多摩総合医療センター総合内科外来担当医だ。
 「ストレス社会の今、胃のダメージがまったくないという人はいないでしょう。ですから、患者さんのほとんどはストレスによる自律神経の乱れが原因と言っても構わないでしょうね。胃酸が過剰に分泌されるだけでなく、胃酸から胃の粘膜を守る胃粘液量が少なくなるので、粘膜の上皮が傷つきやすくなって、炎症、つまり胃炎が起きてしまうのです」

 しかし、初期症状はそれほど強くない。胃のムカムカ感、軽い胃痛といった程度で、しばらくすると症状は治まってしまう。しかし、ストレスの原因が解消されない限り、何度でも同じようなサイクルを繰り返すという。
 加えて、前出の杉浦氏はこう言う。
 「胃炎は何度も起こすと、知覚神経の感受性が鈍くなるので痛みを感知しにくくなり、体の不調に慣れが生じてしまいます。そうしたことで、本人が症状をあまり重視しなくなり、胃・十二指腸潰瘍を悪化させてしまう。潰瘍を引き起こし、吐血して病院に搬送されるまで放置していたため、胃や十二指腸に穴が開いてしまう人も少なくありません」

 胃炎について、実は驚きのデータがある。「胃炎の人は認知症になる確率が2倍になる」というものだ。ある私大の医学部がアルツハイマー型認知症の人を調査したところ、「胃炎有り」の人が88%に達し、認知症ではない人の「胃炎有り」は46%と、その差に大きな開きがあることが判明した。

 『医者が患者に教えない病気の真実』(幻冬舎)の著者で江田クリニック院長の江田証氏は、自著の中でこう記している。
 《胃炎があると、炎症を起こしている胃の粘膜に白血球が集まってきて、サイトカインと呼ばれる生理活性物質を出します。サイトカインは細菌やウイルスなどを攻撃する働きがありますが、自分の体にもダメージを与えてしまいます。慢性的な胃炎があるとサイトカインが血液に乗って全身に広がり、血管を傷つけてしまう恐れがあるからです》

 そうなると、動脈硬化や脳梗塞を起こしやすくなり、人によっては、貧血やめまいなどが日常化して起こるというのだ。
 単なる胃の痛みも、放っておくと怖いことを認識しよう。