東京Vに新風を吹き込むロティーナ監督。フットボールの酸いも甘いも知る指揮官は「J2」をどう見ているのか。写真:佐藤明(サッカーダイジェスト写真部)

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[J2リーグ3節]東京V 4-0 水戸/3月11日/味スタ
 
 俄然勢いづく快勝劇だ。
 
 J2・3節の水戸ホーリーホック戦、東京ヴェルディは4-0の大勝でアウェーチームを圧倒した。中盤での激しい潰し合いとロングボールの応酬が続くなか、34分にMF高木善朗が、弟・大輔の得たPKを冷静に決めて先制。水戸が10人となった後半にゴールラッシュを決め込み、開幕2試合で湿りがちだったアタッカー陣が本領を発揮した。
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「まだまだ課題が少なくない。後半は立ち上がりから相手の勢いに押され、危ういピンチもあった。少し冷えた状態で入ってしまったからだ。水戸が10人になってからはいいプレーができたが、もっと攻撃面やポゼッションの改善を図らなければならない。これからも毎日毎日、チームとして積み重ねていくだけだよ」
 
 そう謙虚に語るのは、スペイン人のミゲル・アンヘル・ロティーナ監督だ。
 
 リーガ・エスパニョーラでは主に中堅・下位のクラブを率い、規律を重んじたソリッドなサッカーをチームに浸透させ、一定の評価を得た。スペイン、キプロス、カタールでの指導キャリアを経て、今冬に初めて日本の地を踏んだ。東京Vは、監督として率いる13番目のチームである。
 
 その歩みは波乱万丈だ。象徴的だったのが、セルタで指揮を執った2003-04シーズン。チャンピオンズ・リーグでベスト16に導く快挙を成し遂げながら、国内リーグでは不振に喘ぎ、シーズン終了を待たずに更迭された(セルタは降格)。チームを率いた期間は大半が1〜2シーズンで、デポルティボでの4年間(07〜11年)がこれまでのキャリアにおける最長政権だ。
 
 だからだろう。プロフットボール界の酸いも甘いも知る59歳の智将は、どんな質問にも理路整然と答えるが、つねに慎重に言葉を選ぶ。試合結果に一喜一憂することもない。
 
 はたして、厳格な新監督と既存の主力メンバーはシンクロできるのか。始動直後はやや懐疑的な見方があったが、およそ2か月の時を経て、信頼関係は分厚くなっている。
 
 主将のCB井林章が「まだ監督の要望に応え切れてはいませんが、確実に進歩している。その手応えはあります」と言えば、新加入の元日本代表MF橋本英郎も「守備のところは結果も出てるし良い方向に向いてる」と話す。なにより、上昇志向が強い若手主体のチームはエネルギーに満ち溢れ、雰囲気がすこぶる良い。組織の熟成は予想以上のスピードで進んでおり、大きな伸びしろを持つ、じつに先行きが楽しみなチームである。
 
 そんな叩き上げのロティーナ監督に、3試合を戦ったJ2リーグのレベルと特徴について、率直にどう思うのかを訊いてみた。多少のリップサービスはあるにせよ、驚きを持って認識を深めているという。
 
「セグンダ(2部)とは思えない、レベルの高さがある。強豪と位置付けられるチームが多く、実力が拮抗しているのがなによりの証だ。私が見たところ、6、7チームが上位を争う展開となるだろう。そこにはもちろん我々も含まれる。この競争力の高さがJ2の面白さであり、私がもっとも驚かされている部分だ。日本に来る前からある程度の分析はしていたが、ここまでレベルの高いチームが多いとは、正直思っていなかった」
 
 かつて「攻めたら負け」との名言が生まれたJ2だが、いまでは個性的な指揮官が多く、オリジナリティーを追求するチームもぐっと増えた印象を受ける。戦術的な側面で見た場合、スペイン人指揮官の目にはどう映っているのだろうか。
 
「ディフェンシブ? そんな印象はまるで受けていない。むしろ逆だ。今日の水戸、先週の大分にしても、ともに3-4-3システムできわめてアグレッシブなスタイルを貫いていたし、よく訓練されたチームだと感じた。しかも大分は昇格してきたばかりのチームだよ。まったく、タフな相手ばかりだ」
 
 監督の右腕で、対戦相手のスカウティングを担当しているスペイン人コーチ、イバン・パランコ・サンチアゴ氏にも話を聞いた。バルセロナの育成部門で指導してきた37歳のイケメンは、「上位は本当に実力が拮抗している」と指揮官に同調しながら、「相手チームの分析は骨が折れる。水戸は予想通りのグッドチームだった。最終的に点差は開いたけど、退場者が出なければどう転んでいたか分からない」と話し、こう続けた。
 
「一概にヨーロッパのリーグと比べることはできない。でも、少なくともJリーグは選手のテクニックと戦術面については、ほとんど遜色がないと感じている。想像していた以上にね。あとは、ファンの熱狂だ。本当に素晴らしい。J2は日本のいろんな都市で試合が開催される。だから個人的にはアウェー遠征のところも楽しみにしているんだ。移動は大変そうだけどね(笑)」
 
 改革を押し進めながら、この過酷なJ2の長丁場を戦い抜けるのか。13シーズンぶりのJ1昇格を掴めるのか。ロティーナ・ヴェルディには、大きな期待を寄せても良さそうだ。
 
取材・文:川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)