中国で「パクられずに」スタートアップ企業が成功する方法

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中国では発売前のガジェットがコピーされ、市場に出回ることが珍しくない。フェイスブックがスナップチャットを模倣した機能を傘下のインスタグラムに投入したことは有名だが、中国人たちのやり方はもっと大胆だ。

アップルを筆頭に大手テック企業の多くが中国の深センに製造拠点を置いているが、西側のスタートアップが心血を注ぎ作り上げ企画した製品が、発売を待たずにタオバオ(淘宝)のストアに並んでしまうことはよくある。

製造を依頼した中国の工場が部品を横流したり、製造工程で情報が漏れたり、工場が全く同じ製品に別の名前をつけて販売するような事例もある。そんなタフな環境の中で、スタートアップ企業はいかに自らの権利を守り、製品を送り出すべきなのか。深センのハードウェアアクセラレーター「HAX」で長年にわたり、欧米の起業家を支援してきた筆者が解説する。

模造品の多くは、発売前の設計図や仕様書をもとに製造されている。彼らは法の真空状態を利用して模造品を製造する。ここで役立つのが中国における正しい法的知識を持っておくことだ。

中国ではNDAが役に立たない

まず、最初に言えるのは欧米で言うNDA(機密保持契約)が中国では十分機能しないという事だ。中国でのビジネスに詳しい国際弁護士事務所Harris Bricken代表のDan Harrisは「NDAではなくNNN契約を結ぶべきだ」と提唱する。

NNN契約とはノンディスクロージャー(従来のNDA)のNに加え、法的迂回禁止(non-circumvention)のN、競合行為禁止(non-competition)のNの3つのNを盛り込んだ契約を意味する。この契約を結ぶことで工場が無断で業務を外部委託したり、部品の調達元を無断で変更したり、出来上がった製品の権利を主張しはじめるような事態を防げる。

次に挙げられるのが特許の問題だ。特許は諸刃の剣だ。権利を守ることが可能だが、同時に模造品の発生を促すことも起こり得る。申請にあたっては機密事項が漏れないように十分注意し、戦略を十分に練る必要がある。また、中国では国際的な特許よりも国内の特許が優先される場合が多いことに注意したい。特許をとるなら中国の特許をまず意識するべきだ。

最大の防御は開発の「スピード」

3点目にあげられるのが、製品の複雑製を高め、模造品製造のハードルを可能な限り高くすることだ。ここで有効なのが、光学や医療等の専門的サイエンス知識が必要なプロダクトを作ること。また、コンピュータビジョンやAI等の先進的ソフトウェア技術が要求される製品を企画することも有効と言える。

深セン発のスタートアップで世界的知名度を獲得しつつある知育玩具「メイクブロック」CEOのJasen Wangは「多くの企業が我々の製品を模倣しようとしたが、ソフトウェア構築の能力の低さが原因で、同レベルのユーザー体験は実現できていない」と述べている。他社に勝る野心的プロダクトを開発することで投資家の関心も惹けるし、新たな才能を呼び寄せる結果にもつながる。

さらに、模造品に対する最大の防御は、全速力でプロダクトをリリースすることだ。スピードが全てなのだ。そのために世界で深センほど適した場所はない。スティーブ・ジョブズは最初のiPhoneのリリースにあたり、当初はプラスチック製だったスクリーンをガラス製に変更し、わずか数週間でそれを成し遂げた。それを可能にしたのが深センのサプライチェーンだった。

シリコンバレーから深センを訪れるスタートアップ企業らは異口同音に「深センでの1週間は、母国での1ヶ月に相当する」と述べる。製品を迅速にリリースすることはチームの士気を高めるし、投資家の注目を集めることにもつながる。