北朝鮮国内から、ちょっとおかしな話が伝わってきた。主要な外貨稼ぎ機関のひとつである大聖総局傘下の貿易会社が10代の少女たちの「やわらかい皮膚」に目を付け、あちこちで盛んに雇い入れているというのだ。一体どういうことか。平安南道(ピョンアンナムド)に住むデイリーNK内部情報筋が、次のように話す。

「少女たちは、平壌や平城(ピョンソン)、清津(チョンジン)、咸興(ハムン)、新義州(シニジュ)など主要都市にある宝石加工所で宝石の研磨作業をしている。宝石輸出の担当者たちの間には、最終的に人が素手で、それもやわらかい手で磨いてこそ宝石が美しくなるとの考え方があるようだ。少女たちは朝から晩まで黙々と働いている。手のマメがつぶれて休みたいなどと言うとクビになりかねないので、痛みに顔を歪めながら働いている子らも少なくない」

売春で破滅も

果たして、「やわらかい手で磨いたら宝石が美しくなる」ということが本当にあるのだろうか。筆者はこの分野にはまったく無知だが、どうも根拠のない思い込みの類であるような気がしてならない。計測器や補助器具は使わずに素手で原石を研磨機に押し当て、指先の感覚だけで多面体の宝石を削り出す名人がいると聞いたことはあるが、それとはまったく違う話だろう。

いずれにしても、北朝鮮において子供がきつい労働に従事させられていることを示す、新たな事例であるのは確かなようだ。

北朝鮮の労働法では、16歳未満の労働は禁じられている。それにもかかわらずこうした現象が見られるのは、国家主導の計画経済が破たんし、なし崩し的に資本主義化が進む中、都市と地方間の格差、所得格差の拡大が進行している。貧困層の、とくに女性たちの窮状は甚だしく、少なくない人々が売春に走り身を亡ぼす。

(参考記事:コンドーム着用はゼロ…「売春」と「薬物」で破滅する北朝鮮の女性たち

工場に職を得た少女たちも、いくら頑張っても報われない例が多いようだ。以前にも紹介したエピソードだが、中国に輸出するツケマツゲ工場に雇われた少女たちの境遇について、平安北道(ピョンアンブクト)の情報筋は次のように語っていた。

「工場側の労務管理は非常に巧みです。たとえば、工員たちに『ツケマツゲひとつ当たり、0.05米ドル(5セント)を支給する』と伝える。それが高いのか安いのかわからない少女らは、とにかく数をこなそうと必死で働くのです。また、旧正月などの祭日に際しては、普段は後日まとめ払いの賃金を日払いに切り替える。収入は変わらないのに、少しでも早くおカネを家に持ち帰りたい彼女たちは、文句も言えず労働に精を出すのです。地域によっては、9歳の子どもまでが工場で働いていると聞きます」

こんな生活のために学業はおろそかにならざるをえず、競争社会化する世の中を生き抜くのに必要な知識や教養も身につかない。少女たちは、徹底的な搾取に遭っているのだ。

アメリカ人監督ミカ・X・ペレドの『女工哀歌』は中国のアパレル工場の実態を追ったドキュメンタリー映画だが、それより遥かに悲しい実態であると筆者には思える。