富士山

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 移住したい地域はどこか。ふるさとでの暮らしを希望する都市の住民と地方自治体とのマッチングを行っている認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(本社・東京都千代田区 見城美枝子理事長)が先ごろ発表した「移住希望地域ランキング2016」で山梨県が2年ぶりに1位に返り咲いた。

 同センターが運営する「ふるさと暮らし情報センター」への来場者を対象に行ったアンケートの結果で有効回答数は6777件。ベスト10は次の通りである。( )は昨年の順位(―はランキング外)。

1位 山梨県(2)
2位 長野県(1)
3位 静岡県(4)
4位 広島県(6)
5位 福岡県(―)
6位 岡山県(5)
7位 大分県(9)
8位 新潟県(15)
9位 長崎県(12)
10位 宮崎県(10)

 山梨県はアンケート調査が始まった2009年以降、5位、8位、12位、15位で、13年に2位に浮上。14年に初のトップに立ったが、昨年は長野県に抜かれて2位だった。山梨県はここ4年間、上位につけている。

 一方、長野県は11年から3年連続で1位、15年も1位とトップの常連。ここ4年間は山梨、長野の両県で首位を分け合っている。

 目立つのは福岡県の躍進だ。同調査開始以来、初めてランキング(20位以内)に登場し、5位に躍り出た。昨年7月から、ふるさと暮らし情報センターに相談員を配置した効果が表れたとみられる。全般的にみると、上位には西日本、九州の自治体が多い。トップ10に6県、トップ20には10県が入っている。西高東低の傾向は昨年も同様だ。

 意外なのは、観光地ランキングや住みたい地域ランキングなどで上位の北海道や沖縄県が入っていないこと。北海道は過去に11位、20位にランクインしたことがあるだけ。沖縄県にいたっては、一度も20位以内に入ったことがない。住みたい願望はあっても、具体的に移住を考えると、北海道や沖縄は二の足を踏むのだろうか。

●山梨支持は中高年が中心

 1位になった山梨県の魅力は、なんだろうか。

 今回の調査で山梨への移住希望者の年齢別内訳をみると、30代以下は34.0%で全国平均(45.9%)を大きく下回っている。しかし、60代以上は25.2%で全国平均(15.7%)を10ポイント近く上回っている。中高年の人気が高いということだ。

 山梨県の総面積は4465平方キロメートルで全国32位。人口は83万人(県庁所在地の甲府市は19万1664人)。富士山、八ヶ岳、南アルプスといった名山がそびえ、河口湖や山中湖など美しい湖もある。自然豊かな観光資源に恵まれ、外国人観光客も急増中だ。

 あまり知られていないが、年間の日照時間は2462時間で全国1位。ミネラルウォーターの生産量もトップで、山梨県(約1189キロリットル)だけで全国の4割を占める(14年)。

 日照時間の長さという恩恵を受け、果物王国としても知られている。ぶどう、桃、すももの収穫量が全国1位。ワインづくりも盛んで、大手から地場まで各種のワイナリーが点在する。ジュエリー県でもあり、貴金属製装身具出荷額は274億円で全国シェアの約3割を占め、これもトップだ(13年)。

 交通インフラはJR中央本線、身延線、小海線、私鉄の富士急行線が走り、リニア中央新幹線の工事が始まっている。現在、新宿から甲府までは90分で結ばれている。高速道路は中央自動車道に加え、中部横断自動車道の整備が進む。

 文化面も充実している。総務省の「統計でみる都道府県のすがた2017」によると、山梨県は人口100万人あたりの公民館数、図書館数などで1位となっている。

 東京から近いのに自然環境が豊かで文化拠点も充実している。歴史好きには武田信玄の国というイメージがある。

●山梨の不便さ

 どの地域にも一方で不便さはある。山梨暮らしの不便さ、不満足な点はどんなところか。移住関連サイトには移住者たちのこんな声が載っていた。

「盆地のため、夏はひたすら暑く、冬は寒い」(甲府市)
「最寄りの店に買い物に行くにもクルマが必要。駅周辺に店が少ないため、ショッピングは隣の市に行く」(大月市)
「バス、電車など公共機関が充実していないので、クルマがないと生活していくのが厳しい。ファッション系のお店はあることはあるが、充実はしていない」(南アルプス市)

 厳しい気象条件、公共交通の整備の遅れやショッピング環境への不満などがみられる。前出の総務省統計でみる限り、経済基盤、家計、医療関連などは全国平均レベルか、それを上回るものが多く、極端な不便さは感じられない。

 趣味の山歩きや農作業で人気の移住エリア北杜市に足繁く通った50代の男性は、こんな感想をもらす。

「夏は最高ですよ。八ヶ岳の麓の高原地帯なので涼しいし、空気がきれい。星はまさに降り注ぐという感じです。八ヶ岳、南アルプス(甲斐駒ケ岳など)、富士山など眺望もすばらしい。温泉も充実しています。ショッピングはインターチェンジ近くにあるスーパーの品ぞろえが良く、野菜だけでなく鮮魚類も豊富です。馬肉文化が残る山梨ということで、馬刺しもあります。医療機関も日常的には問題ありません。問題は冬です。雪はそう多くないのですが、とにかく寒いんです。朝や夜は路面が凍結するので、クルマの運転にも気を使います。それを除けば、東京に出るのも簡単だし、定年後の移住先としていいかなあと考えています」

 山梨県では、東京・有楽町の交通会館内にある「やまなし暮らし支援センター」で市町村の移住コンシェルジュが移住の相談に乗っている。3月のスケジュールをみると9、10、11日が甲府市、16、17、18日が笛吹市、25、26日が身延町だ。

「山梨県はもともと移住先として人気はありました。それに加え、2013年にやまなし暮らし支援センターを開設して、情報発信を強化してから人気がさらに高まりました」(ふるさと回帰支援センター事務局の嵩和雄氏)

 移住者の気持ちをつかむためには、自治体の魅力をいかにうまく情報発信していくかがポイントになる。
(文=編集部)