地震発生時刻にあわせて黙祷を行う映画館のスタッフたち

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 6年前の東日本大震災で甚大な被害を受けた福島県いわき市にあるシネマコンプレックス「ポレポレいわき」では今日もさまざまな映画が上映され、家族連れやカップル、小中学生の友達グループらが足を運んだ。また、地震発生時刻の前にはスタッフが館内の人たちに声をかけ、14時46分から1分間の黙祷が行われた。

 JRいわき駅の前に建つ「ポレポレいわき」は、いわき市の映画の灯を途絶えさせたくないという願いから、撤退を決めた映画館の場所を引き継ぐかたちで2009年に誕生した。名画座のようなレトロな雰囲気を醸し出す外観でありながら、地下1階地上3階、計7スクリーン(約700席)のシネコンとして、地域の人々に映画を届けてきた。

 同館の取締役を務める福田まり子さんは、水道は止まり、劇場前の道路が陥没し、入口のガラスは粉々に破壊され、映写機は動かなくなったと映画館を襲った地震の被害を述懐する。それでも地元の商工会議所などと協力して震災から18日後の3月29日には営業再開にこぎつけたという。震災当時いわき駅の前には同地を定点撮影するテレビカメラがあり、映画館をいち早くオープンさせることで人々が戻ってきた様子を全国に伝えたいという思いからだった。

 これまで数多くのイベントを企画し、地元の人たちが集まる場所を提供するなど地域に寄り添ってきた「ポレポレいわき」。本日3月11日の上映スケジュールは、子ども向けの映画をのぞいて震災時刻にあわせて調整した。そして黙祷の呼びかけとともに映画館を訪れていた観客、スタッフたちは静かに目を閉じ、犠牲者の冥福を祈っていた。

 原発問題など震災の影響は今なお続いており、土曜日の午後を映画館で楽しく過ごす人たちも本人にしかわからない心の傷を抱えているのだろう。ただ、復興への思いをつないできた映画館には、どの映画を観るか議論する学生グループ、アニメ映画の感想を語る幼い兄弟、ポップコーンやチュロスを子どもに買ってあげるお父さん、「今度はこれを観る」と言いながら映画館をあとにするカップルなど、震災を経験した人々の多くの笑顔があふれていた。(取材・文:海江田宗)