謎の男に扮して韓国を熱狂させた國村 隼が映画『哭声/コクソン』を語る

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一度見たら忘れられない顔と存在感で、日本映画界になくてはならない名優、國村 隼。そんな彼が初めて韓国映画に出演したのが『哭声/コクソン』だ。その演技は高い評価受けて、韓国の映画賞、青龍映画賞で助演男優賞と人気スター賞の2部門を受賞するという快挙を成し遂げた。早速、映画について話を伺おうと思いきや、國村は本誌のザ・ローリング・ストーンの写真を楽しそうに眺めている。というわけで、まずはそのあたりの話から。

―ローリング・ストーンズ、お好きなんですか。

ええ、大好きですよ。3年くらい前かな、日本に来た時にも見に行ったんです。やっぱりストーンズはライヴだな! って思いましたね。

―10代の頃から聴かれてたんですか。

一応知ってました。当時はローリング・ストーンズを聴いている人は、音楽に詳しい上級者みたいなイメージを勝手に抱いてて(笑)。ビートルズと双璧をなしながらも、ゥ蹈奪ンロールといえばローリング・ストーンズイ辰道廚辰討泙靴燭諭


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―なるほど。その辺の音楽話はぜひ後ほど伺いしたいと思うのですが、まずは『哭声/コクソン』について。この映画のどんなところに惹かれて出演を決められたのですか。

世界観ですね。脚本を読んだ時、イ海譴呂垢瓦だこΔ笋放イ辰道廚辰燭鵑任后でも、イ海留撚茲呂覆砲テーマで、なにを伝えたいの?イ辰栃垢れた時、なかなか言葉が見つからない。ある小さなコミュニティに異物がひとついることで、何かまずいことがそのコミュニティに起こったら、そいつのせいにされるっていう、人間社会のひとつの典型のような物語が始まるんですけど、そこからどんどん違う世界へ入っていくんです。

―國村さんが演じるテ罎涼万イその異物なわけですが、この男も映画の中でどんどん描かれ方が変わっていきますね。

そうなんです。最初、イ海い弔事件の原因に違いないイ隼廚辰討燭客さんは、ある時点でイ△譟 こいつが原因じゃないかもイ辰道廚せ呂瓩襦そんな風に何度も戸惑いながら物語に引き込まれていくのが、この映画のエンターテイメントなんです。映画のなかで、僕が演じた男が神父に向かってイ前はどう思うイ辰匿劼佑襯掘璽鵑ありますが、あれは観客一人一人に向かって問いかけているようなものなんです。

―國村さんは、この男をどのような存在として捉えていましたか。

人間が生まれる以前から存在しているもの。神か悪魔かわからないものですね。まあ。神と悪魔は表裏一体だと思いますけど、観る者によっては神にも悪魔にも見える。少なくても人じゃない何かです。

―面白いキャラクターですが、演じるのは難しそうですね。ナ・ホンジン監督とは撮影前に役については話をされたのですか。

ある程度は話しました。例えば監督がズ埜紊離掘璽鵑録斥佑悪魔か、どっちのつもりでやる?イ辰栃垢ので、グ魔のほうが楽しそうやから、悪魔かなあ?イ箸って(笑)。


写真左がナ・ホンジン監督 (C)2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

―映画のなかで、男は日本人だろうという設定でしたが、コミュニティを脅かす存在が日本人だろうという設定に抵抗はありませんでした?

最初はありました。最初、役名がテ本人イ砲覆辰討い燭鵑任后お話のなかで村人たちがイ△瞭本人イ噺世Δ里和臂翩廚世隼廚Δ韻鼻¬鯡召鴾テ本人イ箸靴討靴泙Δ肇ャラクターともそぐわないし、別の意味合いが出て来たりするのがすごくイヤだなって。だから、撮影に入る前にヌ鯡召鯑本人じゃなくしてくれイ辰突蠅鵑世鵑任后あまり政治的なことにお客さんの意識が行かないように。それでコ庵録諭米本語で異邦人の意)イ砲覆辰董1撚茲魎僂討發蕕┐弌テ本人=悪役イ澆燭い淵好謄譽タイプな話じゃないとわかってもらえると思いますけど、そういう誤解をされることは極力排除しようと思いました。

―映画では、テ本人=悪役イ箸いκ亳が村人を混乱に陥れたわけで、そういう偏見を疑わなければいけないという物語でもありますよね。

まさにそうなんです。一番恐ろしいのは悪魔ではなく、人間の妄想というか、不安に根ざしたいろんな疑心暗鬼じゃないかということが、この映画から伝わってくるんじゃないかと思います。

―それにしても強烈なキャラクターですよね。冒頭で山中でふんどし一枚で鹿の生肉をむさぼり食っていたり。

そうなんです(笑)。あれ、鹿自体はフェイクなんですけど、僕がかぶりついているところだけ生肉が仕込んであるんです。

―じゃあ、実際に生肉を食べていたんですか!

僕、基本的にユッケとかは大好きなんですよ。でも、さすがにテイクを重ねるうちに気持ち悪くなってきたから、監督にイ發Α△笋瓩討れイ辰童世辰董幣弌法

―生肉を食べ過ぎたって、すごい現場ですね(笑)。そういえば、ほとんど山中でのロケーションでしたね。それも大変だったのでは?

まず、撮影現場に行くまでがほんとに山登りなんですよ。何十分も歩いていかないと撮影現場に辿り着かない。しかも、韓国の山って岩山が多くて土があまりないんです。だから足元が危ないくて、走り回ったりするシーンは大変。監督はテイクをどんどん重ねていく人なので、肉体的には過酷な現場でした。


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―ナ・ホンジン監督は厳しい方なんですか。

監督は現場でどんどんイメージが膨らんでいくタイプらしく、テイクをどんどん重ねていくんです。ディテールにもこだわるし、ちょっとしたタイミングにもこだわる。それで撮影が終わるとスタッフやキャストを集めて、みんなで撮ったシーンを見てディスカッションするんです。日本の現場ではあまりやらないことですけど、そうすることで、みんな共通のイメージを持って作業を進めていけるんです。

―そうすることで現場の団結が強くなるのかもしれないですね。韓国の俳優さんとの共演はいかがでした?

すごく楽しかったです。というのは、韓国の役者さんたちって、映画をやってるっていうことに対する自負心というかプライドというかがすごくあって。だから、ゼ分の限界以上のものをここで出そう!イ澆燭い淵皀船戞璽轡腑鵑旅發気あって、そこにスキルがちゃんと伴っている。そういう人たちと一緒にやるのは刺激的でしたね。

―韓国映画を観ていて個人的に感じるのが役者の存在感なんです。とくに顔の持つ力がすごい。

ありますね、確かに。ソン・ガンホさんなんか四角くて立派な顔しています。男でも女でも、ちゃんと年齢に即した自分の顔を持っている。

―そんななかで、國村さんの顔が混じっていても全然違和感がなかったです。

それは僕にとっては褒め言葉ですね。彼らと同じ作品世界、あるいはフレームのなかで、同じようにいられるかどうかっていうのは最初に考えましたから。

―しかも、韓国の大きな映画賞もとられて。

それは本当に嬉しかったですね。自分の仕事をこういうかたちで褒めてもらったのでは初めてなんで。しかも、あの得体の知れないキャラクターで(笑)。映画が韓国で大ヒットしたことにも驚きました。700万人近くの観客が観に来てくれたそうです。ある意味、この映画は難しい作品だと思うんですよ。どう楽しむかという点で。それを楽しむことができる観客が、韓国には700万人もいる。そういう人達を楽しませようと思ったら、作り手のモチベーションも高くなりますよね。韓国映画は個人的に好きでよく観てるんですけど、イ覆鵑任海鵑覆卜篭いんだろうイ辰道廚辰討燭鵑任后今回初めて韓国映画に参加させてもらって、その秘密が垣間見れた気がしますね。


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―日本の映画界も、そういう作り手と観客の良い関係が築けていけるといいですね。

それは、僕ら作り手が、これからどんな風にお客さんを楽しませることができるのか、ということでもあると思います。お客さんにイ◆映画って面白いんだイ辰道廚辰討發蕕┐燭蕁△泙娠撚茣曚僕茲討れると思いますし。

―そもそも、國村さんが俳優という仕事に興味を持つようになったのは、どういうきっかけからなんですか。

実はなんとなくなんです(笑)。車が好きなもんで、最初は学校で機械工学を勉強してたんですよ。でも、その学校をドロップアウトしたことがきっかけで、なんとなく劇団の研究所みたいなところに行き出して。そこで、舞台のお芝居をやっているうちに、どんどん楽しくなってきて、これを自分の生業に出来ればいいなあって思うようになったんです。

―その頃に映画もいろいろ観られていたんですか。

そうですね。10代の頃はアクション映画とか、わかりやすい映画が好きでした。邦画やったら『悪名』シリーズとか『駅前』シリーズとか。

―音楽をよく聴かれていたのもその頃?

そうですね。家にプレーヤーがなかったから、レコードも一切なかったんです。だから、音楽を聴くのはラジオぐらいでしたね。意識して音楽を聴くようになったのは、機械工学の勉強をしていた17、18歳ぐらいの時で、キャロル・キングの『イッツ・トゥー・レイト』がヒットしてました。だからいまだにキャロル・キングは大好きなんです。

―それは意外でした。勝手に國村さんに抱いていたイメージだと、同じキャロルでも矢沢永吉さんのほうかと(笑)。

矢沢さんは嫌いじゃないですよ。あの人のバラードとかを聴いてるとテ本人やな、演歌やなイ辰道廚Δ鵑任垢韻匹諭幣弌法


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―どちらかというと洋楽派だったんですね。

言われてみればそうですね。洋楽が多かったです。キャロル・キングのほかに好きだったのは、スージー・クアトロと、あとロキシー・ミュージックですね。ブライアン・フェリーはソロになってからも好きです。

―ブライアン・フェリーを聴いてる國村さんというのも絵になりますね! 話を映画に戻すと、役者としてターニングポイントになった作品はありますか。

『ブラック・レイン』です。僕は『エイリアン』が好きで、そのリドリー・スコット監督が大阪に来て映画を撮るらしいと。ちょうどその頃、イ海里泙淕鮗圓了纏をしててもなあイ辰凸鮗圓鯊海韻襪どうか悩んでたんです。そしたら、マネージャーがァ福悒屮薀奪・レイン』の)オーディションに絶対連れて行くから、あとはお前次第や!イ辰童世辰討れて、ほんとにオーディションまでこぎつけたんです。それで、ゼ分が役者に向いてるかどうか、リドリー・スコットにゲタを預けてしまえイ隼廚辰謄ーデションを受けたら選んでもらえた。しかも、そこでいろんな人と出会えたんです。その一人が(松田)優作さんで。役が優作さんの子分だったこともあって、出番が一緒のことが多かったから、いろんな話をさせてもらったんです。あの人はほんとに映画に命を捧げた人だから、あの人の言葉は今でも自分のなかに残ってて。あの現場でケ撚茲辰討發里鬚舛磴鵑箸笋蠅燭い放イ辰道廚い泙靴拭


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―運命的な作品だったんですね。最後にこれからの役者としての目標はありますか?

具体的な目標はないんですけど、日本で映画を撮る、という本来の仕事は継続しながら、また違う国の人達と面白い映画を撮ることができたらいいな、と思います。そのためにも、自分の身体をちゃんと動ける状態にしておきたい。今回、肉体的にヘヴィだったこともありますけど、もういい歳だし、役者としての表現をするための動きがちゃんとできるくらいの身体は維持したいと思っていますね。

JUN KUNIMURA
國村 隼 1955年11月16日、大阪府生まれ。1981年、『ガキ帝国』で映画デビュー。その後、89年の『ブラック・レイン』ほか、映画を中心に多くの作品に出演し、97年『萌の朱雀』で映画初主演。近年の主な出演作に『進撃の巨人 前篇・後篇』(2015)、『ちはやふる 上の句/下の句』『シン・ゴジラ』『海賊とよばれた男』(すべて2016)などがある。今年は『忍びの国』『ジョジョの奇妙な冒険』なども公開。『哭声/コクソン』で、2016 APAN STAR AWARDS 特別俳優賞も受賞。

『哭声/コクソン』
監督/ナ・ホンジン
出演/クァク・ドウォン、ファン・ジョンミン、國村 隼ほか
3月11日(土)より、シネマート新宿ほかにて公開
http://kokuson.com/