<朴槿恵大統領の失職に伴い、60日以内に大統領選挙が実施される。候補者は国民が望む「公正な社会」をいかに実現するかのビジョンが問われることになる。大統領選とその後の韓国を占うポイントは>

朴槿恵大統領の弾劾を審理していた憲法裁判所は、全員一致で大統領罷免の決定を下した。昨年12月9日の韓国国会における弾劾訴追案可決を受けて、これまで憲法裁がいつ、どのような決定をするのか注目されてきたが、今後は60日以内に実施される大統領選挙(5月9日が有力視)で誰が当選するのかに関心が向かうことになる。

朴大統領の弾劾がなければ今年12月20日に予定されていた大統領選挙が約7か月前倒しされることで、過去の選挙では半年以上が費やされた各党候補選出のための予備選挙や選挙公約作成、そして本選挙戦といった一連の過程が僅か2カ月間に圧縮されることになる。

僅か2カ月、とはいっても、これまでの選挙などから明らかなように、2カ月あればあらゆることが起こりうるのが韓国政治である。予断を排して選挙戦の行方を見ていくべきであることは言うまでもない。そのことを前提としつつ、大統領選挙の動向を見る際には、「争点、候補者、選挙構図」の3つがポイントとなることを指摘しておきたい。

第1に、選挙の争点である。憲法裁の弾劾審理が続く中、弾劾賛成のろうそくデモに対抗して、太極旗を手にした弾劾反対デモが行われるなど、韓国では国論の分裂が深刻化しつつあった。この分裂状況が収束するのかどうかは、選挙戦の行方を左右することになる。

憲法改正の可能性も

一方、韓国民の80%が弾劾に賛成し、憲法裁が全員一致で罷免を決定した状況を踏まえれば、朴槿恵政権の国政運営が間違っていたという点自体が選挙の主要争点となることはない。それでは、選挙戦で各候補は何を訴えることになるのか。

おそらくすべての候補が、朴槿恵政権の独善、独断的統治と密室政治を繰り返さないようにするための政治改革を主張するはずである。大統領の権限をさらに制限し、国会等によるチェック機能を高めるという観点から、次期政権での憲法改正の可能性が高まってきている。

国会には憲法改正を議論するための特別委員会が設置された。奇しくも、今年が現行の民主化憲法制定から30年の節目にあたる。但し、改正の是非やどのような改正にすべきかについて有力候補ごとに主張が異なっており、それが選挙戦で問われる争点のひとつになるだろう。

また、崔順実氏が大統領との関係を利用して私的利益を得ていたことに対する国民の怒りを踏まえ、次期政権は国民が求める「公正な社会」実現のための一層の努力を迫られる。どのような手段、政策でそれを目指すのかもまた選挙戦の争点となる。

西野純也(慶應義塾大学法学部政治学科教授)