ワイン好きなら知っておきたい 「ブドウと気候」の話

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「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!仕事に効く「教養としての地理」

地理とは、農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

最新刊『経済は地理から学べ!』の著者、宮路秀作氏に語ってもらいます。

ワインの生産地と成り立ちとは?

 皆さん、ワインはお好きですか? 私はドイツの白ワインが好きです。

 ワインを生産するためには、年平均気温10〜20℃が最適だといわれています。北緯30〜50度、南緯20〜40度はワインベルトと呼ばれていて、ワインの生産地として知られています。

 原料となるブドウはどこで生産されるのでしょうか? ブドウやオリーブ、オレンジ、レモン、コルクガシといった樹木作物は、ケッペンの気候区分でいう地中海性気候下での生産が盛んです。

 地中海性気候とは、夏季は高温乾燥、冬季は温暖湿潤を示す気候のことです。下の図を見てください。

 ヨーロッパ地中海周辺で展開する気候のため、地中海性気候といわれます。温帯気候に属する気候です。

地中海性気候と農業

 この気候下で発達した農業が二圃式(にほしき)農業です。これは圃場(農場)を2分割する方式の農業で、冬作地と休閑地に2分割します。

 地中海性気候は、冬は温暖で降水がみられますので、農耕が可能です。ここでは小麦を作っています。冬に育つ小麦なので、冬小麦(秋に播種[はしゅ]して越冬させ、初夏に収穫する小麦)です。

 しかし、夏は基本的に少雨となることから農業が困難です。冬の間の農耕で、土壌中の水分が少なくなっていることから、水分供給のために休閑させなければなりません。

 最初のうちはただ休ませていましたが、そのうち羊や山羊を放牧するようになります。羊や山羊は粗食に耐える家畜で、エサを多く必要としません。植生(しょくせい)があまりみられない乾燥地において重宝します。ですから、乾燥地域に多く居住しているイスラム教徒は羊をよく食べています。

 家畜を放牧すれば糞尿を垂れますので、これが地力の回復を促してくれます。こうして、秋の播種期を待つのです。その間、気温が上がる夏の太陽の恵みを活かし、樹木作物を育てるようになりました。

なぜ、ブドウが育つのか?

 果樹は水利(すいり)に恵まれたところでの生産に向いていません。必要以上に土壌中から水分を吸い上げてしまうからです。甘みを凝縮させるためには、ある程度水利に恵まれない乏水(ぼうすい)地のほうがよいのです。

 夏は少雨で、かつ気温が高い。このため、地中海性気候下では果樹栽培が盛んに行われるようになりました。ブドウやオリーブ、オレンジ、レモンなどは地中海性気候下での生産が盛んです。

 さてここで、冒頭の図をもう一度見てください。


 世界で地中海性気候が展開する地域はどこでしょうか? 具体的な国を挙げると、フランス、イタリア、スペイン、アルジェリア、南アフリカ共和国、オーストラリア、アメリカ合衆国、チリなどです。

 世界的に有名なワインの生産地ばかりですね。アメリカ合衆国は広大な国土を有していますが、地中海性気候が展開しているのはカリフォルニア州周辺だけです。アメリカ合衆国のワインの生産量の90%がカリフォルニア州というのも理解できる話です。

 地中海性気候が展開する地域でこそワインが生産される。

 ワインを飲みながら語るウンチクの1つに加えてみてはいかがですか?