シンガポールの名画座「The Projector」

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 シンガポールで今、独自のキュレーション力でコアな映画ファンの支持を集めている名画座がある。1973年に開館、その後閉館した古い劇場を改装して2015年にオープンした「The Projector」で、シネコン主流のシンガポールで一線を画す存在感を放っている。

■シネコン主流の中、独自路線を貫くラインナップ

 設立者は2人のシンガポール人姉妹で、アメリカやイギリス留学時に現地の名画座で映画を楽しんだふたりの経験が、オープンの動機だそう。外観も非常に独特で、シネコン大手であるGolden VillageやShaw Theatresが都会的なデザインのショッピングモール内にあるのに対し、「The Projector」は中国語のビル名が施された、東南アジアの雰囲気満点の古いビルの5階に施設を構えている。

スクリーンは2つあり、メインであるGreen Roomは230席。新作や話題作が上映されるのがここだ。サブスクリーンでイベントスペースとしても利用されるRedrumは、180席。インディーズや回顧展、クラシック作品が上映される。レッドルームと読み、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」からとられた。

 作品ラインナップは「ラ・ラ・ランド」など話題の新作を上映するかたわらで、アジア各国でも人気を集める「君の名は。」、北欧映画の特集上映、故デビッド・ボウイさんの1周忌を追悼し「ラビリンス 魔王の迷宮」の上映を行うなど、こだわりのラインナップがその魅力だ。

■グラフィティやポスターで飾られたおしゃれな待合フロア

 待合いと飲食スペースを兼ねたフロアは、レトロなビルの外観に反して現代的な欧米風のムード。エレベーターを下りてすぐ左手にチケットカウンター、右手にカフェバーがあり、フロア中央に飲食用のテーブル席が並ぶレイアウト。壁にはローカルアーティスト兼劇場のマーケティング担当でもあるスタッフが手がけた、白と黒を基調としたグラフィティがペイントされている。特筆すべきは壁一面が様々な映画ポスターで埋め尽くされたトイレ。新旧の名作、ヒット作がコラージュされたアーティスティックな空間になっている。

■新作映画料金も大手シネコンよりお得

 チケット料金は、「ラ・ラ・ランド」が13シンガポールドル(日本円で約1040円)。大手シネコンの新作料金が大抵20〜30シンガポールドルである中、大分お得だ。

 シートの快適さはというと、年季が入った感は否めないが、劇場中央に数カ所だけ2人がけソファーが設置されており、早い者勝ちで座ることができる。一方、要注意なのは室内の寒さ。常夏の国シンガポールでは冷房が効きすぎている施設は少なくないが、この劇場では公式HPのFAQに「なぜ寒いのですか?」とある程で、「ビル全体の一括管理で、我々が調整することができない為」と説明されている。

 映画ファンが長居したくなるようなシンガポールの名画座、一観光スポットとして足を運んでみてはいかがだろうか。(奥浜アリサ)