「人間は遊んでいればいい」と堀江貴文氏

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 AI(人工知能)やVR(バーチャルリアリティ)技術、ロボット技術などが急激に進化し、機械の知能が人間を超える「シンギュラリティ」が近づいていると言われる。そうした中で、人間の仕事は、生活は、どう変わっていくのか。ホリエモンこと堀江貴文氏と、メディアアーティストで筑波大学助教の落合陽一氏が「驚くべき近未来」を語り合った。

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落合:少し前に、グーグル翻訳アプリの新機能である「リアルタイムカメラ翻訳」が話題になりました。スマホのカメラを向けると、その場で文字を読み取って翻訳する。あの技術はもともと「ワードレンズ」というもので、2009年に開発されたから、そんなに新しいものではありません。

 ただ、機械翻訳の能力は、ここ数年で急激に進化して、どんどん実用的になってきている。実際、僕の大学の研究室でも、論文を英語にするのは機械翻訳して少し手直しするだけで済むようになり、翻訳業者を使わなくなりました。翻訳代はほとんどかからなくなっていますね。

堀江:「翻訳」は、膨大なデータを統計処理して“正解”を学習するディープラーニング(※注1)の超得意分野だよね。音声認識や翻訳は、めちゃくちゃ精度が上がった。昔のカーナビの音声認識なんかはクソだったけど。

【※注1/「深層学習」と訳される。人間の脳が学習するように、多層構造の「ニューラルネットワーク」という方法を用いた機械学習の一種】

落合:音声と映像はとくに進歩しました。85%から90%ぐらいの精度がある。

堀江:コンビニの客を画像分析して「29歳、男性」とか驚くべき精度で当てられるからね。ひとりの人が一生に会う人間の何万倍ものデータがあるから、「これが正解っぽい」とわかる。

 蓄積されたデータを瞬時に計算できるようになったことで、パラダイムシフトが起きた。AI(人工知能)のコア技術は汎用性があるから、それが何に使えるかをみんな探している状態だよね。

 たとえば倉庫のピッキング(商品が並べられた倉庫の棚から購入された商品を選んで取り出すこと)は機械には難しくて、人間がやったほうが安い。でも最近はアマゾンがベンチャー企業に倉庫のオペレーションを改善するAIの開発を競わせているよね。

 現状では人員が足りなくて、アマゾンが自治体に泣きついて人を集めたりしているけど、数年後には機械でやれるようになっちゃって、「おまえらもう要らねぇよ」と放り出すかもしれない。

落合:アマゾンはロボットを使うテストを精力的にやってますよ。機械と人間が相互に関係するシステムを作るのが得意なんです。

堀江:アマゾンGO(※注2)もすごいよね。これまでの自動レジは客が自分で精算作業をしてたけど、アマゾンGOはレジ自体がない。

【※注2/アマゾンが米シアトルでテストしている、コンビニのような業態のリアル店舗。レジがなく、スマートフォンをかざして入店し、商品を棚から取って店から出れば自動的に決済が完了する。店内には無数のカメラとマイクがあり、客が商品を手に取った様子を人工知能で認識している】

落合:スマホに専用アプリを入れておけば、持ち帰った商品がアマゾンのアカウントで課金される。コンビニはすべてアマゾンGOになると思いますよ。

堀江:そのときコンビニのおでんがどうなるかが、気になってるんだ(笑)。

落合:確かに、水分がある商品や消費期限が短い食品は難しいですね。おでん係だけは人間がやるのかな。

堀江:俺は、一つ一つのおでんがアマゾンの箱に入って陳列されると思う。玉子も大根もちくわぶも同じ規格の箱に入れて積んであるの。

落合:たしかにアメリカのコンビニに行くと、そんな商品があります。あらゆるサンドイッチが同じ形の箱で積まれている。

堀江:そうやって自動化されると、人間のやる仕事なんかなくなるよね。「機械に仕事を奪われる!」と心配する人も多いけど、人間は遊んでいればいいと思う。

落合:ほかにやることなくなりますからね。機械と人間が「競合する」と恐れてばかりいるのは古いですよね。

●ほりえ・たかふみ/1972年生まれ。実業家。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。株式会社ライブドア元代表取締役CEO。『ゼロ』『本音で生きる』など著書多数。

●おちあい・よういち/1987年生まれ。筑波大助教。メディアアーティスト。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。著書に『これからの世界をつくる仲間たちへ』などがある。

※SAPIO2017年4月号