「グルメンピック」を企画した大東物産(株)の本社(東京都中野区)

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 日本最大級の食フェス「グルメンピック」を企画した大東物産(株)(TSR企業コード:300183526、東京都中野区)が2月20日、東京地裁に破産を申請し同日、開始決定を受けた。
 同社は2013年5月設立で2016年6月に前社長のA氏らに経営が移ると、すぐに東京と大阪で食フェス「グルメンピック」の開催を発表した。出店条件が良く、多くの来場客が見込まれるだけに、500名を超える出店申し込みが相次いだ。
 ところが、1月17日に同社が突然イベント延期を発表した。出店料返金を求める声が急速に広がるなか、同社は東京地裁に破産を申請し、混迷が深まった。
 東京商工リサーチは、昨年10月から大東物産を追いかけていた。「グルメンピック」の開催を信じた出店予定者が振り込んだ出店料は約1億2,000万円に達する。突然の破産に納得できない出店者は多く、被害者の会も結成された。出店料はどこに消えたのか。破産の余波はまだ長引きそうだ。

「グルメンピック」を大々的に発表

 大東物産は2013年5月、(株)プリスフルフーズの商号で設立。その後、数度の休眠や事業再開、商号変更を繰り返し2016年1月、大東物産(株)に変更した。休眠していた同社をA前社長らが買い取り、問題となった「グルメンピック」の開催に動き出した。
 大東物産を買い取ったA社長らは、すぐに動いた。2017年2月、食フェス「グルメンピック2017」を味の素スタジアム内(調布市)で10日間、「大阪グルメンピック2017」を舞洲スポーツアイランド(大阪市此花区)で8日間、それぞれ開催することをホームページやプレスリリース、SNSなどで大々的に発表した。
 東京会場の想定来場者数は10日間で50万人以上。大阪も8日間で20万人以上を見込んでいた。特別募集枠は出店料20万円で、返金保証、ボランティアスタッフの手配など破格の条件を提示した。
 同社は、グルメンピック出店事務局(豊島区)と出店事務局サポートセンター(沖縄県)を中心に、全国の飲食店に電話やDMで営業活動を行い、出店を募集。出店概要書などを作成し積極的な営業が繰り広げられた。

大掛かりでずさんな計画

 出店予定者向けの「グルメンピック2017出店概要書」では、協賛企業や後援企業は「仮」という表現で記載されていた。
 開催が予定されていた味の素スタジアムや舞洲スポーツアイランド側の担当者には事前に相談し、予約後は両社ホームページのスケジュール表にも「グルメンピック」が掲載された。予約には契約金など相当な金額が必要だったとみられるが、今となれば契約金は「広告費」だったのかもしれない。
 大掛かりな計画とは裏腹に、ずさんな計画も見え隠れする。大東物産のホームページで使用された写真や個人情報に関する記載は他社ホームページから引用した可能性があるのだ。

別の食フェスのイベント案内と酷似する出店概要書

 「グルメンピック2017」のホームページ上でイベント参加者として紹介された人物は、「実際には契約をしないまま、一度の相談で勝手に掲載された」と憤慨している。協賛企業や後援企業の社名は、東京商工リサーチの企業データベースや法人番号公表サイトで検索してもヒットしない。さらに驚くことに、出店概要書は別のイベント案内と構成が酷似し、「出店」とすべきところを「出展」と記載している点まで同じだった。
 出店事務局側は、事前に出店希望者を審査するとしていた。しかし、ある飲食店経営者はいい加減な営業に怒りを隠さない。「グルメンピック」の内容に一抹の不安を拭えない経営者は、住所や電話番号を伝えずフリーメールで店舗名だけで見積もりを要請した。すると数日後に、見積書でなく「申込書」が送られてきた。そこには10店舗程度しか残りがなく、予定出店数が埋まる前に申し込みを促す文章が記されていた。

疑惑のなか社長交代と説明会開催

 出店募集中の10月、本社を現在地の中野区に移転した。中野区の事務所を複数回訪問したが、いつも不在で事業実態は確認できなかった。出店募集などは豊島区の出店事務局で行っていたが、ここもマンションの一室。50万人規模の日本最大の食フェスを行う雰囲気はうかがえなかった。
 11月に代表取締役がA氏から現社長のB氏に交代。1月23日から25日までの予定で出店者向け説明会の会場を予約していたことが確認された。しかし、どこを拠点に活動していたのか、詳細はつかめなかった。

突然の開催延期、そして破産へ

 年が明けた1月17日。請負会社の急なキャンセルなどを理由として、説明会の延期が突然発表された。これを受け、出店予定者が出店料の返金を求めていることがマスコミで大きく報道され、事態は急展開することとなる。
 会社側は同月23日、「グルメンピック2017出店料ご返金のお知らせ」を発表。そこには「港区南麻布区」(原文まま)の見慣れない住所が記載されていた。その住所に多くの出店予定者や報道各社が訪ねたが、大東物産はなく、同所のビル関係者は「一切関係ない」とリリースする事態にまで発展した。
 「お知らせ」には2月末までに返金に応じると書かれていたが、出店料返金を求める動きを無視するように同社は2月20日、東京地裁に破産を申請した。
 破産管財人は「破産申請時点の資産は現預金1,712万円しかなく、債務超過のようだ」とコメント。負債は1億2,340万円で、今後は破産管財人の調査により出店料など金の流れが究明されることになる。

キーマンの存在

 昨年10月から大東物産の取材を続けていた東京商工リサーチでは、キーマンとみられるC氏と何回も接触を試みた。だが、過去にC氏が出入りしていた場所はいつも不在で、最終的には携帯電話も繋がらなくなった。
 また、D氏の存在も浮かび上がってきた。D氏はイベントのノウハウなどを持つ人物で、「グルメンピック」の企画に関する役割を担っていたとみられる。
 C氏やD氏、A社長は同世代で、同級生や友人などの関係かもしれない。だが、現社長のB氏との関係は掴めなかった。現社長は事情を説明されず社長に担ぎだされた可能性もあり、責任の所在は複雑化している。

「グルメンピック2017被害者の会」

 出店料の返金を求めている債権者は、被害者の会を立ち上げた。被害者の会の代理人弁護士は、「1人あたりの被害額20万円と巧妙な価格設定で、単独では訴訟費用面や労力的にも難しい。入会していない被害者も含めて団結すれば、証拠の補完もできる。被害回復に最善を尽くしていきたい」と語る。
 被害者の会の代表は、「グルメンピックの出店予定数を大幅に上回る募集を行ったことや、営業のための保健所への申請状況、出店料に含まれるテント、機材の契約など、本当に開催するつもりがあったとは思えない」と困惑しながらも疑問を示す。
 そして、「突然の延期に戸惑う出店予定者が早くからSNSなどで情報交換を行い、団結することができた。代理人の弁護士と連携し、グルメンピックの責任者には返金だけでなく、刑事罰を求めていきたい」と話す。

508名の債権者

 508名の出店予定者が債権者となった破産事件。休眠していた企業を安価で買い取っていたのが大東物産の実態だった。最後の社長は会社の経営をほとんど把握していないふしもうかがえる。明らかに「おかしい」と疑問は沸いても、「だますつもりはなかった」と言い張られるとその反証は容易でない。
 商取引にはリスクがつきまとう。商業登記簿やホームページだけで会社を信じ、取引する危険性を再認識させる事件でもあった。


(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2017年3月10日号掲載「破綻の構図」より再編加工)