圧倒的な仮想体験! 謎の企業「マジック・リープ」が創る魔法の世界

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圧倒的な仮想体験が注目されつつも、事業内容のほとんどが謎に包まれたマジック・リープ。グーグルやアリババなど大手企業がこぞって出資し、昨春には約8億ドルを調達した。次世代コンピューティングの旗手と目される話題のスタートアップを、本誌が独占取材。

フロリダ南部のビジネス街にある、一見何の変哲もない平凡な外観のオフィス。だが中に一歩足を踏み入れると、世界が一変する。

廊下を人型ロボットが闊歩し、ラウンジでは爬虫類のような緑色のモンスターがくつろいでいた。明かりを点けたり消したりするのは、まるでアニメの世界から飛び出してきたような妖精。そして、駐車場では23mもの高さがある戦闘ロボットが巡回する。

もちろん、これらの光景はすべて幻影。筆者が頭に装着している「MRヘッドセット」のもたらす魔法によって生み出されたものだ(MRはMixed Realityの略で、現実と空想を組み合わせた世界のこと。「複合現実」と訳される)。そしてこのヘッドセットを発明した企業こそ、フロリダ州に拠点を置くスタートアップの「マジック・リープ(Magic Leap)」である。

同社の創業者兼CEOのロニー・アボヴィッツ(45)は、有能なマジシャンさながら、なかなか手の内を明かさない。2011年の創業以来、同社は徹底した秘密主義を貫いてきた。その技術を実際に目にした者はきわめて少なく、その仕組みを知る者はさらに少ない。しかも皆、機密保持の誓約書にサインしているため、多くを語ろうとしない。

それでもマジック・リープには今、莫大な資金が流れ込んでいる。同社はこれまで総額約14億ドル(約1,600億円)の資金を調達し、16年2月にシリーズC(投資ラウンド)で史上最高額となる7億9,400万ドルを調達した。

一流のベンチャー投資会社はもれなく一枚かんでいるといっていい。出資者には、アンドリーセン・ホロウィッツに、KPCB、グーグル、フィデリティ、アリババなどが名を連ねる。さらに、ワーナー・ブラザースや、レジェンダリー・エンターテインメント(『GODZILLAゴジラ』『ジュラシック・ワールド』を製作)など、毛色の異なる出資者も見られる。直近の資金調達ラウンドで、マジック・リープには45億ドルもの評価額がつけられた。

業界内で同社にまつわるうわさは奇妙なものだ。いわく、「ホログラムを使って何かやっている」「レーザー光線を使っている」「現実を操作できるビルサイズのマシンを発明したが、商業化はできないだろう」などなど。

確かな情報の欠如が、こうしたうわさ話に拍車をかけている。結局のところ、マジック・リープはこれまで製品を一つも発売していない。製品の公開デモもなければ、独自技術の「ライトフィールド」についての説明もしていないのだ。

だがマジック・リープはようやく最近、その全容を明かし始めた。めったに取材を受けないアボヴィッツは、本誌とのインタビューで次のことを明らかにした。

─消費者向け製品の発売に先立って、10億ドルを投じて試作品を完成させ、フロリダ州で製造工場の建設を開始した、と。

実際に製品が発売されれば(発売は今後18カ月の間という見方が有力だ)、新時代のコンピューティングの先駆けとなるだろう。

同社が開発したのは、単なる新型のディスプレイではない。それは”破壊的なマシン”と言ってもいい。1,200億ドル規模のフラットパネル・ディスプレイ市場は崩壊し、1兆ドル規模の世界の家電業界も構造変革を余儀なくされる。パソコンやノートパソコン、携帯電話だって不要になるかもしれない。コンピュータは”眼鏡”型のデバイスに搭載され、視界のどこにでも好きなサイズの画面を表示することができるようになるのだから。