トランプ米大統領の名指しで「トヨタ」批判、真の狙いは

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ドナルド・トランプ米大統領は、就任前から自動車業界に口先介入してきた。その中で日本の自動車メーカーに対しても、トヨタなどをやり玉に挙げ、米国に工場を造るよう圧力をかけてきていた。

しかし、フォードやクライスラーなど米国メーカーが国内の投資や雇用を拡大すると発表したときは即座にツイッターで感謝の言葉を送ったのに対し、トヨタが同様に5年間で100億ドル(1兆1180億円)の米国投資計画や新工場に約6億ドル(680億円)の追加投資を発表しても、トランプ氏からは何の反応もない。

トランプ氏にとって、自動車は日本との貿易交渉の手札の一つだ。TPPの離脱を表明した今、今後日本とは二国間の枠組みで自由貿易協定を交渉していくことになる。自動車を中心とする日本との貿易不均衡に圧力をかけながら、その後の交渉材料にするつもりなのではないか。トランプ大統領の発言は自動車といった特定の業界ではなく、二国間の通商政策という観点で捉えないと、真意を見誤ることになる。

そもそも現在、日米間に自動車の貿易に摩擦があるとは考えていない。日系メーカーが米国で販売する自動車のうち、平均で75%をメキシコ、カナダを含んだ北米、そのうち50%ほどを米国で生産している。日本から車を350万台以上輸出していた80年代とは違い、北米での“地産地消”化が進んでいる。自動車は既に構造対応が大きく進展した業界なのだ。

とはいえ、問題は残る。全体の25%に相当する170万台を日本から輸入し、米国から日本へは僅か2万台しか輸出していない。さらに、北米自由貿易協定(NAFTA)の通商ルールが大きく見直されるのであれば、50%の現地生産比率は決して高いとは言えない。これらの再調整を進めることは不可避な情勢であり、結果として米国への投資を加速化させることになっていくだろう。

(ナカニシ自動車産業リサーチ代表兼アナリスト 中西孝樹 構成=衣谷 康)