フランスパン案内「ブーランジェリー」の歩き方

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2000年代に入り、パン屋の屋号にフランス語のブーランジェリーという言葉を目にするようになってきて、パンの名前の混迷が始まった! ブーランジェリーのパンの名前が“?”な貴方に贈る、これだけ覚えればOKなフランスパン案内です。

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▼教える人
「ブーランジェリーエリックカイザージャポン」社長 木村周一郎
「木村屋總本店」6代目・木村周正(ちかまさ)氏を父にもつ、日本パン界のサラブレッド。大学卒業後にニューヨークやパリでパンづくりの修業をし、帰国して「メゾンカイザー」を開店。今では首都圏を中心に23の店舗を構える。

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ブーランジェリーはベーカリーより緊張感が漂う。なぜなら商品名がフランス語であることが多いから。フランスパンひとつとってもバゲット、バタール、パリジャン。何が違うかわからない。そこで、2001年にブームに先駆け「ブーランジェリー メゾンカイザー」を開店した木村周一郎さんにいろいろ聞いてみました。

「まず、ブーランジェリーってパン屋のことをフランス語に訳しているだけと思われていますが、フランスでは小麦を挽くところから始める店のみが“ブーランジェリー”を名乗ることができます」

いきなり間違い、すみません……。では、昭和生まれを悩ませるブーランジェリーのパンの名前についても教えてください。

「たとえばバゲットは“棒”の意味。カンパーニュはライ麦10%のパン。形由来と素材由来、名前は大体この2パターンに分けられます。先ほどのわからないと言っていたバゲット、バタール、パリジャンは成形の違いで、太さがバゲット→パリジャン→バタールの順に太くなります」

少し霧が晴れてきました。あと、時々耳にするヴィエノワズリーって何ですか?

「ざっくり言うとフランスの菓子パンです。フランスでは一日5食が基本で朝食や10時、16時のおやつにはヴィエノワズリーが好まれます。クロワッサンもこの一種ですね」

なるほど。木村さんの教えで基礎の基礎は頭に入った。あとはこの記事に掲載されているパンの名前を覚えれば、ブーランジェリーはもう怖くないはずだ!

●カンパーニュ

▼ライ麦畑でつかまえたパン!?
カンパーニュは田舎パンという意味。形状は関係なく、小麦粉全体にライ麦が占める割合が約10%のものをカンパーニュと呼ぶ。また、約20〜60%のものをメテイユ、70%以上だとパン・ド・セーグルと呼ぶ。これはまるで出世魚のよう! ライ麦比率が低いカンパーニュは初心者にも食べやすい一品。

●バゲット

▼これぞブーランジェリーの顔
“棒”という意味の、こちらはいわゆるフランスパンの代表格。バタールに比べてクラストの割合が高いため、カリッとした食感を楽しめる。縦にも横にも程よく開くようにクープは斜めに。クープがしっかり開いているのが美味しさの目安。紙袋からのぞくバゲットですぐに貴女もパリジェンヌ。

●ショソン・ポム

▼まさかのスリッパりんごパイ!
ショソンとはスリッパ、ポムはりんご。スリッパ形のりんごパイとはブーランジェリー名付け要素(形/素材)のミックスバージョンだ。パリではヴィエノワズリーの定番商品。

●コンプレ

▼全粒粉、食べれば命の泉わく
昨今の健康志向から本場フランスでも人気が高まっている、小麦を丸ごと挽いた全粒粉=コンプレのパン。ビタミンB群、E、食物繊維などを豊富に含む。コンプリートな食べごたえが魅力。

●パン・ド・ミ

▼イギリス生まれのいわゆる食パン
パン・ド・ミとはパンの中身=クラムのこと。イギリスパンがドーバー海峡を越えてこう呼ばれるようになった。フランスではクリスマスにフォアグラと食べるのがお約束なのだとか。

●セーグル

▼どっしり感がクセになる
セーグルはライ麦(黒麦)のこと。カンパーニュよりもライ麦高比率のパンをこう呼ぶ。ライ麦粉を使うと、小麦粉よりずっしりと重く中身の詰まったパンになる。写真はクランベリー入り。

●ブリオッシュ

▼セレブ系ヴィエノワズリー
卵とバターを贅沢に使っているため、材料費もなかなかだが、生地もダレやすく扱いが難しい。高級でちょっぴりワガママ、それがブリオッシュ。甘くふんわりした口溶けにやられます。

●パン・オ・ショコラ

▼夢の高級チョコパイ
ショソン・ポムと並ぶ、16時のおやつの顔だが、パン・オ・ショコラは朝食にも好まれる。ミルキーなチョコレートがサクサクの四角いクロワッサン生地に包まれていて、食感もまた楽し。

●クロワッサン

▼おなじみヴィエノワズリー番長
三日月の形からその名を冠したクロワッサンはフランス朝食の代表選手。枯れ葉を踏むようなサクサクした食感と、発酵バターの豊潤な香りが魅力。カフェオレとご一緒におパリな朝を。

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▼これだけは覚えて! 具材のこと
フロマージュ=チーズはわかるけど……悩ましきは具材名。“パン・オ・フィグ”のフィグはいちじくのこと、“パン・オ・ノア”のノアは胡桃、“レザン”はレーズン、“フリュイ”はフルーツ。これらはブーランジェリー頻出単語なので覚えておきたい。

▼ルヴァンって何だ?
ブーランジェリーの商品札でルヴァンという語を目にする。これは小麦、ライ麦からつくる伝統的な発酵種のこと。木村さんによると十数種類にも及ぶと言う。発酵したパン生地を種として使う“ルヴァン・ミクスト”、ライ麦からつくる“ルヴァン・リキッド”がある。

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(文・西澤千央 撮影・竹之内祐幸 教える人:「ブーランジェリーエリックカイザージャポン」社長 木村周一郎)