『Suits WOMAN』で話題の貧困女子は、『貧困女子のリアル』(小学館新書)の著者・沢木 文さんが短大・専門学校卒以上の貧困状態にある女性を取材したものです。

その一方で、シングルマザーや低学歴層の貧困女性も存在しています。DVや虐待連鎖、借金、学歴がないことなど、“出口のない闇”はニュースでも大きく取り上げられています。

そこで今回は、低学歴貧困女子の実態を知る漫画家の池田ユキオ先生と、沢木さんがガチンコ対談。

池田先生は、キャバ嬢の貧困に詳しく、最新作は配信中のコミックアンソロジー『赤貧女子地獄 けだもの道』(小学館eコミックストア他、各電子書籍ストアで配信中)に収録している『私は子連れおっパブ嬢』。極限下で絶望に喘ぐキャバ嬢の貧困描写がリアルです。

高学歴VS低学歴の貧困女子、どちらが地獄か……その対談の様子を紹介します。

池田ユキオ先生の最新作『私は子連れおっパブ嬢』

私たちは貧困女子になっていたかもしれない

沢木文さん(以下・沢木):私は大学時代からライターをしており、自分が貧困女子になっていたかもしれないという自覚があります。ですから、私が取材している貧困女子は“もうひとりの自分”でもあるんです。

池田ユキオ先生(以下・池田):20代前半で収入が少なかったり、安定していない時期に、東京で家賃を払わなくてはならないということは、想像以上に負担が大きいですよね。私も貧困はありえない話ではないと思っています。

沢木:池田さんの最新作『私は子連れおっパブ嬢』を読みました。10代で子供を産み、お店の託児所に預けて、男性の欲望を受けとめる……という仕事をしても、パンツを売らないと、カフェにさえ行けない、という状況がリアル。

池田:キャバ嬢たちは、日払いで給料が支払われたり、前借したりできます。また稼げばいい、明日出勤すればお金がもらえる、と心のどこかで思っています。

沢木:おミズ系の仕事の人は、低学歴の人が多いのですか?

池田:ケースバイケースですね。ニュースでは低学歴の人がクローズアップされていますが、中卒程度の学歴で夜の世界に入った女性は、堅実に稼いでいます。彼女たちはしたたかだし足元をきちんと見ているから、貧困状態になりにくいのです。

沢木:貧困状況になってしまうのはどういう女性なんでしょうか?

池田:18歳くらいでキャバのバイトにデビューし、そのままハマってしまう人ですね。お酒を飲んで男の人にちやほやされて楽しくて、お金がもらえる……という仕事観が植えつけられてしまうと、そこから抜け出しにくくなります。

沢木:大卒女子の手取りの初任給は大企業でも15~20万円程度です。

池田:お店でそこそこの人気を得ていれば、5日間くらいで稼げる金額です。それに慣れてしまうと、夜だけバイトを始めたりして、徐々に本業がおろそかになる傾向があると感じます。

沢木:高学歴貧困女子の取材をしていても、大学生時代におミズの経験がある人は多いです。確かに、彼女たちの計画性がないお金の使い方は、おミズならではの給料の払い方があるかもしれません。会社組織で働いていると、給料の前借はできませんからね。だから目の前の“喜び”のために、クレジットカードを使ってしまい、そのお金が足りなくなって夜のバイトを始めるという人もいます。

池田:どんなものを買うんですか?

沢木:10万円以上するブランドのバッグ、5万円以上の靴、洋服、化粧品などが多いですね。“今しかない”とか“限定品”に弱い人が多いと感じました。刹那的だけど、私も仕事がなかったら、モノを持つことで埋めていたかも……と取材をしながら思うことが何度もありました。

記号化されている貧困女子

沢木:漫画でリアルだな……と感じたのは、主人公がはいていたパンツを売ったなけなしのお金で、カフェに行って割高な甘〜いドリンクを買ってしまうこと。そこでコスパがいい牛丼を食べないというのが、貧困女子の現実。

池田:そうなんですよ。ワンシーズンしか着られない服、わかりやすいブランドの高価バッグ、オモチャみたいな靴、胸の谷間まで見えてしまうほど露出が多い服など、“あ、この人は貧困女子だな”とわかりやすい記号を身にまとっていますよね。漫画ではそのディティールを突き詰めました。

沢木:パッと見、貧困女子に見えませんよね。

池田:女性は化粧して“武装”しないと外に出られない。今は1000円でドレスが買えて、100円でメイク道具が買える時代です。武装をするほど貧困が見えなくなります。みんな、パッと見は普通ですからね。

沢木:チープなモノを買うのが上手ですよね。何かを大切に使い続けるという気持ちにならない人が多いと感じました。

池田:それは、未来につながる夢がないからです。キャバ嬢の恋人は、DVを繰り返す男性や、不当に金銭を巻き上げる人が多いのですが、そういう人と別れないのも、将来よりも、目の前のぬくもりを優先してしまうからなんでしょうね。

沢木:高学歴貧困女子が、貯金ができない理由を聞くと、同じように刹那的な答えが返ってきます。

池田:だからスピリチュアルや宗教にハマってしまう人も多いですね。

沢木:確かに! 

池田:人生に魔法はありません。自分でコツコツと行動し、自信を積み上げていかないと。

沢木:見えない未来や才能にすがらず、今の行動で未来を変えるには、何歳からだって遅くないと、そう思います。

池田:とはいえ、それを実行するには、社会の理不尽を自力で解決しつつ生きていく訓練をしないと難しい。私もマンガは絶望的な状況を描いていますが、貧困を脱するには行政など頼れるものはすべて頼り、こんがらがっている糸をほぐしていけば解決できると思うんです。例えば私の漫画の主人公なら、自己破産し、子供を乳児院や児童養護施設に子供を預け、生活保護申請をするなどでしょうか。

沢木:そういう行政手続きを根気よくクリアすることが、自信につながりますからね。

池田:脱貧困するには、大切なのは未来につながる夢を持つこと。それはフワフワとした夢ではなく、“昼の職業に就く”とか“友達を作る”とか、その程度でいいんですよね。

沢木:確かに。未来につながる楽しいことを考えること、そのために何をするか……ということがカギになっていることが、池田さんとのお話でよくわかりました。

漫画家・池田ユキオ 99 年講談社『別冊フレンド』別フレ漫画大賞にて 佳作受賞後、同誌にてデビュー。少女漫画誌からレディースコミック誌、ホラー漫画誌まで 幅広いジャンルで漫画を発表。集英社の漫画雑誌『YOU』で、キャバ嬢のリアルを描いた「胡蝶伝説」「胡蝶伝説六本木激闘編」が人気に。秋田書店『プチプリンセス』にて「モテレバ!」などを発表。小学館web『棄てられた子供たち』が人気に。

ライター・沢木文 76年東京都生まれ。大学在学中より、女性誌でライター&編集者として活動。著書に『貧困女子のリアル』、『不倫女子のリアル』(小学館新書)がある。