そのときどきで調子がいい、勢いのある、旬な選手を見逃さないこと。代表チームを編成するうえで、選手選びの重要な条件である。

 攻撃的なポジション、とりわけストライカーにはそれが当てはまる。かつてMF本田圭佑(ミラン/イタリア)が用いたたとえを拝借するなら、詰まっていたケチャップも、一度出てしまえばドバドバ出る。現在、最も出のいいケチャップを使わない手はない。

 FW長沢駿(ガンバ大阪)の調子がいい。ここまでJ1での2試合、AFCチャンピオンズリーグでの2試合の計4試合を終えて3ゴール。すべてが先発出場ではないなか、確実に結果を残している。


レイソル戦では華麗なゴールを2発も決めた長沢駿 3月5日に行なわれたJ1第2節、柏レイソル戦で決めた2ゴールも、実に鮮やかなものだった。

 1点目は192僂猟洪箸鮴犬した、長沢の真骨頂であるヘディングシュート。「ボールをミートするタイミングで、GKが(シュートを止めようと)腕を広げているのが見えたので、反応しにくい脇(の下)を狙った。冷静に(GKの動きを)見ることができた」。

 そして2点目は、技ありの左足シュート。本人は「本当は右足で合わせようと思った」と振り返るが、「走り込んだときにタイミングが合わず、ミートすることだけを意識して左足で合わせた」。コースまで狙ったわけではないとはいうが、右サイドからのクロスに対して体を開くようにして左足で合わせ、逆サイドのサイドネットに「うまく流し込めた」。

 シュートのうまさもさることながら、いずれのゴールにも共通するのは、相手DFのマークを外す、オフ・ザ・ボールの動きのうまさ。ゴール前に走り込むときに、一度相手センターバックの背後に隠れ、相手に自分を見失わせてから、先にボールに触れるポジション、すなわち相手センターバックの前に入り込む。そんな巧みなステップワークで、柏の若いセンターバックコンビを手玉に取った。長沢が会心の笑顔で語る。

「DFが(自分のことを)見えていないタイミングで(ゴール前に)入っていく。相手との駆け引きで勝てた」

 ジュニアユースからユースと、清水エスパルスのアカデミー(育成組織)で育った長沢は、当時から長身ストライカーとして広く知られる存在だった。現在の日本代表で言えば、MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)と同学年で、年代別日本代表の経験も持っている。

 だが、かつての長沢は、高さという類まれな才能を完全には生かし切れていなかった。2007年に清水のトップチームに昇格してからも、ロアッソ熊本、京都サンガ、松本山雅FCと期限付き移籍を繰り返し、高いポテンシャルを備えながら、なかなか開花し切れない。気づけば、際立った成績を残せないまま、プロ生活は9年目を数えていた。

 そんな長沢に転機が訪れたのは、2015年シーズン途中のこと。清水時代の恩師、長谷川健太監督に導かれるようにガンバへ移籍。徐々に出場機会を得ると同時に、少ない出場時間でも、大事な場面で貴重なゴールを決めていった。

 そんな活躍の背景にあるのが、前述した「DFとの駆け引き」。日本人離れした長身に加え、ゴール前でのポジションを取る術を身につけたことで、間違いなく得点能力は高まった。

「1回、相手の(背後に入り)視野から消えてニアへ入っていく形は、ファーで待っているよりも得意」

 長沢本人も自信を持って、そう語る。

 体格的な特性を考えれば当然のことではあるのだが、日本人選手にはスピードや敏捷性に優れたFWは多い。だが、その一方で、高さで外国人DFに対抗できるFWとなると、その数は激減する。つまり、長沢のような選手の希少価値は、日本代表では極めて高い。

 本人は日本代表について「選ばれたら考えたい。今はまったく考えていない。チーム(ガンバ)の勝利のためにがんばりたい」としか語らないが、現在の日本代表にはいないタイプのFWだけに、試してみる価値は間違いなくある。

 特にゴールが欲しい試合終盤など、飛び道具としては非常に有効だろう。サイドからは何度も崩しているのに、なかなかクロスがゴールにつながらない。そんな場面で彼の得点能力は生きるはずだ。特に3月のW杯アジア最終予選ではタイとの試合もあり、体格で相手を上回れる長沢を起用するには、絶好のチャンスである。

 点取り屋は、勢いも大事。今が駿、いや、旬のノッてるストライカーは侮れない。