<トランプ政権の軍拡と中国の無神経で米中ロの3国支配は幻に。焦るロシアは「トランプの盟友」に擦り寄るか>

ロシア人は自分と外界を見る目が大げさで、思い上がりと落ち込みの間を行き来する。ソ連崩壊後は自信を失っていたが、00年代に原油価格の法外な高騰でGDPが5倍以上になる高度成長を果たすと再び大国気取り。世界は多極化したとか、ルーブルを国際通貨として使えとか言い出し、08年8月にはジョージア(グルジア)に攻め込んだ。

そのわずか翌月、リーマン・ショックと原油価格の急落で再び鬱となる。だが14年のウクライナ危機以降、ロシアはオバマ前米大統領の拙劣な外交で再び得意の絶頂へと駆け上がった。

オバマは国外での軍事介入を過度に避け、民主化運動後に情勢が荒れた国にも実力介入をしなかった。それをいいことに、ロシアのプーチン大統領はクリミアやシリアで小規模の軍事介入によって大きな政治得点を挙げ、見えを切ることができた。

ロシアは今ではアフガニスタン、モルドバ、カフカス諸国などでも外交攻勢を強める。折しも「親ロ的」なトランプが米大統領となったので、ついには米中と肩を並べて3国で世界を仕切ると公言し始めた。中小国はなきがごとく、力で世界を仕切るという19世紀の帝国主義的思考のままだ。

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だが今度も躁の後に鬱がやって来た。トランプが親ロ政策を封じられたからだ。NATOはオバマ時代の合意に沿って、1月にはバルト諸国とポーランドへ約4000人の増派を開始。

先月には親ロ派の代表格、フリン米国家安全保障担当大統領補佐官が過度の親ロ性を問題視されて辞任し、後任にマクマスター陸軍中将が指名された。彼はマティス米国防長官と同様、ことさら反ロ的ではないが、中ロ両国を主要な仮想敵とする米軍の正統派に属する。

オバマ時代末期から国防総省と軍は両国を軍事面で再び突き放して抑え込み、国際法に従わせようとする相殺戦略を標榜。来年度国防予算は約10%もの増額を図っている。プーチンとの関係に前向きだったトランプも、核兵器は近代化・増強して他国の追随を許さないと明言した。

ロシアは少々の軍事力行使でアメリカの鼻を明かせなくなったのである。核ミサイル迎撃システムを宇宙に配備すると唱えてソ連を慌てさせたレーガン元大統領や、プーチンは信用できると言いながらNATO拡大の手は緩めなかったブッシュ元大統領の系譜にトランプも連なろうとしているかに見える。

苦しいときは中国との準同盟関係に頼ろうとしても、中国もトランプ政権への対処で精いっぱい。昨年の財政赤字は2兆8300億元(約47兆円)で軍拡も思うに任せない。

河東哲夫(本誌コラムニスト)