キャスティングには相当の時間を費やしたという (C)2016 A24 Distribution, LLC

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 第89回アカデミー賞で作品賞ほか3冠に輝いた「ムーンライト」で主人公のシャロンを演じた3俳優、アレックス・ヒバート、アシュトン・サンダース、トレバンテ・ローズの発掘秘話が、バリー・ジェンキンス監督やキャスティングディレクターを務めたヤシ・ラミレスのコメントなどから明らかになった。

 ブラッド・ピットの製作会社プランBエンタテインメントによる本作。米マイアミを舞台に、貧困地域で孤独な生活を送る黒人少年シャロンが、自己のアイデンティティを模索するさまを少年期(ヒバート)、青年期(サンダース)、成人期(ローズ)の3つの時代に分けて叙情的に描く。各国の映画祭で329部門ノミネート・158部門受賞という驚異的な成績を収めた。

 キャスティングに関して、ジェンキンス監督は「僕らは、同じフィーリング、同じ雰囲気、同じ要素をもつ俳優を探そうと思った」と振り返る。製作陣は「映画において、“目”は観客のための窓である」という考えから、同じ雰囲気を感じさせる目をもった3人の演じ手を長時間かけて探し抜いた。ジェンキンス監督と同じくマイアミ出身のラミレスは、キャスティングディレクターになる前は未成年の官選弁護人を志していたという異色の経歴の持ち主。「シャロンには誰か手を貸してくれる人が必要だったの。私はそういった子どもたちを知っていたし、そんな子どもたちのために働いていたから」と本作の脚本を読み、自身が携わることへの使命感をいだいたという。

 ジェンキンス監督とラミレスは、オーディションのほか出演者募集のチラシをマイアミの各地に貼り、学校や近隣を回って、少年期の役者を探し続けた。青年期の俳優においては、区域を全米に広げ、オーディションテープや顔写真のほか、高校の演劇プログラムを修了した生徒のビデオクリップをインターネット上で閲覧し、膨大な作業の果てにヒバートとサンダースを見いだした。

 ルイジアナ出身の元陸上競技選手であるローズにおいては、元々は主人公の親友ケヴィン役を演じる予定だったという。ラミレスは「キャスティングディレクターとして、(候補者が部屋に)入ってきてすぐ強烈に“これだ”と思うことはあまりないのに、ローズは特別だったわ。男らしい風ぼうに加えて、彼は観客がキャラクターに対して感じる弱さを持ち合わせていたの」と絶賛。「3人には3つの違った時期を一貫して流れる、内なる脆弱性という共通の特徴もあったのよ。それぞれの俳優はそれを目で表現できて、完璧な映画を作るのを助けてくれたわ」と信頼を寄せた。

 「ムーンライト」は、3月31日から全国公開。