屋比久知奈(右)とアウリー・クラバーリョ

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 ウォルト・ディズニー・アニメーション最新作「モアナと伝説の海」が、3月10日に全国で封切られる。「リトル・マーメイド」で知られるロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督が手がけた今作で、主人公に抜てきされたのはオリジナル声優と日本語吹き替え版声優、ともに“南の島”で暮らす爽やかな新星だった。(取材・文・写真/編集部)

 日本語吹き替え版で主人公モアナの声を務めるのは、新人の屋比久知奈(やびく・ともな)。琉球大学法文学部4年生で、映画の公開後に卒業を控えている。過酷なオーディション、厳しいアフレコ収録を経て新ヒロインとしてお披露目されたのは、米ハワイのアウラニ・ディズニー・リゾート&スパという絶好の舞台だった。

 日本から駆けつけた報道陣に屋比久を紹介したのが、オリジナル声優としてモアナに息吹を注ぎ込んだ新鋭アウリー・クラバーリョだ。オアフ島在住で、モアナと同じ16歳。ハワイのキャスティングディレクターから、当初難航していた同役のオーディションを受けるよう勧められたことがきっかけとなり、当時14歳で大役を勝ち取った。

 映画は、島の外へ出る事を禁じられながらも、愛する人々を救うことを運命づけられた少女モアナの冒険を描く海洋アドベンチャー。「モアナが映画の中で経験していくのと一緒に、私も成長していったの」と語るクラバーリョは、これまでのディズニー・ヒロインにはない自立した役どころについて思いをはせる。「モアナは確かに強くて自立しているけれど、家族からたっぷりの愛情をもらって育てられたからこそ、家族への愛のために必要なものはなんだって犠牲にできるの。そこに感情移入したわ。この役、この仕事を終えたとき、家族が私のことを誇りに思ってくれるように、私も演じたの」。

 寄り添うように隣で聞いていた屋比久は、モアナ役としては先輩にあたるクラバーリョへの感謝をにじませる。「この作品と向き合っていくなかで、彼女が命を吹き込んだモアナの声を聞きながらやってきたわけです。すごく勇気やパワーをもらったんですよ」。そして、モアナという新たなヒロイン像に対して話題を振ると、大粒の涙を突然こぼし始めた。「あれ、私なんで泣いているんだろう……。自立したモアナの中にも不安、迷いなど弱い部分が見え隠れしていて、すごく人間味があるところが共感できるところなのかなと思います。そういう意味では、映画を見てくださった方々が、人とのつながりをより身近に感じていただけたら嬉しいですね」。

 帰国後は、公開に向けて怒涛のプロモーション活動に努めている。故郷・沖縄へ帰ったのもつかの間、都内はもちろん地方キャンペーンを奔走。2月にクレメンツ&マスカー両監督が来日した際には、今作の主題歌「どこまでも 〜How Far I'll Go〜」をサプライズで歌唱し、度胸の良さを見せ付けるひと幕もあった。そんななかでも、変わらない事がこんなにもありがたいと感じた事はないと明かす。屋比久知奈という名が日本列島を駆け巡った1月17日以降、一時的には周囲がざわついたかもしれないが、キャンパスライフには何の変化もないという。

 「友達が気を使ってくれているのでしょうね。これまで通りに過ごす事が出来ています。時々、主題歌で語尾が強くなる『そこには何が待ってるの』というくだりをマネして、からかわれています。家族もすごく喜んでくれていて、私が帰国したらガラケーだった両親が、2人ともiPhoneに機種変更していました(笑)。ずっと動画検索してくれているみたいです」。

 4月からは生活の拠点を東京に移すが、“島人ぬ宝”は真面目すぎるほどに先を見据えている。2月27日(現地時間26日)に米ロサンゼルスで行われた第89回アカデミー賞授賞式で、クラバーリョが「How Far I'll Go」を歌唱し、喝さいを浴びたことも大きな刺激になっているようだ。クラバーリョは、米NBCが発注したテレビドラマのパイロット版「ドラマ・ハイ(原題)」に出演することも決定。「モアナと伝説の海」という意欲作で本格的にデビューという、幸先の良いスタートを切った屋比久が今後、どのような女優へと成長していくのか目を離すことができない。