不動産広告のDGコミュニケーションズが、不動産向けIoTサービスを提供するライナフと業務提携した。ライナフは「Ninja Lock」と呼ばれるスマートロックサービスなどのハードウェアや、内覧をスムーズに行う「スマート内覧」などを提供するスタートアップだ。

同時期に、アパート経営のインベスターズクラウドは、IoTを活用したスマートホステル「& AND HOSTEL」などのホステル事業を展開するBIJをインターアクションから譲り受け子会社化した。

DGコミュニケーションズは、不動産業界と広告というメディアを通じてつながりが深く、ライナフの商品を認知・販売支援を見越して業務提携を。インベスターズクラウドは、以前、記事でも紹介した通り、スマートロックサービスなどをすでに持ち、活用の場をひろめ、かつ事業領域をスマートホステルにも拡大していくのが狙い。

不動産デベロッパーでも、大和ハウス工業と長谷工コーポレーションが神奈川県藤沢市の大型分譲マンション「(仮称)プレミスト湘南辻堂」で入居者にリストバンド型のウェラブルデバイスを提供、データを集約・解析し、敷地内フィットネスジムなどと連携する「スマートウェルネスサービス」を提供すると発表した。

もともと1980年代には米国で提唱されていたのがスマートハウス構想は、家電や設備機器を制御するというものだったが、IoTによってデータ収集・解析なども視野に入った。

補助金で導入加速したHEMSからIoTへ

政府が2030年までに全住戸に設置することを目指し、国からの補助金制度もあったHEMSは、家庭で使うエネルギーの「可視化」と「制御」を行うためのシステムだ。

東日本大震災で電力供給が不安定になったことや電力自由化に向けて注目を集めていたこともあり、2013年から2015年を中心に大手デベロッパーが手掛ける大規模マンションや戸建て住宅などの新築物件に取り入れられてきた。

国を挙げての一大事業として注目を集めていたHEMSだったが、その成果については疑問視されている。2014年(平成26年)3月31日の補助金打ち切りとともに、急速に目立たない存在に。不動産デベロッパー関係者の中からは普及の速度で考えると2030年までに全住戸に、という目標は難しそうなうえ、集めたデータの活用法も見いだせないという声も。

経済産業省のHEMS関係者に話を聞いたところ「データを各社が個々に取得する現在のような手法でなく、必要な情報をサービス事業者全体が統一してビッグデータ化できれば、新しい価値が生まれるのでは?」と期待を持ちつつ、現在はあらゆるケーススタディ―を検討しつつ課題を洗い出しているとのこと。先行きは不透明だ。

そして2016年あたりから、不動産業界でHEMSというキーワードは消え、代わりにIoTがトレンドワードになった。HEMSのように、デベロッパーが自社でまかなうようなものではなく、スマートロックなどIoTデバイスやサービスを提供するスタートアップと連携し、消費者に提供するスタイルが主流になってきた。HEMSほど大規模なものではないIoTデバイス群は、導入もしやすく、途中で事業者やサービス、デバイスを変えたりといったこともしやすいのだろう。

不動産×IoTの最大課題は“耐用年数の差”

小さくスタートさせる点でHEMSよりも魅力あるIoTデバイス群。しかし、課題もある。安心安全であることが大前提の住宅において、新しさや、快適になるからという簡単な理由では導入できない。大手住宅メーカーの担当者は「住宅の耐用年数と比べIoT機器は寿命が2〜3年と、メンテナンスの年数に大きな差がある。IoT機器が住宅事故のさまざまな原因となりうる可能性をもっているなど、導入については大きな課題がある」と話す。

さまざまなメーカーのIoT機器が住宅内に導入されるようになったとき、住宅メーカーなどの不動産デベロッパーは、それによって発生するリスクを想定し、どうすれば安全に暮らしていくかのルールづくりが必要だ。

現在、経済産業省によって2016年4月、ミサワホーム総合研究所と産業技術総合研究所の共同事業が「エネルギー使用合理化国際標準化推進事業」に採択されており、今後3年間にわたり検証を進め、スマートハウスの機能安全に関する国際標準規格案を策定していくという。

不動産業界でIoTが単なるバズワードで終わるのか、それともスマートハウスの標準化の鍵となるかは、この数年が見極めどころだろう。

筆者:Sayaka Shimizu