パソコンのキーボードとマウス(2016年11月21日撮影、資料写真)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】近所の人や職場の同僚、国の指導者またはその妻はいったい、どれだけの稼ぎがあるのだろう? 透明性を推進するノルウェーではマウスを数回クリックするだけで、そうした情報が入手できる。

 米国では富豪の実業家が納税申告書を開示しないままホワイトハウス(White House)の主になり、フランスでは大統領選の最有力候補が勤務実態のない家族に公金から多額の給与を支払っていた疑惑に揺れている──いずれもノルウェーではあり得ないシナリオだ。

 ノルウェーの税務当局は毎年、すべての納税者に関する、収入や資産、納税額といった重要な情報をウェブサイトで公開する。他の人々も同じように税金を払っていることが分かれば、みんなで少額ずつでも自治体の予算を助けようという気持ちが強まるとの考えからだ。

 この慣例の起源は19世紀にさかのぼる。市民が役所または地元の税務署へ課税台帳の相談に行っていた時代だ。

 納税記録の公開は「男女あるいは異なる職種間の賃金格差など、社会・経済的な問題をめぐる議論でも役に立つ」と、税務当局のハンス・クリスチャン・ホルテ(Hans Christian Holte)氏は言う。

 北欧諸国は平等主義を強く唱えることで知られ、NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル(Transparency International)」の腐敗度ランキングでは透明性が高い国として昔から上位を占めている。

 スウェーデンとフィンランドではノルウェーのように納税記録がネットで公開されているわけではないが、電話1本かけるだけ、あるいは税務署に行くだけで入手することができる。

■透明性高い反面、欠点も

 スウェーデンのある企業は、わずか数ユーロの料金で、ある個人の銀行ローンの有無や過去に未払いの請求書がないかなど、ほぼすべての情報を提供している。

 フィンランド人にとっては、納税は誇りの問題だ。人気モバイルゲーム「クラッシュ・オブ・クランズ(Clash of Clans)」を開発したスーパーセル(Supercell)のイルッカ・パーナネン(Ilkka Paananen)最高経営責任者(CEO)は2013年に5410万ユーロ(約65億円)の税金を払い、人々からの尊敬を得た。

 ノルウェーの制度には欠点もいくつかある。コソコソ探られる可能性だ。特にしばらくの間は、オンラインでの検索が匿名で可能だったために、他人の納税記録の閲覧が問題となった。

 ノルウェーのメディアは、親の収入の高い低いによって子どもが学校でからかわれるケースが複数あったと報じている。逮捕された住居侵入、窃盗の容疑者らが、被害者の税金のデータを所持していたという事件もあったという。

 また納税者協会のロルフ・ロゼ(Rolf Lothe)氏は、「車などである通りを走るとその通りの住民たちの資産が表示されるアプリや、フェイスブック(Facebook)の連絡先に入っている人たちの資産が自動的に表示されるアプリまであった」と嘆く。

 その結果、2014年から匿名検索はできなくなった。さらに、自分の税金の情報が閲覧された場合は、誰に見られたのかも簡単に調べられるようになった。

 こうした制限が課されて以降、検索数は激減した。2013年10月から2014年10月までの検索数はノルウェーの人口の3倍を超える1670万件だったのに対し、2015年10月〜2016年10月はわずか150万件だった。
【翻訳編集】AFPBB News