練習試合に後半から出場した針谷は、正確なパスでチャンスを演出した。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 飄々とした表情で相手のタイミングを外し、自らのリズムをチームにアジャストさせながら、ボールを受けては、正確なパスをズバズバ通す。
 
 MF針谷岳晃はU-20日本代表においても、自らのスタイルをしっかりと組織の中に融合させ、軽やかなプレーを披露した。
 
 FC東京とのトレーニングマッチ。後半から出場した針谷は、4-4-2の左サイドハーフに入ると、常に全体を見渡しながら、パスの中継点となるポイントに走り込み、攻撃のリズムを作り出した。
 
「受けてはたいて、受けてはたいてが、僕のサイドでの役割だと思ったので、それを意識しました。(小川)航基くんに『中に入れ』と言われていたので、意識して中央でアクセントを加えるようにしました」
 
 右サイドハーフの遠藤渓太が、ドリブルで縦に仕掛けるタイプのため、針谷は小川と久保建英が組む2トップとの距離感を常に意識していた。かつ坂井大将と原輝綺の2ボランチがスムーズに上がれるように、サイドと中央でポジションを常に移動させながら、ボールが円滑に動くルートを作り出し、正確なワンタッチ、ツータッチプレーでパスを配った。
 
 前半よりも後半のほうが、スムーズにボールが動いた要因は、針谷の産み出す質の高い”潤滑油”によるものだった。
 
 針谷のリズムメークから、高い連動性を披露した日本は、小川、久保、遠藤が積極的にゴールに迫った。1-0で迎えた53分には、針谷が空けたスペースに原が走り込み、原の折り返しを小川がつないで、最後は久保が冷静にゴールに蹴り込んで、追加点を奪った。
 
 終盤には針谷が右サイドでボールを呼び込むと、ワンタッチで前に持ち出した瞬間、「裏に飛び出そうとした航基くんに相手DF3人が付いて行って、久保くんとその奥の渓太くんが空いた。彼らにマークが付く前に素早く出そうと思った」と、鋭く膝下を振り抜いて、正確なグラウンダーのパスを通した。
 
 これは久保が反応しきれなかったが、遠藤に渡り、ドリブルで仕掛けてシュートまで持ち込んだ(シュートはDFにブロックされる)。
 久保と遠藤のどちらが受けてもチャンスになるように、かつ相手DFがカットできないように、スピードに乗った正確なパスを瞬時の判断で送り込む。彼の能力の高さを示すプレーだった。
 
「航基くんは身体が強いし、久保くんも僕よりドリブルが上手いので、僕が彼らを支える側に回ったほうが良い。僕が目立つ必要は無いですから」
 
 派手な活躍をする選手の裏側には、いなくては困る名脇役が存在する。この試合の針谷は、まさしく名脇役、いや巧みな話術で全体の進行をコントロールする『名司会者』と言うべき存在感だった。
 
「高校からプロの世界に入って、やっとプロのスピードにも慣れて来て、落ち着いて自分の持ち味を出せるようになってきた。そのタイミングで代表に呼んでもらえたことはありがたいし、良い手応えを掴むことができました。
 
 自分のリズムでやれば、ボールをあまり取られないと思っているので、そのリズムを生み出して、チームの循環を良くすることが自分の役割だと思います。今日はやっていて楽しかった。だからこそ、もっとこの場所でプレー出来るように、もっと自分のプレーを磨いて行きたい」
 
 世界の舞台でより円滑な進行役となるために――。いないと困る、中盤の『名司会者』は、U-20W杯出場メンバー入りに向けて、確かな手応えを得るとともに、さらなるスキルアップを誓った。

取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)