ハリルジャパンの完成度(4)
西川周作の判定=50%(?)

 2018年ロシアW杯アジア最終予選。日本は初戦でホームのUAE戦(1-2)を落としたが、その後は何とか持ち直して、前半戦を終えて3勝1分1敗、勝ち点10でグループBの2位につけている。グループ2位までに出場権を与えられることを思えば、決して悪くはない成績だが、ここまでの戦いぶりを、守護神の西川周作(浦和レッズ)はどう見ているのだろうか。


ハリルジャパンの現状について語った西川周作「UAEに負けて最悪のスタートだったんですけど、アウェーのタイ戦(2-0)は無失点に抑えて勝てた。3戦目のイラク戦(2-1)は、ホタル(山口蛍。セレッソ大阪)の劇的なゴールで何とか勝てました。ずっとしんどい試合が続きましたね。ここまで苦戦したのは、チャンスを作れているんですけど、それを決め切れず、逆に1本のセットプレーとかで決められてしまったから。

 あと、中途半端に攻めて、カウンターを食らってピンチを招いていたので、攻撃はシュートで終わらせるとか、ペナルティーエリア付近ではノーファールでいくとか、そういう基本的なことが徹底できていなかったのも大きかったかな、と思います」

 変化が見られたのは、5戦目のホームで行なわれたサウジアラビア戦だった。それまで主力だったMF本田圭佑(ミラン/イタリア)、FW岡崎慎司(レスター/イングランド)らがスタメンを外れ、MF原口元気(ヘルタ・ベルリン/ドイツ)、FW大迫勇也(ケルン/ドイツ)、MF清武弘嗣(セビージャ/スペイン→セレッソ)らロンドン世代が活躍して、2-1で勝利をモノにした。

「前線のメンバーが入れ替わったけど、違和感はなかったです。その前の親善試合(4-0オマーン)でもサコ(大迫)の調子はよかったですし、彼がそのまま起用されたことで、(ヴァイッド・ハリルホジッチ)監督も選手の調子のいい、悪い、をしっかりと見てくれているんだなぁって思いました。僕は、代表は調子のいい選手が出る場所だと思っているので。

 気がつけば、僕ら北京世代よりもロンドン世代の選手が代表で中心になり始めているけど、そこは勝負の世界だし、代表は厳しい競争があるところなので、当然だと思っています。ただ、ケイスケ(本田)やオカちゃん(岡崎)らは、W杯を2回経験している選手。その経験はすごく大きいので、これから大事な場面で、必ず彼らの力が必要になってくると思います」

 前線は入れ替わりがあったが、今のところ、センターバックとGKは不動だ。西川もレギュラーをキープし、代表には欠かせない存在になっている。しかし、西川本人は楽観視していない。

「エイジさん(川島永嗣。FCメス/フランス)については、ベテラン枠みたいな感じで(代表メンバーに)入れているとハリルホジッチ監督は言っていますけど、僕はそれを信じていません。エイジさんはGKとしてまったく衰えを感じさせていないし、むしろ成長している。しかも、監督はエイジさんを信頼している。

 だから、今でも怖いです。攻撃の選手もスパッと代えられていますし、そういうのを見ていると、GKだって安泰じゃない。いつ代えられるかわからない。でも、負けたくない気持ちは当然あります。やっぱり、W杯で試合に出て、活躍したいので」

 厳しい競争にさらされながらも、西川の視線はロシアW杯をはっきりと見据えている。

 そんな西川も、ブラジルW杯では勝つことがいかに難しいかを知った。アジア予選を難なく突破して、充実期を迎えたメンバーがそろいながら、1勝することさえできなかった。しかし、その敗北を経験して、西川はW杯で勝つために必要なことが見えたという。

「W杯で勝つために何が必要かと言われると、戦術うんぬんではなく、メンタルだと思います。ブラジルW杯のときは、相手に押し込まれている時間が長かったですし、それにビビるわけではないんですが、(気持ちが)引いてしまっていた。それと、南アフリカW杯のときは、岡田(武史)監督が守ってカウンターというやり方を明確にしていたけど、ブラジルではそこが中途半端だった気がします。前で(ボールを)取るなら取る。引くなら引くと、戦い方を明確にしたうえで、より気持ちを強く持って戦わないと、世界の強い国には勝てないな、と思いました。

 もうひとつ、GKの質の差も大きいな、と思いましたね。強豪国にはいいGKがいます。ブラジルW杯のときは、ドイツ代表のノイアーが活躍しましたけど、あれだけ注目されたのは、最後にゴールを守るだけでなく、ピンチになる前に相手の(攻撃の)芽を摘むことができていたから。GKの出来が結果を左右する大会だったし、それは今のJリーグもそうだし、ロシアW杯でもそうなると思います」

 その日のために、西川は所属のレッズでミハイロ・ペトロヴィッチ監督のサッカーを究めようとしている。攻守にGKが関与することを求めるペトロヴィッチ監督のサッカーを体現できるようになれば、自然と代表でもいいプレーができ、世界でも評価される可能性があるからだ。

「チームでの活躍が代表につながりますからね。それに一度、ハリルホジッチ監督にはメディアを通して『GKは身長が190cm以上は必要』とか言われていますから、183cmでもやれるところをW杯で見せたい。ただ、W杯は最終目標ではなく、通過点にしたい。海外でプレーして、自分の小さな体、自分のスタイルで、どこまでやれるのか挑戦したい、という夢があります」

 W杯に出場するためには、まだまだ険しい戦いが待っている。後半戦の残り5試合は、3試合がアウェー戦で、しかも相手はUAE、イラク、サウジアラビアという中東の強豪ばかりだ。

 勝ち点20以上がW杯出場への最低ラインと考えるならば、前半戦と同様、3勝1分1敗、あるいは4勝1敗の結果が求められる。不可能ではないが、決して容易なミッションではない。

「残りの試合は、相当厳しい戦いになると思います。特に重要なのは、アウェーで行なわれる最初のUAE戦(現地時間3月23日)。相手は全力で勝ちにくると思うけど、自分たちも初戦で負けた相手に2度も負けるわけにはいかない。しっかりと勝って、(勝ち点9でグループ4位のUAEとの)勝ち点差を広げていきたい。

 そのためには、アウェーでもいつもどおりのサッカーができるかどうか。ボールを奪ったらすぐに縦を見て当てたり、あるいは自分たちでうまく時間を使ったりできるか。そういう使い分けを、アウェーでもできるかどうか、ですね。相手うんぬんよりも、自分たち次第といったところが大きいですが、絶対に負けられないです」

 そのUAE戦、続くタイ戦(3月28日/埼玉スタジアム)を連勝すれば、ロシアW杯出場もより大きく見えてくるだろう。幸いチーム状態は悪くない。序盤戦のもたつきからチームは回復し、今はやや上昇気流に乗りつつある。そのチームは今、西川が思い描く理想のチームまで、完成度としてはおよそ何%まできているのだろうか。

「う〜ん……、まだ半分ぐらいですね。監督からは、自分の長所を生かすためにパス回しに参加してくれとか、前線を狙ってくれとか言われているので、自分がやりたいな、理想だなっていうサッカーには近づいている感じはします。でもこのままで、W杯で勝てるかというと、まだまだすべきことがあるかな、と。

 とはいえ、僕はこのチームにはすごく伸びしろがあると感じています。ベテラン、中堅、若手がそれぞれマックスの力を出してまとまっていければ、もっと強いチームになれる。W杯で世界を驚かせるチームになれると思っています」

 前回の最終予選ではレギュラーメンバーをほぼ固定して戦い、その後、新しい血を入れてチームを改良していった。今回は、最終ライン以外の選手の入れ替えが頻繁に行なわれ、常に熾烈なポジション争いが展開されている。

 そのプロセスの真っ只中にいる西川は、その競争がチーム内に活力を生み、選手とチームを成長させていると実感している。そしてそれが、自分の理想であり、世界を驚かせるチーム作りにつながると信じている。

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