米国で高まる日本酒の人気、輸入量の9割が高級酒に

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テキサス州オースティンにある波板の外壁の建物に入ると、その奥には小さな醸造所がある。金曜日、または土曜日の夜に行けば、テイスティングをしたり、ローンチェアでくつろいだりしている常連客たちの姿を見ることができる。醸造家のジェフ・ベルが作業中なら、ホップやスモークチップの香りが漂っているかもしれない。

だが、「クラフトビールと酒の醸造にはつながるところがある」と話すベルがここで造っているのは、ビールではない。地元のストレンジランド・ブリュワリーが2015年に創業者からテキサス・サケ・カンパニーを買収して以来、ベルはここで、日本酒の醸造に携わっている。

米国でも日本でも、そしてその他のどの国でも、「日本酒の世界」では多くの変化が見られる。米国では発酵食品に対する関心が大幅に高まる中、クラフトビールというすでに確立された世界に入る人たちがいる一方、コンブチャ・メーカーなどは、新たな分野を開拓しようとしている。

また、米国以外でも、日本酒造りという職人の世界に足を踏み入れる人たちがいる。オーストラリアやブラジル、カナダ、ノルウェーなどでも、日本で杜氏たちが長年をかけて技術を習得し、受け継いできた儀式的な酒造りを行い、「サケ」に関する新たな経験の可能性を広げている。

日本食ブームが影響

ハワイ・ホノルルやニューヨークで利き酒イベント「ジョイ・オブ・サケ」を主催するクリス・ピアースは、「米国の飲酒の文化の一部として、われわれは勢いを増している」と語る。同展示会は今後、ロサンゼルスやラスベガス、マイアミなどでも開催される予定だ。

ピアースによると、米国内での日本酒の売上高は1994年以来、毎年約8%の増加を続けている。だが、純米酒や吟醸酒など、良質な日本酒がニューヨークやサンフランシスコなどの都市部で提供されるようになったのは、2000年ごろからだ。

流通量が増えたのは、マンハッタンに相次いで日本食レストランがオープンしたのと同時期に当たる。2007年に世界金融危機が始まるまで、ほとんどの店が高い人気を得ていた。そして、ピアースよればこれらのレストランは、景気の回復とともに勢いを取り戻している。

現在では、米国が輸入する日本酒の89%が高級酒に分類されるものとなっている。日本食レストランの復調と日本酒の普及は、こうした質の高い日本酒の増加によって、実現したとも考えられる。コスモポリタンなレストランやシェフたちは輸入した高価な日本酒をメニューに合わせて提供したり、カクテルのベースとして利用したりしている。

「愛好家」たちも普及を後押し

マイアミにある日本食レストラン「MAKOTO」のオーナー兼エグゼクティブシェフ、大桑誠は、「米国の人たちが何か新しいものを探し始める中、日本食はよりスタイリッシュなものになった」と語る。日本酒だけではなく、日本の「食」がトレンドになっているというのだ。

また、ニューヨークの日本料理店「春」のドリンク部門の担当者は、酒類メーカーは市場への進出を容易にし、消費者の認知を高めるための方法について模索を続けていると話す。例えば、ワインメーカーをまねて、高額なビンテージは供給量を抑えたり、持ち運びしやすく、集まって楽しむ機会に最適の缶入りタイプの日本酒を発売したりしている。

こうした日本酒の愛好家たちは、まずは日本酒を試してみてほしいと米国の人々に勧めている。

大桑は、「新しいものを怖がってはいけない」して、日本酒は「どんな料理にもぴったりだ」とアピールする。さらにピアースは、「悪い酒など存在しない」と断言している。