「Thinkstock」より

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 確定申告の期間も、残り1週間を切った。提出する書類の準備に追われているフリーランスや個人事業主も多いことだろう。この確定申告で、いつも頭を悩ませるのが、「自分が使った諸費用のうち、どこからどこまでを経費に計上できるか」ということだ。

 「経費に計上できる項目は、『事業に関係する支払い』であることが要件ですが、経費になるか否かの判断基準がこれしかないため、どうしてもシロともクロとも言えない『グレーゾーン』が多くなります」と話すのは、税理士の松嶋洋氏だ。

 この「グレーゾーン」をうまく使うことで、経費として認められる場合が意外と多いのだという。

●スーツ代は経費?実はグレーゾーン?

 グレーゾーンのわかりやすい例が、ビジネスの必需品ともいえるスーツだ。

 「スーツは、プライベートなシーンで使わないとは限らないので、『経費にならない』と国税は指導しますが、事業のために購入し、ほとんど事業でしか使わないのは間違いない。したがって、明らかに経費にならないとまで言うことはできないので、グレーゾーンになります」(松嶋氏)

 もっとも、原則としては、数万円程度のもので税務署がいちいち目くじらを立てることはない。

 「建前上、経費として落としていいのは『100%業務で使うもの』と定められていますが、実務では『私用の比重がどのくらいか』という点も判断基準になります。しかし、調査をする税務署の職員にとっても、このような基準を調査するのはかなり面倒です」(同)

 実際、国税庁が昨年3月に公表した「税務行政の現状と課題」によると、個人納税者に税務調査が入った割合を示す「個人実調率」は、平成25年分でわずか1%。同元年分の2.3%と比較すると、かなり低くなっている。

 松嶋氏によれば、この1%の実調率にしても、「グレーな経費を問題にしている」というより、不正経理など明らかに“クロ”といえるケースを中心に調査が入っているという。

 平均的な収入の人であれば、よほど大きな金額の経費を計上しない限り、税務署の調査が入ることは原則ないだろう。結果として、グレーな経費を計上しても問題になることは多くないということだ。

●接待のキャバクラ代も経費、領収書なしでもOK?

 たとえば、自宅作業で使っている文具やパソコン機器、家賃などを経費に計上できるのはフリーランスの常識だが、それ以外にも意外なグレーゾーンがある。

 「仕事関係者の結婚式や葬儀に出席した場合の祝儀や香典、カフェで作業をしたときの飲食代も経費として提出できます。接待で食事やキャバクラなどに行ったときの支払いも、事業で必要なものですので、グレーゾーンと言えるでしょう」(同)

 また、「経費として認めてもらうためには領収書が必須」と思っている人も多いかもしれないが、領収書がなくても経費に認められるケースはある。

 「ワリカンで食事をしたときなどは、誰かがまとめて支払いをすることが多いですよね。そうすると、全員には領収書が行きわたらない。このケースのように、やむを得ない事情で手元に領収書がない場合は、支払った金額などを書いた手書きのメモを残すだけでもいいのです」(同)

 「税務署」と聞くと、つい身構えてしまいがちだが、グレーゾーンの経費を申告するだけであれば、法律に違反しているとは言えないため、罪に問われることはないという。

 「ポイントは、グレーゾーンであっても『これは経費だ』という意思を強く持ち、職員に指摘されてもひるまずに交渉すること。この時期、確定申告会場にいる職員は非常に多忙です。そのため、こちらがゴネると面倒になって、案外見逃したりしてくれることもあります」(同)

●強気な交渉は逆効果?税務調査=アウトではない

 とはいえ、売り上げ1000万円以上をひとつの目安に、高い収入を得ている人の場合は比較的税務調査の対象になりやすくなる。しかし、松嶋氏によると、高収入の人でも、調査が入ったからといって必ず「アウト」になるとは限らないという。

 「グレーゾーンの経費なら、明確な基準がないため調査が入ったときも交渉いかんで結果が違ってきます。たとえば、ある経費について『これはプライベートなものですから、経費になりません』と指導された場合、指導をそのまま受け入れるのではなく、『ほとんど仕事用で使っているから、9割は経費として認められませんか?』という具合に交渉することが大切です。

 ただ、納税者や税理士のなかには、『私用だと思うなら立証してみろよ』と強気にゴネる人もいますが、これで通してくれる職員もいれば、かえって逆効果になるケースもありますので注意が必要です」(同)

 税務署の職員といっても人間だ。納税者の態度によっても結果は大きく左右され、だからこそ納税する側の交渉が重要になる。

 「グレーゾーンの経費を通すためには不正を一切やっていないことが大前提です。自営業者が売り上げを抜くような行為は、明らかにクロ。そんなことをすれば、職員に対して反論の余地がなくなります」(同)

 昨年1年分の会計結果を税務署に報告する今年の確定申告期間は、3月15日まで。まだ申告していない人は、松嶋氏の語る方法を試してみる価値がありそうだ。
(文=喜屋武良子/清談社)