みんな大好き焼鳥。ただ、肉を串に刺すだけ、と侮るなかれ。そのままでも食べられる肉をわざわざ切り分け、串に刺す……。その行為には、当然意味がある。串を外す、外さないという議論も話題になったが、各店のこだわりを聞けば、そんな議論は論外と分かるはず。

また、焼鳥の魅力は比較的安い金額で楽しめること。たとえば、一人あたり¥5,000なんて言われた日には、焼鳥店がうってつけ。今回は昨年末から今年にかけてオープンした、注目の焼鳥店をご紹介!



肉の甘みが特徴的な丹波黒鶏。皮の食感や脂の旨みを引き出すべく、高低差をつけた炭火で絶妙に焼き上げていく
さり気なく技が光る、食感と香りが秀逸の絶品串
『喜鈴 別邸』

恵比寿


本店『喜鈴』の開店からわずか1年で、同じ恵比寿エリアに早くも2号店が誕生。個室を充実させた新店は、まさに“別邸”の特別感とお籠もり感に満ちた空間で、本店同様の丹波黒鶏や京野菜の串焼きをいただける。

「ただ火を通すのではなく、ひとつの料理として焼く」というのがモットー。串打ちは火が入りやすいトップの肉を大きくし、扇状に並べる。



皮はパリッと身はジューシーな食感に。仕上がりの美しさも美味しさの要素

中華料理から発想を得たというももとだき身は、皮を外してから肉を整形し、皮をあとから巻きつけてハリを出す。このひと手間によって、北京ダックのように皮目はパリッと、身はぷっくりと甘く柔らかな至福の食感に。

塩やタレにも炭の薫香を移すなど技がキラリ。ひと通り串を楽しんだら、〆は名物の白湯ラーメンで!



タレでいただくレバー¥350はコクのある味わいで赤ワインとの相性も抜群



さび焼き(笹身)¥280は半生に仕上げつつも中心が冷たくならないように絶妙に熱を通す



だき身¥320ともも¥320は、身を丸く抱くように皮を引っ張りながら巻く。身は大きめにカットして、丹波軍鶏の旨みを堪能



抜群の火入れセンスで串を軽妙に操る



内観




目黒『鳥しき』の新店『鳥かど』の焼鳥。串打ちして肉の断面を減らすことで、肉汁たっぷりに仕上がる。美味しくいただきたいなら、熱々を串のままガブッと喰らうのが正解!
それはまるでコース料理。一串に込められた感動
『鳥かど』

目黒


6年連続でミシュラン1ツ星を獲得している目黒の人気焼鳥店『鳥しき』。予約困難の超人気店が、2017年1月、ついに2号店をオープンさせた。

『鳥しき』店主・池川義輝氏の心技を継承する串をいただけるとあって、早くも予約が取りづらいお店に。食べる人を魅了するその旨さの理由は、使用する福島産伊達鶏の肉質や焼きの技術はもちろんのこと、“串打ち”にも隠されている。



右からレバー、かしわ、皮。レバーはひと口めにハツを刺し、ハツのプリッとした食感とレバーのムースのような口溶けの対比を楽しめる。皮は脂を包みこむように波状に打つ

「人は狩猟民族だった頃の名残で、骨つきの肉にかぶりつくと本能的に美味しいと感じる。それを基に、串を骨に見立てて切り分けた肉を元に戻すように刺します。熱が入りにくいトップとラストはポーションを小さめに、一番美味しい部分は大きめにして、特に熱が入りやすい2番目に置く。起承転結のある、美味しく食べやすい串打ちを心がけています」と、大将の小野田氏。

いわば、ひとつの串がコース料理のようなもの。ひと口ごとに新しい皿を味わうような感動が生まれる。「注文はお任せのみ」とのことなので、心ゆくまで『鳥かど』の世界観を堪能すべし。



かしわは主にもも肉を使用。最初は小さく、2〜3番目は脂ノリが良く、歯応えのある部分を使用。最後だけむね肉を使い、さっぱりとした食後感に。さながらフルコースのような組み立て



叩きながら火の入り具合を確認しながら、ベストな食感に焼き上げる。凝縮した旨みと品よく漂う炭の薫香がたまらない



軟骨は丸串を使用



『鳥しき』で3年間修業を積み、『鳥かど』の大将に抜擢された小野田幸平氏



暖簾が印象的な店内は「禅」をイメージ


あの人気焼鳥店が外苑前に移転! よりスタイリッシュになったそのお店とは?



皮は水分をしっかり落としてカリッと。直火と網を使い、火入れを調整しながら絶妙な食感に焼き上げていく
名店仕込みの串打ちが、地鶏の旨みを引き上げる
『焼鳥 今井』

外苑前


『今井』の焼鳥は、肉を噛んだ瞬間の歯触りにまず驚く。繊維が一定でスッと噛み切れ、噛むほどに旨みがじんわりと口に広がりその余韻が続く。この食感に仕上げる秘訣は、串打ちにあった。

今井氏の串打ちのルーツは修業元の名店『バードランド』にあり、“鶏肉にストレスを与えない”ことを徹底している。例えば、地鶏は整形して焼くと肉が元に戻ろうと反発して身が縮み、食感が損なわれる。その考えに基づき、奥久慈軍鶏を扱う同店では肉を整形せず、部位の元の位置・形に戻して串を打つ。



右・中がソリ。左のレバーは、全体を均一に火入れしてバルサミコ醤油でいただく

串の角度は身と並行に、押し引きしながら徐々に串を通していく。こうした繊細な仕込みがあってこそ、炭火に乗せたときに地鶏の食感と旨みを十二分に引き出せるという。

ひと口めは塩をガツンと利かせ、少しずつフェードアウトしていくひと串の物語もお見事。串ごとほお張り、その哲学に浸りたい。



ももの希少部位・ソリレス。ぷっくりと盛り上がった元の形に戻すように、少しつまみながら串を打つ



塩をふった皮目を下にして、舌で塩味を感じながら歯ごたえと濃い味わいを堪能する



ももは鉄串でじっくり焼き上げ、食べやすくカットして提供



焼鳥は店主の今井氏が担当。昨年10月末に千駄木から外苑前へ移転し、店を拡張。コースは¥4,800〜、アラカルトも可



内観


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手前からせせり、手羽先、レバー
串打ちのひと手間、ひと技が斬新な食感を生む
『七鳥目』

広尾


代官山『こけぴよ』出身の川名直樹氏が、2016年10月に開店。早くも人気店に。料理の道の出発点は和食。数々の焼鳥屋を食べ歩き研究を重ね、和食の技法を用いながら「型にはまらない」串打ちに辿り着いたという。

ももは身と皮を分け、余分な脂を取り除いてから巻き直し、手羽先は骨を抜いて食べやすく、レバーは低温で火入れしてしっとりクリーミーな口どけに。そのひと手間が、水郷赤鶏特有の歯触りや旨みを最大限に引き出している。注文はコースのみで、松風地鶏の刺身なども味わえる。



せせりは身の厚みを手のひらで確認しながら、折りたたむように打つ。厚みを順に変えることで、噛んだ瞬間の食感が楽しく旨みがぎゅっと溢れ出る



ひと口目が大きく、徐々に小さく扇状に。見た目も美しく



火入れは低温でじっくりと



個室もあり。丁寧な盛り付けや器選びにもこだわる




手前から人気のもも¥150、ももや鶏皮の脂、軟骨を粗ミンチしたつくね¥200、歯ざわりがよい砂肝¥150
酒場価格ながら味とこだわりは本格派
『新宿ニューれば屋』

新宿


人形町『鳥波多゛』の姉妹店『れば屋』の新店。「銘柄よりも鮮度と状態の良さにこだわり、美味しいものを安く」と朝〆国産鶏を手頃な価格で提供する。部位は20種以上を揃え、あずき(鶏の脾臓)や牛のシャトーブリアンに相当するおびなど、希少部位が多いのも魅力。

5種の竹串を使い分け、なかでも個性を放つのがももの串打ちだ。あえて大きな塊で焼き、がぶりと喰らうことで脂ノリや歯ごたえを十分に楽しめる。一辺倒ではいかない『れば屋』の焼鳥をお愉しみあれ。



ももは焼きやすく持ちやすい鉄砲串を使用。手のひらで支えながら、皮がピンと張るように皮の端と端を打つ



皮目はパリッと香ばしく身はふっくらジューシー。塊肉ならではの旨みがたっぷり



炭火の直焼きと網を使い分ける



カジュアルな店内。日本酒やワインも豊富


実は恵比寿は焼鳥店天国だった?



おまかせコース¥6,500、1本で勝負。1年以上試行錯誤して完成したつくねは、門外不出のタレでいただく
大阪の名店が進出。我流の技法で焼く至極の焼鳥
『鳥蔵』

恵比寿


大阪ミナミで30年間暖簾を掲げた名店が、東京に移店。メニューは大阪同様で、関東では珍しい尻皮なども。焼き場に立つのは、堅物頑固者で名の通った大将の田那邊八郎さん。串打ちは食べやすさと美しさを意識。

“ 炙る” のではなく“焼く”ことを信条に、炭火で絶妙に焼き上げる。熟練の手つきと渋い表情に、これまた串への期待が高まる。焼鳥の基本を踏襲した「外はカリッ中はジュワ」の味わいは、親しみやすくもどこか特別。これぞ、大将が追求する“極上の庶民の味”である。



名物の皮ねぎは、鶏皮がたるまないように串で皮を押さえながら巻きつける



皮のパリパリ食感とねぎの甘さ、炭の香ばしさが三位一体に



御年80歳になる大将。焼き台を離れると、大阪のおっちゃんらしいユーモア溢れるトークも飛び出す



カウンター席はカジュアル系接待にも最適




自慢の焼鳥3種は、右から、「ささみのさび焼」、「伊達鶏のだき身」、「極上レバー」
部位ごとに厳選した鶏肉を使った究極の味わい
『えびす坂 鳥幸』

恵比寿


上質な空間で焼鳥が食べられる鳥幸が、2016年秋に恵比寿ガーデンプレイスタワー38Fにオープン。八ヶ岳地鶏、大山鶏など部位ごとに鳥を使い分け、それぞれに究極の味わいを追求している。

例えば、レバーは前日に絞められたばかりの新鮮な大山鶏を使い、クリーミーな味を実現。とろりと煮詰めたタレが絶妙にからんで、食感との調和を生んでいる。串は頭の方を大きくし、塩加減も調整されているため「1人1串で頭からパクっと食べてほしい」そう。流儀に従えば幸福な1串が味わえる。



「伊達鶏のだき身」は、胸肉を皮で抱くように覆って、ジューシーになるように



山型にこんもりと丸みを持たせるように串打ちすることで余分な脂が落ちる



焼き台は温度別に炭を配置し、串ごとに焼き方を変えている



カウンター席のなかに焼き台があり、職人の手仕事ものぞける