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○有機ELに注目 - 大型化・4K化が順調に拡大するテレビ市場

IHS Markit コンシューマーエレクトロ二クス部門テレビ市場担当シニアディレクター・上席アナリストである鳥居寿一氏は、2017年初めに米国ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES 2017)を見学した印象から話を始めた。

同氏は「CESは、従来のConsumer Electronics(家電)に加えて、Contents(コンテンツ・ストリーミング)、Car(自動運転車のデモなど)、China(中国勢の展示の多さ)へと変貌を遂げている。テレビに関しては、有機ELテレビの画質が2016年のCESに比べて改善し、韓国LG Electronicsの有機EL壁掛けテレビとソニーの新規設計音響システム搭載の有機ELテレビ(パネルはLG製)が注目を浴びた。一方で、Samsung、Hisense、TCLの3社は量子ドット搭載液晶テレビを推進している」と述べ、CESから見えてきたテレビの姿として「大型・高解像度(4K/8K)」、「HDRによる高画質」、「軽量壁掛け」、「スマート化(家庭内のデジタル機器との融合」)、「多様な音響システムの採用」の5点を挙げた。

テレビ市場の傾向としては、「大型化(55型以上)、4K化は順調に拡大している。全世界の4Kテレビの需要は2016年は5600万台だったが、2017年には7800万台へと増加する見込みである。テレビ全体としては余り伸びない中、4Kテレビの需要予測にほとんど変化は無い。2017年以降は大型・4Kというだけでは差別化がますます困難になるが、大型化は第10.5世代ラインの量産開始と共にさらに加速する可能性が高い」とし、トレンドとしての大型化は止まらないのではないかとの見かたを示した。

また、テレビを取り巻く環境が、視聴(生活)スタイルの変化と共に従来型から新興型へのパワー・シフトの最中にあるとし、先進国から中国へ、ブランドも日本から中国へとシフトするほか、家電量販店での販売からインターネット販売へ、ライブでの視聴から見たい時間にストリーミングでの視聴へのシフトが起きつつあると、世界の変化を述べた。

2017年の見通しについては「米国新大統領の経済政策、特に為替および関税の2つがテレビ需要への大きな影響を与える不確実性の時代へと突入した」とし、2016年後半からのパネル価格の急激な上昇および為替安によるテレビブランドの収益悪化が2017年前半に進み、年後半以降のセット需要の減退へと繋がる懸念があるとした。

○売り切りからサービス提供へとシフトするパブリックディスプレイ

IHS Markitコンシューマーエレクトロニクス部門ディレクターである氷室英利氏は、デジタルサイネージ(パブリックディスプレイ)およびデスクトップモニタ市場について述べた。

デジタルサイネージ(主にパブリックディスプレイ)はソリューションビジネスであり、単純なセットの売り切りのみのブランドは次第に淘汰されつつある。ビジネス形態が初期コストの吸収や継続的な保守サービスが提供できる「ワンストップサービス」や「パッケージディール」が一般化してきており、それらのサービスを提供できるTier1ブランド、ないしはパートナーとなるシステムインテグレータやプロAVディーラーが、よりビジネスの機会を得やすい環境にある。

セットの設計側から見た場合、コマーシャル向けのパブリックディスプレイとコンシューマ向けのテレビは構成物のパネル、EE(電気)、ME(機構)、SE(ソフト/ファームウェア)、PE(電源)のうち、パネルおよびMEとSEの一部が異なるだけで、他は同一設計となりうる。パブリックディスプレイにとってはテレビの生産規模を享受できる環境になったといえる。

用途別では、店舗に設置するサイネージ、および公共の場に設置し、複数のコンテンツを表示する情報ディスプレイが需要の大きな部分を占める。ただし、店舗は稼働時間が比較的短く、コマーシャルグレードのパネルやセットが必ずしも必須ということではなく、導入コストが優先される。

また、LEDを用いたビデオウォールの価格低下が加速しており、市場を拡大している。現状では狭ピッチの屋内LEDビデオウォールとスーパーナローベゼルSNBのマルチディスプレイによるビデオウォールのコスト差はあるものの、今後のLEDトレンド(チップの小型化と狭ピッチ化)動向に特に注意を払うべきだろうと同氏は指摘する。さらに今後は有機ELを用いたパブリックディスプレイも登場することが予想されており、ブランドごとに用途、目的による適材適所の提案が求められるようになるという。

○PC用から脱皮して多様化するデスクトップモニター市場

同氏は最後に「PCモニターという製品の存在意義の変化に引き続き注目したい。すなわち、単純な"デスクトップPC用の画面"から脱却し、多様な映像ホストに接続する機会が増え、さらにモバイルデバイスにできない大画面(単体の大画面のみならず2画面以上のマルチディスプレイ含む)の容易な享受が可能になった。技術トレンドは"高付加価値化"であり、表示する情報のうち、ゲーム用途やストリーミング視聴など、動画の占める割合が今後ますます増加することが見込まれ、技術的な要求もTVを追随し、動画対応に向けた仕様を多く盛り込みつつある」と指摘、高付加価値化により、新しい需要の創出と買い替えサイクルの短縮が期待されるとした。また、2020年に到来するWindows 7のサポート終了に向けた需要の盛り上がりも買い替え喚起の機会となるとの見通しを示し、モニター市場の市場規模縮小は止まり、長期的には反転拡大のポテンシャルが示される可能性もあるとの期待を示した。

なお同氏は、「旧態然としたモデルやブランドは、デスクトップPC市場と運命共同体である。多様性を備えた現在のモニターは今までのモニターとは意味合いが異なることを、市場にいかに訴求していくかがビジネス継続のポイントとなるだろう」 とも指摘している。

(服部毅)