惑星間輸送システムで火星に人を送り込む計画をSpaceXのイーロン・マスクCEOが発表するなど、「火星移住」というフィクションのような話題が現実味を帯びてきています。しかし、火星は大気が薄く、気温が低く、水もほとんどないという環境ゆえに人間が移住するのは難しいのでは?という問題があります。そこで、研究者らは新たに「宇宙船を火星の軌道上に送って人工的な磁場シールドを作り出し、火星を住みやすい環境に変える方法」を提案しました。

A FUTURE MARS ENVIRONMENT FOR SCIENCE AND EXPLORATION

(PDFファイル)http://www.hou.usra.edu/meetings/V2050/pdf/8250.pdf

NASA wants to launch a giant magnetic field to make Mars habitable - ScienceAlert

http://www.sciencealert.com/nasa-wants-to-launch-a-giant-magnetic-shield-to-make-mars-habitable

We might be able to make Mars habitable

http://mashable.com/2017/03/06/making-mars-habitable-magnetic-field/

太陽系の中心に存在している太陽からは、熱や光、電波や放射線などに加えて「太陽風」と呼ばれる物質が大量に放出されています。

火星にはごく薄い大気が存在しますが、探査機「メイブン」の観測データを元にNASAが発表した内容によると、火星の大気は太陽風によって吹き飛ばされ、毎秒約100gの割合でガスが宇宙空間に放出されているとのこと。このことから研究者らは、「何十億年も昔、火星の表面には液体としての水が豊富に存在したが、水蒸気となった水が太陽風を受けることで失われ、火星は冷たく、乾いた姿に変わっていった」という見解を示しています。

火星がどのようにして太陽風の影響を受けているのかは、以下のムービーから確認できます。

NASA | Solar Wind Strips Martian Atmosphere - YouTube

火星が太陽風の影響を受けている様子はこんな感じ。



そして、太陽から吹き出す電子を帯びた粒子によって火星のイオンが吹き飛ばされる様子。





太陽風による大気の損失を少なくすることができれば、火星はより住みやすい環境になると科学者らは見ています。そこで、NASAによるワークショップ「Planetary Science Vision 2050」では、大気の損失を防ぐべく「宇宙船によって火星の回りに人工的な磁場を作り出す」という方法が示されました。

「火星周囲の安定した軌道上に磁場を作り出す特殊な宇宙船を送ることで、太陽風を防ぐシールドを作り出す」という方法は研究者らが行ったコンピューター・モデリングによる実験で示されたもの。今回のシミュレーションが実現すれば、火星に対する太陽風の影響をストップさせ、数年のうちに火星の大気圧が地球の半分ほどに上昇します。そして、気温も摂氏4度ほどにまで上昇し、長年の太陽風の影響によって生まれた北極の極冠にある二酸化炭素の氷を溶かすようになります。



すると放出された二酸化酸素がさらなる温暖効果をもたらし、最終的に火星が地球のような、人間にとって住みやすい環境に変わる可能性があるとのこと。火星の環境を地球に近づける、という試みの多くは人為的なイメージですが、この方法は「火星の自然自身に環境を変えさせるもの」となっています。また、磁場によるシールドを作れば、科学者らがロボットを使って火星を探索する行為も簡単になるそうです。

もちろん今回の提案はシミュレーションによるものなので、実際にうまくいくかは未知数。しかし、実際に2020年代に惑星間輸送システムで火星に人を送り込む計画をSpaceXのイーロン・マスクCEOが発表しており、NASAも火星での生活を想定して1年間も狭いドーム状の施設に6人で引きこもるNASAの長期ミッションを終了させていることから、「火星移住」という少し前まではフィクションに聞こえていた話が現実味を帯びてきています。

「大気が増えると、地表が拡大し、太陽から放出される粒子が遮られ、酸素を生み出す能力が拡張し、地球の生き物が存在しうる『屋外の温室』が生まれます」「もしこの提案が私たちが生きている間に実現すれば、火星移住という未来も遠くないでしょう」と研究者らは語りました。