怪我に悩まされた左膝からテーピングはまだ取れないが、開幕から左SBのスタメンを務める登里は、躍動感溢れるプレーでチームを支えている。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ 2節]川崎 1-1 鳥栖/3月5日/等々力

 テーピングが巻かれた左膝には、やや痛々しさこそ感じられるものの、等々力陸上競技場のピッチには、左サイドを疾走する登里享平の姿があった。
 
 開幕戦に続いて、ホームで行なわれたJ1・2節の鳥栖戦でも左SBとしてスタメン出場した彼は、1-1の引き分けに終わった試合後、こう話してくれた。

「2次キャンプの練習試合にも、その後、非公開だった浦和レッズ戦にも怪我で出場できなかったのに、こうして試合に使ってもらっているので、(鬼木達監督からの)信頼は感じています。だからこそ、さらにコンディションを取り戻して、積極的に自分の良さを出していきたい」
 
 テーピングの理由でもある左膝半月板を負傷したのは、2年前の2015年-―それこそ、キャンプ中の出来事だった。その後、手術に踏み切った左膝の回復は遅れ、15年シーズンをほぼ棒に振ることになる。翌16年は第1ステージ途中に復活すると、優勝を争っていたチームの勝利に貢献した。
 
 ところが、である。再び左膝を痛め、再手術することに。復帰しては離脱し、ピッチに戻っては再び戦列を離れることの繰り返しに、明るい性格が取り柄の彼も、さすがに苦しんでいた。迎えた今季もキャンプ中に膝を痛め、コンディションはもちろん、メンタル面を保つのも難しかったはずだ。
 
 香川西高を卒業して川崎に加入した登里も26歳になった。プロ9年目を迎え、在籍年数も長いだけに、鬼木監督が新たに指揮を執るチームを助けたいという思いは、新キャプテンに就任した小林悠とともに強い。それだけに開幕戦のピッチに間に合ったことは、彼自身にとってもチームにとっても朗報だった。

「今季はコンディションもそうですけど、筋トレをするタイミングも含めて、(フィジカルコーチの)シノさん(篠田洋介)やトレーナーの人たちと相談して、頻度を考えて取り組んでいる。今は連戦ですけど、やっぱり膝の筋力が弱くなってしまっていたところもあったので、また痛めないようにホンマに気をつけながらやっています」

【川崎 1-1 鳥栖 PHOTO】小林悠が2戦連発!鳥栖は高橋のボレーで1-1のドロー
 新指揮官の下、新たなメンバーが加わった今季の川崎は、中村憲剛も「チームとしてもがきながら進んでいることは確か」と話すように、生みの苦しみを味わっている。
 
 チームの根幹であるパスワークは再構築している段階で、鳥栖戦もそうだったように、対戦相手も川崎の攻撃を封じようと中央を固めてくるため、敵を攻略するのは一筋縄ではいかない。その難しさを感じているからか、登里はサイドからの攻撃に活路を見出そうと、前半から高い位置を取り続けていた。
 
「今季は、監督から守備に関してより緻密にやるように言われていますけど、自分としてはそれほど(昨季までと)変わらない。去年までやってきたサッカーにプラスして、新たに守備を積み上げている段階。攻撃はある程度、選手たちの発想に任せてくれているところもありますからね」
 
 鳥栖がロングボールを多用してきたため、川崎はディフェンスラインを下げざる得ない状況を強いられたが、それでも登里は好機に顔を出し続けた。20分にはチームとして意図した守備からボールを奪うと、得意のドリブルで左サイドを駆け上がった。
 
 52分にも阿部浩之のパスを高い位置で受けると、左サイドを突破して小林にクロスを上げた。得点にこそつながらなかったものの、ひとつの形は見えていた。
 
「後半は阿部ちゃんのところに入った瞬間に、数的優位を作るようにランニングを意識しました。前半の立ち上がりに速攻を仕掛けたところもそうだけど、ああいう場面でしっかりとゴールに結びつけられればと思う。もっともっと、その回数を増やしていきたいですね」
 
 何より、その表情や口調からは、自分がやらなければという強い意志が感じられる。
 
「(今季の)キャンプで膝を痛めた時は、さすがにどうなるのかな、全力でできないのかなって思ったんですけど、大事なのはメンタルの部分だけだった。サッカーをやれる状態になれば、ピッチ内に入ることができれば、自分は100パーセントの力を出し切れる。だから、ホンマにどんどん勝ちに貢献していきたいという思いはあります」
 
 チームも、個も、模索している段階の川崎ではあるが、まだシーズンは始まったばかりである。中村も「公式戦のワンプレー、ワンプレーの中でしか擦り合わせていけないことがある」と語っている。そして、登里の言葉にも続きがあった。
 
「まだまだ、ここからですよ」
 
 ピッチに立つ喜びを噛みしめている彼は充実した表情を浮かべていた。ミックスゾーンを後にするその背中には、確固たる決意が漲っていた。
 
取材・文:原田大輔(SCエディトリアル)